1章ー16:金砂城巣の戦い
出陣した兵士たちは、各々の持ち場に着いて敵が来るのを待ち構えていた。
僕が配置されたのは城門横の、大砲が置かれている城壁の前。
僕はここで、陣頭指揮を執っている武将を守ったり、翼に付ける換えの刃を持ってくるのが役目だ。
『小姓』っていうのは武将の刀持ちや警護が主な仕事だから、当然っちゃ当然だった。
だけど、その城壁を守ってる指揮官っていうのが・・・。
「まさか貴様のような卑しい地竜の子に守られるとはなっ!」
粘っこ~い声で嫌味言いながら、頭に生えたトサカでガツンガツン僕のこと叩いてきた。
よりにもよってゲレドの下で働くことになるなんて・・・。
コイツ、ここに来たばっかの僕に思いっくそパワハラしてきたヤツだぞ?
なんでこんなヤツの世話をしなきゃアカンねん、クソッ・・・。
「少しでも新しい刃を持ってくるのが遅れてみよっ。わしが手ずから噛み殺してくれるわっ!まぁ~・・・弾避けになってくれれば感謝の一つも、するかもしれんがのぅ~。万に一つじゃが・・・。がはははははははははははははははははははははは!!!」
ゲレドは僕の顔にクチバシを押し当てて、さも愉快そうにゲラゲラ笑った。
コイツが指揮官で城壁の守りは大丈夫なんだろうか・・・?
ディブロのヤツ人選ミスったんじゃないだろうなぁ~・・・。
そうディブロに対し恨めしく思ってると、遠くの方からほら貝みたいな鳴き声が聞こえてきた。
「敵が攻めてくるぞぉ!!者ども気を引き締めい!!」
ゲレドが指示を飛ばし、僕も含めた城門にいる兵士たちに一気に緊張が走る。
やっぱさっきのって、敵側の突撃の合図だったんだ・・・!!
静けさのせいで、心臓の鼓動が内側で反響して頭に直で響いてくる。
クッソ・・・今になってものすっごく怖くなってきた・・・。
くっ、来るなら早く来いっ!!!
ドクン!!ドクン!!ドクン!!ドクン・・・!!ドクン・・・トクン・・・
・・・・・・・。
「ギャオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」
「っ?!?!」
城下町の彼方から、鎧と陣笠を着た飛竜の軍勢が一気に押し寄せてきた。
その数。ざっと見るに、城の外の兵士たちの・・・倍以上!!
おいおいウソやろ・・・。
あんなにいんのかよ?!
「放てぇ!!!」
城下町を出たところの野原にずらっと並んだ、二頭一組になった飛竜の兵士が、後ろのが前のピンを引っ張る形で背中にしょってるバリスタの矢を放つ。
何百本の矢が、突っ込んでくる敵の軍勢目がけて飛んでいく。
頭や胸に矢を受けた敵がバタバタと倒れていく。しかし、後方にも大量の突撃担当の足軽が控えており、討ち死にした仲間の死体を踏みつけて向かってくる。
「交代し続けて放てぇ!!!」
前と後ろがチェンジした弓兵は、再度バリスタを撃って、突っ込んでくる足軽たちを迎え撃つ。
「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」という咆哮を放ちながら突っ込んでくるシノナの飛竜は、気迫、物量ともにミーノの兵の比ではなかった。
遠くからしか見えないけど、城下町を守ってる兵士たちに恐怖の色が見える。
「ひっ、怯むなぁ!!槍兵用意!!!」
弓兵は引いて、今度は槍を背負った足軽たちが前に出た。
かがんで背中の槍を突き出す姿勢を取ると、シノナ側も同じ格好になる。
そして両軍は・・・激突した。
「ガアア・・・!!!」
「グオアア・・・!!!」
最初の十数秒くらいは拮抗したものの、数で勝るシノナ側に徐々に押され気味になりつつある。
遠目でしか分からなかったけど、すでにミーノ勢の足軽3割くらいが討ち取られたように見えた。
「てっ、敵の足軽に向けて大筒を撃てぃ!!!」
ゲレドが城壁にいる兵士たちに命令を出した。
なっ・・・何言ってんだよコイツ?!
そんなことしたら・・・!!
「ゲレド殿!!今ここで大筒を撃てば、お味方に当たってしまいますっ!!」
「いいから撃たんかぁ!!!」
半狂乱になったゲレドは僕と同意見を述べた足軽を怒鳴りつける。
おいおいおい・・・!!
コイツ完全にテンパって周り見えなくなってきてんじゃねぇかよ!!
と思った次の瞬間、空から火の玉が何個も落ちてきて、僕たちは吹き飛ばされた。
耳がキーンとなりながら上を見ると、背中に母衣を付けた黄緑色の飛竜が火球ブレスを吐きながら急降下してきた。
「シノナ領飛竜ククイ!!一番槍取ったりぃ!!!」
ククイという名の敵側の飛竜は、火球ブレスを乱れ撃ちして大砲を壊しまくった。
「げっ、ゲレド殿ぉ・・・!!!」
火球を吐きまくるククイに手も足も出ない城壁の足軽たちは、指揮官であるゲレドに指示を求めた。
僕も、大嫌いなパワハラ野郎だけど頼りになるのはこのゲレドしかいなかったため、指示を仰ぐために奴を見た。
ゲレドは未だテンパったまま、辺りをキョロキョロする。
そして・・・。
「おっ、大筒を守れぇ!!!手柄を上げた者には褒美を約束しようぞぉ~!!!」
ってセリフを残し、なんと僕達を見捨てて城の上の方に逃げていった。
おい・・・ウソやろ・・・。
アイツ・・・味方見捨てやがった・・・。
逃げていくゲレドの後ろ姿に、働いていた養鶏場のニワトリを重ねた。
だって、そうとしか見えなかったんやもん・・・。
「将に見捨てられるとは憐れなり!心から同情するぞっ!」
砲台を破壊するのを止めて、ククイが僕たちに言い放った。
「ん~!?これはこれはっ!飛竜の兵の中にトカゲの子が混じっておるではないか!」
え・・・?
僕・・・?
ククイは炎がくすぶっている口元をニヤリとさせる。
「久方振りに地竜の肉の炙りを食したいと思っておったが、棚からぼたもちとはまさにこのこと!小振りじゃが、陣中食には丁度よいわぁ!!」
ククイは闘牛みたいに地面を足でかく動作をした後、僕に向かって猛禽類みたいな足を広げて飛びかかってきた。
ちょっ、ちょっと待・・・!!
呆然としてると、耳に『ザシュ!!』と肉を裂くような音が入ってきた。




