1章ー15:いざ、出陣!!
飛竜の武将に呼ばれた僕は、他の兵士たちが戦支度をしている詰め所にやってきた。
みんな頭に陣笠や兜と被って、腹や足とか尻尾といった鱗や甲殻が生えてないところにガチャガチャと鎧を着こんでいる。
自分や他の飛竜には当然着付けなどできないから、たくさんのドワーフ達に着せてもらっている。
武士の戦支度というよりかは、まるで戦闘機の整備みたいな景色だ。
当然というか、シュールというか・・・。
「おい!そこのお前らっ」
僕をここまで連れてきた武将に呼ばれて、七人のドワーフがせっせとやってきた。
「この地竜に似合う籠手を持って参れっ」
籠手ってことはガードできんのは足だけかよ・・・。
そんな軽装備で大丈夫なんか?
まぁ、小姓だから仕方ないか・・・。
指示を受けたドワーフは、「へいへいっ!!」といった具合に頭を下げてから、竜用の籠手を持ってきた。
なんだろ?
言葉が通じないのかな?
籠手を持ってきたドワーフ達は、それらをベルトで足の鱗の生えてない部分に固定し始めた。
この時もやっぱり、身振り手振りで「足を真っ直ぐしてほしい」とか「しゃがんでほしい」とか僕にサインを送ってくる。
やっぱり言葉が通じないのか・・・?
「-------!」
んんっ!?
ドワーフが仲間にした言葉を聞いて僕はビックリした。
発音やアクセントが若干違うけど、これって・・・。
「あ~・・・“ありがとうございま、す?”」
「っ?!」
僕がお礼を言うと、ドワーフ達は全員ビックリした。
「“お前さん・・・ドワーフの言葉が解るのか!?”」
驚きながら聞くドワーフに僕は「a little・・・」って答えた。
やっぱりそうだ・・・。
この人らの言葉・・・英語とすっごく似てる!!
ドワーフと会話する僕を見て、飛竜の武将は驚愕した。
「お主!何故“小蛮”と話ができる!?」
しょ、小蛮?
ああこっちの世界の異国人の呼び名か。
『自分らよりサイズの小さい蛮人』・・・ね。
上手いこと言うな~。
「どこで習ったのじゃ!?」
肩をがっしり掴んで聞いてくる武将に、僕はどう答えようか悩む。
「英検準二級持ってるんですよ」なんて言っても「なんだそれ?」って言われるのがオチだからなぁ~・・・。
「・・・・・・こっ、故郷に耳長(エルフ)の宣教師が来た時に、ちょっとだけ、かじりました・・・」
こう答えるのが無難だろう・・・。
「そうか・・・。しかし少しかじっただけでこれほどの語力を見せるとは・・・。お主には通じの才があるやもしれんのぅ・・・」
え?
『通じ』って、通訳のこと言ってんだよね?
「殿に後で報告しておくか・・・」
え!?
ちょっと待ってちょっと待ってっ!!
僕が話せんのは短い日常会話レベルで、がっつり本格的な英語は話せないんだってばっ!!
ここできっぱりと「できません!」と言えればいいのだが、それができるほど推しが強くないのが僕だ。
これでホンマに通訳に抜擢されたらどないしよ・・・。
ナシになりますように・・・。
◇◇◇
さて。
結構バカにできない心配事が増えつつも、僕は鎧(といっても、足に付けるプロテクター程度な代物だけど・・・)を付けて出陣の準備が済んだ兵士たちが集結している東の丸にやってきた。
完全防備の武将から軽装備の足軽など、ざっと数えて千頭くらいは集まってると思う。
中には陣旗や『母衣』って言うのかな?偉い武士が背中に背負う風船みたいなヤツ。それを背負った飛竜もいて、まさに戦国時代の合戦に参加してるような気分になる。
ここまでくると何の絵面かどうか分からんな・・・。
小姓の僕は集まった軍勢の最後方にちょこんといる。
みんな体高が5mくらいあってデカいから前が見えないなぁ・・・。
一番前を見るために、頑張って二本足で立とうとした時、突然『ザッ!!』と軍勢が起立の姿勢になった。
ビックリして倒れそうになるのをどうにか耐えて、僕も四本足で直立の姿勢になる。
すると、前の舞台にガッチガチの鎧を身にまとったディブロと、どういうワケかスディアが上がってきた。
え?なんで?
女は戦に普通でないやろ?
なんで夫婦揃って鎧着てんの?
「皆の者ぉ!!!」
「なんで?なんで?」と思ってたら、いきなしディブロのぶっとい声がかっとんで僕は『ビシッ!!』と姿勢を正しくした。
「今このミーノに!我らと同じ飛竜の大国、シノナが攻め入ろうとしておる!!すでに承知の通り、奴らは先の戦で地竜の国、トダンを滅ぼし、その領土を我が物とした!!奴らはこのミーノも!同じく滅ぼし、我ら先祖が守り抜いてきた土地を!恵みを!栄誉を!その翼、その爪、その牙で蹂躙しようとしておるっ!!」
ディブロはサッと身を引いて、演説の役目を妻であるスディアに代わった。
「領土拡大に目がくらみ!あらん限りの私腹を肥やそうとする賊どもに!決して我らの大地を踏みつけにされてたまるかっ!!シノナの者どもに思い知らせてやろうぞっ!!我らミーノの飛竜は、トダンの地竜どもと違い、決して食われるような弱き竜ではないとっ!!我らの領土に土足で踏み込み、一片の礼も見せなかった痴れ者どもに後悔を!恐怖を!その足りぬ脳髄に叩き込んでやろうではないかぁ!!!」
スディアが檄を飛ばすと、兵士全員に喝采が上がった。
千を超える竜の、咆哮混じりのけたたましい喝采。
これが・・・戦前に大将が見せるカリスマって、ヤツか・・・!!
兵の士気を一気にかち上げたところで、ディブロが仕上げの一発を決めにかかる。
「今こそ!我らの猛き誇りを見せつける時ぞぉ!!えい!!えい!!おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
さっき以上の咆哮が響き渡り、僕たちは東の丸の門から出陣していった。
なんかよく分かんない・・・けど、なんだかめっちゃ胸がアツくなってきたっ!!
よぉし!!!
やったんでぇ!!!




