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1章ー25:敵将の戯れ

 どうやら僕は、結構前からガラルガにマークされてたらしい。


 レムアの故郷を滅ぼした話を急に語りだしたのも、ほろ酔いになって前の戦に対しノスタルジーに浸った以外にも、陣幕に張り付いて中の様子を覗き見ている僕に気付いていたからだ。


 燃える陣幕を背にして『ドスン・・・!ドスン・・・!』と歩み寄るガラルガに、僕は鼻が利くのは自分以外にもいると考えが及ばなかった迂闊さを呪った。


 つい人間の武将に対しての感覚で探っちまった・・・。


 コイツ等は戦国武将じゃなく竜なんだ。


 匂いを嗅ぎ分けたり音を聞きつけたりできるのは当たり前やろっ!


 それがたくさんの戦をくぐってきた歴戦の個体なら、なおのことだ。


 クソッ!


 完っ全に雰囲気に流されちまった!


「ガラルガ様っ!!どうなさいましたか!?」


 騒ぎを聞きつけてガラルガの配下の飛竜ワイバーンが駆けつけてきた。


「大したことではない。盗み聞きが趣味なトカゲに、息を飛ばしただけのことよ」


 あれのどこが息だよ!!


 純然たるマシンガンブレスやんかっ!!


 一度に三発も吐けるなんて、なんちゅ~喉持ってんねん!!


「しっかし思わんだな。まさか賊がかように小さき子どもだったとはのぅ・・・」


 ガラルガが黄色い目で僕をジッと見据える。


 覗き穴で見ていたが、実際に会ってみるとすんごい迫力だ・・・。


 さすがは軍勢を率いるだけの大将なだけある。


「りっ、リオル!!!」


 縛られ寝かされたティアスが僕に気付いた。


「小童。お前は殿の縁者か何かか?」


 僕とティアスに目配せしながら、ガラルガは僕に聞いてくる。


 ここで名乗りを上げるのがこの世界の竜、ひいては武士として通さなきゃいけない筋・・・。


 めっちゃ怖いけど、ビシッと決めなきゃ!!


「わっ・・・!我が名はリオル!!オリワ族領が主ルータスの息子にして、今はミーノ領に仕える家臣が一人っ!!!」


 ビビりながら口上を述べた僕を、ガラルガは「ふっ・・・」と鼻で笑った。


「なんだ。誰かと思えば小国の田舎竜の跡取りではないかっ」


 なっ・・・!?


 コイツ僕のこと田舎侍って見下してんなっ!


 いや田舎()だから厳密には違うだろうけど・・・それでも意味は一緒だ!!


「ゲレド殿。何故なにゆえオリワ風情の嫡子ちゃくしがミーノにおるのだ?」


「一月ほど前に、オリワから同盟の印として献上されまして」


「ほう・・・。たかが同盟を担保するための人質が家臣を名乗るなどと、ずいぶんな思い上がりよ」


 コイツ・・・。


 僕のこと完全に下に見てやがんな?


 どこまでもコケにしやがって腹立つ!


「リオル!!どうしてここにいる!?」


 馬鹿にするガラルガと違って、ティアスは本気で僕を心配してる様子だ。


 女の子・・・それに一国のお姫様に心配されるのは、不謹慎だけど・・・嬉しいな・・・。


「ミーノの家臣として、そして一人の友として・・・姫君の御身を救うべく馳せ参じましたっ!!!」


 調子に乗った僕は、ここに来た目的をバカでっかい声で堂々と宣言した。


「りっ、リオル・・・。こっ、この大馬鹿者がっ!!!火中に喜々として飛び込む羽虫のようなマネをしおってっ!!間抜けなのはその顔だけにしろっ!!!」


「はっ、はぁ?!そんな言い方ないでしょう!!心配してたった一人、殿やスディアの方様に黙って助けに来たっていうのに!」


「なっ・・・!?無断で城を抜け出したというのか!?父上と母上に知れたら事だぞっ!!」


「それは~ぁ・・・!!上手いこと姫様が丸く収めて下さいっ!!」


「貴様のようなうつけの肩を持つのであれば肥溜めに飛び込んだ方がマシじゃ!!」


「そこまでですか!?」


児戯じぎはそこまでにしろっ!!」


 尻尾を地面に叩きつけて起こるガラルガに、僕はハッと我に返った。


「要するに貴様は、主君に黙って姫を助けに来たのだな?」


「そっ、そうだ・・・!!」


「なるほど・・・。確かにうつけだな、貴様」


「なっ・・・!?」


「だが・・・良い性根をしておる。忠義と友誼ゆうぎ亜竜族サーペントが尊ぶべき二つの信条に基づき行動したのだからな」


「あっ、ありがとございます・・・」


 さっきと打って変わって、素直に評価してくれたガラルガに、ついつい感謝してしまった。


 自己肯定感が低い僕にありがちなことだ。


 認められたり褒められたりすると、それが誰であっても嬉しくなっちゃう。


 うつ持ちのさが・・・といったモノか?


「そんな貴様の気骨に免じて、一つ戯れに付き合ってもらうぞ?」


 たっ、戯れ?


 ガラルガは翼を『バッ!!』と広げると、僕に向かって飛び掛かってきた。


「見せてもらおう!!貴様の足搔きをっ!!!」


「・・・・・・は?」

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