1章ー23:姫様救出作戦開始
「あれかっ!敵の陣!!」
シノナ軍の本拠地と思しき物を見つけた。
さすがは地竜の身体だ。
嗅覚が鋭く、おまけに夜目も利く。
しかし・・・。
「あからさま過ぎるな・・・。」
もう見慣れたとばかり思ってたが、この世界の竜たちはとことん戦国チックだな。
家紋が書かれた陣幕に、脚はないが篝火まで焚いてる・・・。
飛竜と、微かに漂ってくる炭の臭いから「まさか・・・」とは思っていたが・・・。
「どうなっとんねんこの世界・・・。」
西洋デザインの竜と戦国武将の出で立ちという、どうみても真逆の文化の融合に改めて違和感を感じつつ、僕は忍び足でシノナ軍の陣に近づいていった。
◇◇◇
山の斜面をバレないためと滑り落ちないためにゆっくり降りて、僕はシノナ軍の陣のすぐそこまで迫った。
こういう救出作戦で肝となるのは、『人質の位置をピンポイントで当てること』と『如何にスピーディにかっさらう』ことだ。
武力行使の場合なら、『敵を素早く無力化』することが最重要ポイントになるが、今回はパス。
だって僕、一人だもん・・・。
まずはティアスがどこにいるかを突き止めないと・・・。
鼻と耳に全神経を集中させる。
・・・・・・・。
・・・・・・・。
「お主のおかげで事が手早く運んでくれたわい」
「お褒めに預かり恐悦至極に存じまする!」
覚えのある臭い。何よりこの、耳をつんざくキンキン声・・・。
・・・・・・ゲレド!!
ミーノ軍がドツボにハマった原因の裏切り者に気付いた僕はムカッとなりつつも、『さささっ・・・』と気配を消して声と臭いがした方向へ向かった。
ここだな・・・。
爪をピンっと伸ばして、障子にやるみたいに陣幕に『ほじほじ・・・』と指でギリ見えるくらいの覗き穴を開けた。
ティアス・・・!!
穴を開けて最初に目に飛び込んだのは、麻縄みたいなもので身体をグルグル巻きにされて寝かされているティアスの姿だった。
「敵に寝返るだけで飽き足らず主君に穿心まで言い迫るとは・・・!!この腐れ外道がっ!!!」
囚われの身であるにも関わらずゲレドを非難するとは・・・。
やっぱティアスは芯が強いなぁ・・・。
「わたくしのおかげでミーノの民が救われるのですぞ?無辜の民の安泰が約束されたのだから感謝してもらいたいですなぁ~」
ゲレドは悪びれもせず翼爪に引っ掛けた土瓶みたいなのをラッパ飲みして「ぶはぁ!!」と息を吐く。
態度からして中身は酒だろう・・・。
逆賊のクセに酒盛りたぁ~・・・いいご身分してんなコイツ。
「貴様のような亜竜族の風上にもおけぬ者に統治される民が不憫でならんよ」
ゲレドがミーノを統治?
「第一そこの敵将がかような世迷言、受け入れてくれたかどうか疑わしいわっ」
「何を仰せか!?ここにいるガラルガ殿はシノナの主君が重宝されてらっしゃる御仁!!その方が約束されたのだから戦が終わった拙者のお立場も確約されたも同然っ!」
ゲレドは立ち上がり、ティアスに抗議した。
なるほどねぇ~・・・。
これが『リターン』の正体か。
どうやら今回の戦でシノナ軍を率いてる敵の大将がゲレドにシノナの領地となったミーノの領主を約束したらしい。
寝返った報酬として・・・。
出るわ出るわクソみてぇな話が。
「その辺にしたらどうだ?ゲレド殿」
ティアスに反論するゲレドを誰かが制止した。
コイツがシノナの敵将・ガラルガか。
どんなツラして・・・うっ!
ガラルガの顔を見た途端、驚いて声が出そうになった。
左目が白濁して、上顎には大きな切り傷、そして顔の右半分は凍傷の痕?でしぼんでいる。
間違いなくこれまで幾度どなく死線をくぐってきた強者。
戦国時代風に言うなら、『猛将』と表現するのがピッタリだろう・・・。
ゲレドを諫めた後、ガラルガはその猛々しい見てくれとは正反対な。雅で落ち着いた態度で土瓶に口を付ける。
「もっ、申し訳ござりませぬ・・・。しっ、しかし~・・・!!ガラルガ殿は素晴らしいですなぁ!!まさか半年も経たぬ内に再び戦の大将に任ぜられるとはっ!」
叱られたゲレドが分かりやすくガラルガにゴマをする。
「世辞は良い。しかし、さすがは我がシノナと肩を並べるくらいの飛竜の大国・ミーノ。地竜のようにはいかんな」
地竜のようにはいかない?
「前の戦では地竜の国を攻められて?」
「そうじゃ。地を這うだけのトカゲ風情、相手にならん。半日もしない内に攻め滅ぼしてやったよ」
「左様でしたかっ!!ちなみにどこですか?その国は」
「トダン領。かつてシノナの隣国だったところじゃ」
・・・・・・え?
その名前を聞いた途端、頭がフリーズした。
トダン領・・・。
そこはかつてレムアの故郷だった地竜の国だ。
つまりガラルガ・・・コイツが、レムアの・・・。




