2章ー32:バケットガップ海峡の戦い(漆)
僕と一緒にクルラさんもゲレドと戦ってくれるから、とても心強かった。
だって15m越えの大人の水竜が味方してくれんやもん。
だけど、どうだろうか・・・。
スラギア君のフリをしてたクルラさんは確かにゲレド相手にいい動きを見せてくれた。
けれどそれで、この人が戦えると決まったワケではない。
女性が合戦の場に立つなんて、戦国時代でも極めて稀なことだったからな・・・。
「先程は毒液に恐れをなして後手に回ってしまいましたが、今度はそうはいたしません」
「女・・・それも身体がすっかり色褪せた婆がよう吠えた」
ゲレドは闘牛のように右足で地面をかく。
来る・・・!!
僕が身構えたその直後、ゲレドはジュラシックパークのラプトルみたく、大きくジャンプしながら飛び掛かってきた。
足の爪の先には、赤紫色の液が滲んでる。
マズい!!コイツ足の指の先にも毒腺が・・・!!
「クルラさん避け・・・!!」
そう言いかけた次の瞬間、クルラさんの口元が『バチバチ・・・!!』とスパークして、勢いよく雷ブレスを吐いた。
「ぐああ!!?」
クルラさんの雷ブレスをまともに受けてゲレドは吹っ飛んだ。
「すっ、すっげぇ・・・!!」
見事ゲレドを返り討ちにしてやったクルラさんに、僕は素で感心してしまった。
「安心するのはまだお早いですよ、リオル様」
すかさずゲレドの方を見ると、素早く立って僕とクルラさんに向かって威嚇している。
「本来ならばあの一撃を食らった後は気を失うのですが、どうやらあの者の鱗、雷撃を通しにくいみたいですね」
つまりゲレドの全身が絶縁体になってるからクルラさんの攻撃が効きにくいってことか!!
「でっ、ではどうすれば・・・!!」
「仕方ありません。力業で行きましょう」
「ちっ、力業?」
そう言った直後、クルラさんはバネのように身体を縮こませ、ゲレドに向かって突進した。
ゲレドはその攻撃を上に飛んで回避する。
「考え無しに突っ込むとは愚かなっ!!」
「誰が「考え無し」ですって?」
「ぐおっ!!?」
滞空するゲレドを、クルラさんは鞭のように尻尾を上にしならせて落とした。
「くっ・・・!!このぉ・・・!!があっ!!?」
墜落して態勢を崩したゲレドに、クルラさんは横向きに体当たりした。
「まだまだです」
そっからもクルラさんはゲレドに体当たり、突進、ボディブレス、旋回噛み付き、尻尾攻撃、飛び掛かり等の連撃を浴びせて、奴をボッコボコにしていく。
しかもゲレドが反撃に転じる時に見せる一瞬の隙を見計らってだ。
それには獲物を弄ぶ捕食者ではなく、武将相手に薙刀で応戦する気高い戦国の女性のような勇猛さと流麗さが感じられた。
クルラさんは、ゲレドの首根っこに噛み付き、投げ飛ばしフィニッシュをかまして僕のところに戻ってきた。
「おっ、お強いんですねっ!!」
「サンブロドの亜竜族にとっては、武芸も茶道や華道に並ぶほどの大事なしきたりですから」
照れたり謙遜することもなく、クルラさんは戦うことを『習って当然』と言わんばかりの反応を見せた。
レムアやスディアの時もそうだったけど、この世界の女性はみんなこうなのかな?
『男は外で戦い、女は家を守る』みたいな・・・。
なんかマジで薙刀持ってる女の人に見えてきたな、クルラさんが。
「ですが、寄る年波には勝てぬようです。ここから先はあなたの出番です、リオル様」
クルラさんから猛攻撃を受けて、ゲレドはすっかりボロボロになっていた。
「・・・・・・お膳立て、感謝いたしますっ!!」
深々と頭を下げて、僕はクルラさんとバトンタッチした。
「ふぅ~・・・!!ふぅ~・・・!!」
傷だらけの顔で、ゲレドは僕を睨みつける。
「そんなになってもまだやる気とは恐れ入った。だが・・・」
僕は腰に差した刀を抜いて、その切っ先を向けるイメージを持ちながらゲレドに犬のような威嚇ポーズを取る。
「ミーノ領の旗本として、裏切り者のお前をここで処断するっ!!」




