2章ー31:バケットガップ海峡の戦い(陸)
「全軍囲めえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!」
ルータスの号令とともに、オリワ軍の地竜はトーウミト軍の水竜を包囲して襲い掛かった。
オリワ軍が突っ込んできたせいで、会合が行われた陣は上よ下よのてんやわんやで大騒ぎになったのに、ルータスは同じ水竜であるカワミとトーウミトを正確に区別して攻撃するよう指示を出している。
見事に冷静な判断能力だ。
いい機会だから、父親の采配というのを目で盗み・・・って、今はそんな状況じゃなかったっ!!!
今、僕はゲレドの顔面に張り付いてる最中だった。
「なっ・・・!!?何が、どうなっておる!!?」
「だ~か~ら~!!全部ウソだったんだよっ!!シノナ軍が姑息な手ぇ使ってきたから、こっちも一杯食わせてやることにしたんやっ!!ビビりまくったお前の悲鳴が突撃の合図だよ!!最っ高だったぜ!?おかげでよ~く聞こえたよっ!!!」
「きっ、貴様ぁ・・・!!!謀ったかあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
ようやく自分が騙されたことに気が付いて、ゲレドは顔をブンブンさせて僕を振り落とそうとした。
僕は爪を『ぎりり・・・!!』とネコみたくゲレドの顔の皮に突き立て、振り落とされないようにしがみつく。
ガラルガほど大したこたぁないが・・・コイツもやっぱ力強っ!!
早いトコ、どこでもいいから急所を攻撃しないと・・・!!
「って、マジぃ!!?」
ゲレドが毒ブレスの発射モーションを見せたので、僕は急いでゲレドの顔面から離れた。
体操選手みたいに華麗によける僕のすぐ横を、ゲレドの赤紫色の毒ブレスが通過した。
「あっ、あっぶね~・・・」
肝を冷やす僕に向かって、ゲレドはさっきよりも怒り心頭な顔をする。
「死肉食らいの小僧風情がぁ・・・!!シノナの将たるわしにつまらぬ詐術をしおって!!!」
対峙する僕とゲレド。
それを余所に、バナデウスはその巨体で暴れて陣幕を破って出ていった。
「はぁ・・・!!はぁ・・・!!なっ、なんだというのじゃ!!?」
「どこへ行かれる?」
「っ!!?」
バナデウスに立ちはだかる一つの影。
それは奴の50分の1くらいの大きさにしか満たなかったけど、バナデウスはおろか未だ状況が理解できないカワミ軍とトーウミト軍、シノナ軍でさえも愕然とさせた。
「すっ、スラギア・・・!!」
「おっ、お館様・・・」
雨の勢いが徐々に激しくなる中、スラギア君は「すぅ~・・・!!」と大きく息を吸った。
「カワミの同胞たちよっ!!トーウミト、ならびにシノナの逆賊どもよっ!!この通り!わしは・・・カワミ領が主、スラギアは生きておるっ!!トーウミトとは長年、小競り合いをしながらも、いつか平和に互いの安寧を享受する日が来ようと信じてきたっ!!しかしっ!!それは領土拡大を企むシノナ領と、かの者どもの浅ましき甘言に乗ったトーウミトによって潰えてしまった・・・。これは!未だ覚悟の決まらぬわしが招いてしもうた不覚・・・。だからわしは、心を鬼にし、志をともにせんとするオリワと手を組み、傲り高ぶり我が領土を手に入れようとした逆賊どもに・・・天誅を下すことを決めたっ!!!」
最後の一言をスラギア君が言おうとした時、一本の稲光が彼に落下し、その身体を眩しくさせる。
「牙と爪を以って戦えっ!!我が愛しき強者どもよぉ!!!」
その一言が引き金になって、カワミ軍の水竜が一気に奮い立ち、トーウミト軍とシノナ軍に猛攻を仕掛けた。
これほどまでのカリスマ力とは・・・。
やっぱ最高だよ、スラギア君・・・。
「見惚れておる場合か?」
ゲレドの方を向き直すと、悪辣な笑みを浮かべて僕を見ている。
「貴様だけではわしを討ち取ることなどできぬ。今度は本当に死ぬことになるだろうから覚悟するがよいわ」
「わたくしもご一緒しますわ」
「・・・・・・クルラの方様!」
ゲレドと対峙する僕の横にクルラさんがゆっくり滑り込んできた。
「リオル殿には先程楽しませてもらったのですから、ほんのささやかなお礼です」
「ふんっ!たわけめ・・・。敵の大将を前にした息子を独りにするとはっ!!」
「独りじゃないぞ?」
「っ!!!」
スラギア君と挟み合う形で、ルータスがバナデウスの背後に回った。
「図体はデカいがその分、動きが愚鈍だ。だったら小回りが利くのが付いておくのがいいだろう?」
「・・・・・・スラギア様を頼みますっ!!父上!!」
「おう!任せておけ!!」
こうしてバケットガップ海峡の戦いは、僕とクルラさんvsゲレド、スラギア君とルータスvsバナデウスの構図になって次のステージに突入した。




