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2章ー15:化かし上手の狐小僧

「よし!この島にしよう。神輿みこしを岸に付けいっ!」


 陣地を張るのに手頃な島を見つけたスラギア君は、僕とレムアを乗せた神輿・・・といっても噛んで引くための綱と台がくっついた簡素な小舟を岸に付けるように命じた。


 僕たち地竜ドレイクは泳ぐことができないから、この日のためにわざわざ作ってくれたらしい。


 何から何まで用意してもらってホント申し訳なく思う。


 今度からスイミングの練習しなきゃだな・・・。


 スラギア君の指示の下、部下の水竜リバイアサンたちは、せっせと陣地を張り始める。


「リオル様、トーウミト領は何故カワミ領に戦を仕掛けてくるのでしょうか?」


「昨日スラギア様が教えてくれたんだけどさぁ~・・・」


 僕はレムアにカワミ領とトーウミト領のギクシャクした関係について話した。


 トーウミト領はカワミ領の隣国で、同じく水竜リバイアサンの国だ。


 何でも向こうの殿様が、カワミ領の城である巻牙城巣まききばじょうすについて、「あの城を形作ってる牙と角と骨はご先祖様のものだ。よって領有権はトーウミト領にある!!」とかなんとか難癖付けて、度々攻め込んできてるというのだ。


 それがカワミ領が現状抱えてる問題の中で、一番大きいものだってスラギア君が言ってた。


「そうなのですね。それで、城巣の材がトーウミト領の領主様の先祖の亡骸でできているって根拠は?」


「それが一切ないって。ただ一方的に言ってるだけ」


「ええっ!!?ないんですか!?」


 驚くレムア。だけど僕はこの話を聞いた時、同じようなリアクションはしなかったな。


 多分この手の問題に、慣れちゃってんだろう。


 僕の住んでた日本じゃ、領土問題なんて付き物だったから・・・。


 北は北方領土、南は竹島と尖閣諸島。


 戦争や歴史的観点から、日本は隣のロシアや韓国、中国とバチバチにやり合って来たし、ついに僕が生きてる内に解決することはなかった。


 多分、双方の国の文献や当時の世界情勢によって生じた意見の食い違いが、問題をこじらせてるんだと思う・・・。


 でも、日本はここと比べたらまだマシだったのかもしれない。


 だって領有権を巡って戦争なんかしたことなんかなかったもん。


 やっぱり・・・話し合いは大切だ。


 問題が解決するしないかは別に、互いに譲歩したり折衷案を見つけたりすること自体に意味があるんだと思う。


 武力でなく言葉で。


 戦場じゃなくテーブルで戦う人達って、理性的で、それでいて信念持ってるから、殊更に輝いて見えるってなもんだ。


 この世界も、そういう風になったらいいな・・・。


 そう思って黄昏てたら、水竜リバイアサンの武将に呼ばれてハッとした。


 どうやら陣地が張り終わって、作戦を説明したいから来てほしいとのことだった。


 僕はレムアをその場に留めて、陣地が置かれてる島の中央に向かった。


「お館様っ!リオル殿がお見えです」


「うむ。入れ」


「失礼いたします・・・って、あれっ?」


 幕をめくって陣に入った僕は一瞬戸惑った。


“スラギア君が二人いた”。


 立派な鎧を着たスラギア君と、もう一人足軽の格好をしたスラギア君がいた。


「あの・・・えっとぉ~・・・」


 どっち?


 どっちがモノホン?


「こっちじゃリオル」


 足軽姿のスラギア君に呼ばれた。


 どうやらこっちが本物みたい・・・。


「スラギア様っ。何ですその格好は?というかそちらは?」


「わしの影武者じゃあ!よく似ておるじゃろ?」


 確かにめっちゃ似てる・・・。


 でもよくよく見ると目つきとか口元とかが微妙に違う・・・。


 どっからこんなの連れてきたんだ?


「では策を言い渡す。ロアードルは右翼から攻め敵を分断しろ。そして本隊から切り離された前方の部隊をガブナチャが兵を率いて奇襲をかけろ。わしは伝令役に扮し後方に待機しておる。良いか?他の将にはわしが雑兵に化けていることは伏せ、本陣を守るように言いつけよ。決して影武者のことを気取らぬようにしろ!この者をわしと思って必死に守れっ!!」


「はっ!!」


「では出陣と参ろう皆の衆!」


 武将たちが陣を出た後に、僕はスラギア君と一緒に外に出た。


「スラギア様。もしかして戦の度に影武者を陣に留めご自身は前線に?」


「これも母上の入れ知恵じゃ。よもや大将が雑兵に扮して前に出てることなど有り得まい。初めの内は恐れはしたが、慣れてくると意外と楽しいものじゃぞ?」


 なるほど。灯台下暗しってワケね。


 これも子どもの身で殿様になったスラギア君を守るための悪知恵ってことだ。


 にしても、スラギア君って徳川家康とホントに同類項が多い。


 家康も確か、戦で影武者を仕立てて、自分は安全地帯にいてやり過ごしたんだっけか?


 その狡猾さと体系から、家康には『狸親父』っつ~ほとんど悪口なあだ名が付けられた。


 スラギア君は子どもで、スラっとした体形だから・・・『狐小僧』だなっ。


「おいそこのっ!ミーノ領の客分と何をしておる!?」


 僕たちのところに背中に母衣ほろを背負った水竜リバイアサンが近づいてきた。


 どうやらスラギア君を本物の足軽と勘違いしてるらしい・・・。


「こちらの旦那が戦を生で見たいってんで舟でお連れしようと思いやしてっ!!俺は伝令役なんで断ろうと思いましたが如何せん身分が身分なモンでぇ~!!」


 声全然違うやんっ!!!


「左様でござりますか?」


「そっ、そうなんですよ~!!あっ!お手間は取らせませんのでっ!!戦法が十分見れるトコまで連れてってもらったらちゃんと返しますっ!!」


「・・・・・・大事な御客人だ。海に落とさぬようになっ!」


「へへっ!かしこまりやしたっ!!」


 母衣武者が過ぎ去ると、スラギア君はドヤ顔でこっちを見てきた。


 化かすんめっちゃ上手いやん・・・。


 俳優でドラマ出れるレベルやでコレ・・・。

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