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1章ー24:懐かしい匂い

 ガラルガが、レムアの故郷を滅ぼした張本人・・・!?


 僕は目を大きく開いて、耳を陣幕にピッタリと付けた。


 なんせ布一枚の向こう側に、好きになりかけてた女の子の家族の仇がいるんだからなぁ~・・・。


「攻め滅ぼしたのはトダンでございましたかっ!!いやはや~・・・!まっこと奇縁がありましたのぅ~」


「奇縁?」


 僕はドキっとして、ゲレドにレムアのことを言うなよって強く願った。


 だって言ったら、絶対面倒なことになるのは間違いない。


 だけど・・・。


「トダンの領主の娘が生きておりましてなっ。殿が侍女として雇い入れたのでございまする」


 ・・・・・・言いやがったぁ。


 ガラルガは土瓶の酒をグビっと飲んで、天を仰ぎ見た。


「どこぞで野垂れ死んだとばかり思うておったが・・・。そうか。生き永らえていよったか」


 あれ?


 なんか意外な反応だな・・・。


 てっきり「誰のことだか忘れた」とか、ドライなセリフを言うもんだと思ってた。


 ガラルガはガラルガで、自分が攻め滅ぼした国とその主、そしてその家族にどっか思うことでもあんのか・・・?


「ガラルガ殿。どうしたのですか?左様に感慨深い顔をしてらして・・・」


「いや。ちと酔いが回ったようでな。これであの者らも浮かばれようて」


「あの者とは?」


「わしが手ずから葬った、トダンの領主とその跡取りのことじゃ」


 今・・・何つった?


「わしが出陣した時、すでにトダン軍は総崩れの状態じゃった。わしは満身創痍の身で我が軍と相対するトダンの領主の下で出向き、奴に穿心せんしんを促した。自軍が敗北した時、大将が胸を開けるのが戦の道理・・・。しかし、奴は果敢にもわしに一騎打ちを申し出た。「一族が滅んでいなければ勝敗は決してない。故に最後まで抗う」と啖呵を切ってな。わしはその申し出を受け入れた。そして・・・この牙で奴の首を胴からもぎ取ってやったのよ!」


 気持ちが高揚したガラルガは、立ち上がってレムアの父親を討ち取った時の場面をジェスチャーで再現してみせた。


「こうやって両腕で胴を押さえつけ、奴の首を、樹になる実をもぎ取るかの如くっ!!その様を見た奴の息子は、狂乱してわしに挑んできおった。わしはその心臓を毒尾で貫いてやった。わしは家臣に命じた。「この者どもの首をトダンの城巣に投げ入れろ」とな」


「首を、でございまするか?どうしてそのようなことを・・・」


「トダンの領主は、自分の血が絶えぬ以上、真の敗北は有り得ないと言った。だから奴の血族に見せつけてやりたかった。「お前達の負けだ」と・・・。今にして思えば、少し感情的になり過ぎたやもしれん。身の程を弁えぬ、地を這うだけしか能のないトカゲどもに・・・な」


 ・・・・・・なんだよ?それ。


 まるでヤンチャしてたのを自慢するみたいにヘラヘラ言いやがって・・・。


 テメェのせいでレムアがどんだけ悲惨な目にあったと思ってんだっ!!!


 レムアの父親と兄ちゃんは、国と家族を守るために最後まで勇敢に戦ったんだ!!


 それに対し敬意をロクに払わず、しかも腹いせとしか言いようのない惨いことしやがって・・・コイツ・・・!!!


「ふざけるなっ!!!」


 縛られた状態のティアスが、ガラルガに向かって声を荒げた。


「貴様の鬼畜の所業で、レムアは精も根も尽き果てる抜け殻になってしもうたのじゃぞっ!!!貴様のような戦好きで器が小さい男を、わらわは飛竜ワイバーンの将とは認めんっ!!!」


 声が出せない僕の気持ちを、ティアスが僕の気持ちを代弁してくれた。


「レムアに指一本でも触れてみろっ!!首だけになってもその喉笛喰いちぎってやるっ!!!」


「ほっほっほっ。歳一つの娘っ子が威勢の良いことを吠える。さすがはミーノの姫君。中々の気骨だな」


 ブチ切れるティアスを前にしても、ガラルガは相変わらず飄々としている。


「だがわしが手を下す前に、あの娘はもう貴様らの城から逃げおおせておるかもしれんぞ。わしが奴の故郷を滅ぼしたあの日のように・・・」


 ガラルガの言ってることは正しい。


 現に僕は、ここに来る途中に城から逃げるレムアと鉢合わせになった。


 実はあの時、心のどこかで「気が変わってティアスを助けるのを手伝ってくれないかな・・・」なんて思ってたけど、ガラルガを見て気が変わった。


 コイツをレムアに会わせるわけにはいかない。


 家族を殺した奴を前にしたら、どんな行動に出るか予想できないからだ。


 あの時レムアが僕について行かないことを選んだのは、本当に正解だった。


「がっ、ガラルガ殿っ!昔話もそのくらいにして、今夜は大いに飲みましょう!!なんたってミーノ攻略の前祝いですからっ」


 バチバチに火花を散らすティアスとガラルガを収めようと、ゲレドが新しい酒を用意させた。


「いや。酒にはもう飽きた。ちと余興に付き合うてもらうぞ?」


「は?」


「わしが長々と昔話を語ったのは酔いの席であるだけではない。懐かしい匂いを感じたからでもある」


 懐かしい匂い?


 どういう意味だそry・・・。


「いっ?!」


 ガラルガはいきなり僕の方をくるっと向いて、息もつかせぬ内に火球ブレスを首を横に振って三発撃ってきた。


「がはっ・・・!!!」


 咄嗟に後ろに避けたが爆風に吹き飛ばされて、背中から木に激突した。


 轟々と燃える陣幕から、ガラルガのシルエットがゆっくりと出て来る。


「ちょろちょろ地を這って走る、汚らしいトカゲの匂いをな」

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