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2章ー26:バケットガップ海峡の戦い(壱)

「ふぅ・・・」


 崖を下った僕は、その先の陣地に注目しながらホッと一息つく。


 距離は大体500mくらいかぁ~?


 なにか目立った動きがないのを見るに、ここからだったら僕の匂いは届いてないらしい・・・。


「いずれにしても、“準備”するか・・・」


 僕は崖下に大量に溜まってるモノへと近づいていった。


 海藻の塊。


 たぶん満潮時に流れ着いたのが潮が引いて溜まったんだろう・・・。


「よぅし・・・おりゃ!」


 僕はどっさりと溜まった海藻に思いっきりダイブした。


「うっぷ!?ああ・・・」


『ネチャ・・・』ってした感触に、鼻ん中を刺すんじゃねぇかってくらい、すんごい磯臭さがして、一気にテンションが下がる・・・。


 だけどこうでもしないと・・・連中の鼻はごまかせない。


 これが僕の考えた『対策』だ。


 ここは干潮地帯。


 辺りはとっても濃い磯臭さで満ちている。


 だったらその臭いの素を自分に付ければ、視覚じゃなくとも、嗅覚の面なら同化することができる。


 我ながら言い作戦を考えたものだと思ったんだが・・・。


「鼻やっば!!すんごくキツイ・・・」


 ただでさえ人間時より研ぎ澄まされた地竜ドレイクの嗅覚なのに、そんな刺激臭たっぷりのものにダイブしたら、鼻が破裂すんじゃないかってくらい尋常じゃない臭かった。


 ちょっと、これは・・・無理があったかもしれへん。


「ええい!!養鶏場で働いてたんだっ!!もっとヤなモン嗅いできたんやから今更どうってことあるかいっ!!」


 自分を鼓舞しながら、僕は犬みたいに海藻を身体にこすり付け、何個か千切って塗り消しみたいに丸めてペースト状にしたのを身体に塗りたくった。


「うっし!こんなもんか」


 赤い甲殻の4分の3くらいに千切って潰した海藻を塗りたくった僕は、いよいよ会合が行われているであろう陣へと向かった。


 自分やから気付かんけど、パッと見だったら緑のオバケみたいになってると思う・・・。


 でもそれって、なんだかギリースーツみたいでカッコイイかも・・・。


「って、こんなくっさいくっさいギリースーツあるかぁ」





 ◇◇◇





 身をネコみたいにかがめながら、ようやく僕は陣地へと到着した。


 ここまで来るのに見張り一つ付けてなかったな。


 それに備えて何回か迂回することも考えてたけど・・・。


「よほど油断してるんだな・・・」


 ふっ・・・。ゲレドにバナデウスよ。


 勝利を得たと思って気を緩めたのが運の尽きよ。


『勝って兜の緒を締めよ』


 目の前にぶら下がってる勝ちを手にした時こそ最大限警戒しなければならない。


 敵がどんな隠し玉持ってるか分かんないからねぇ~?


 そう思いつつ、僕は陣幕にピタッと耳を付けた。


 中の話を聞くためでもあったが一番の目的は・・・クルラさんがどこにいるか知るためだ。


「では昨日お話した通り、クルラの方様にはバナデウス殿と夫婦めおとになって頂き、それを以ってトーウミトとカワミの併合。ひいてはシノナとの同盟を証明する・・・ということでいいですかな?」


 ゲレドの声だ!


 ってかあのクソデカ水竜リバイアサンとクルラさんが結婚?


 おいおい何を考えていやがる・・・。


「はい・・・」


 クルラさんの力無い声が聞こえてきた。


「住まいはわしが使っていた屋敷をくれてやる。お前は祭事などの用事だけ巻牙城巣まききばじょうすに来ればよい」


 この声はバナデウスか?


 悪徳ジジイみたいな声してんな・・・。


「はい・・・」


 ・・・・・・なるほど。


 つまり「よっぽどのことがない限りお前は巻牙城巣に来んな」ってことか。


 形だけの結婚に形だけの平和的併合に見せかけて、ずっと欲しかった巻牙城巣を手に入れて、クルラさんを自分の居抜き物件に蟄居ちっきょ・・・閉じ込めておくって算段か。


 よくもまぁ・・・そんな酷い事ができるモンだ。


 大方ゲレドの入れ知恵だろう。


 だってこんなクソみたいなアイデア考えんのアイツしかおらんもん。


「では次に、スラギア殿の家臣連中の処遇につきまして・・・」


 ゲレドが話しを続けたところで、僕はクルラさんのトコまで忍び足で行った。


 声と匂いから、位置は分かった。


「・・・・・・クルラの方様」


 陣幕越しに、僕はクルラさんに小さな声で呼びかける。


「リオル殿ですか?」


「はい。単刀直入に言います。スラギアく・・・様は生きてます」


「でしょうね」


「え?」


 あまりにシンプルなリアクションで、逆にこっちが驚いた。


「あの・・・驚かないのですか?」


「あんな()()()()()()暗号を寄越せば察しが付きますよ?」


 たっ、確かに秘密のメッセージは伝えたんだけど・・・。


 その割にはものすごく落ち込んでる声に聞こえたから・・・。


「じゃあ、先程の物悲しい返事は?」


「あら?聞いてらしたの?下手な猿芝居でございまする」


 いやいやいや!!


 全然下手じゃなかったよ!!?


 超ベテラン一線級の声優ばりの演技力だったよ!!?


 やはりスラギア君に生き残るための術を叩き込んだお母さんだけある・・・。


 ぶったまげたが・・・それならそれで、これからやることに期待以上の効果があるかもっ!!!


「それで?いつ起こるのです?オリワとミーノと肩を並べての反撃は」


「それなんですがね、その合図としてとある()()を起こそうと思ってます?」


「騒ぎ?」


「ええ。クルラの方様には、それの手伝いをしてもらいたいのですが・・・お受け、してくれますか?」

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