第241話 宣戦布告
火曜日の朝、いつもの朝勉強。
昨日の小テストを羽依、真桜に出してみた。
「なにこれ……むっず……」
「出題者の性格が歪んでいるわね……」
――やはりしーちゃんの性格は歪んでいることが証明されたようだ。こんなにも頭を悩ませている二人の姿はなかなか新鮮だ。
「よし、時間だよ」
二人から解答用紙を集める。
「まあ……できたかな~」
「ん~……なんとも言えないわ……」
採点してみて驚いた。やはりこの二人は俺より相当先にいるようだ。
背中が遠い――。
「結果発表~! 羽依さん数学100点、英語90点」
「あとちょっとで満点かあ……惜しいなあ……でも楽しかった!」
さすがとしか言いようがない。この子を超える自分が想像できない。
「続いて真桜さん。英語100点、数学90点」
「ちょっと怪しかったけど、一応できてたのね……いい問題だったわ」
「やっぱ二人ともすごいよ。志保さんが過去問の不正解率の高い問題から厳選した難問集だったからね」
「へえ~、しーちゃんが蒼真のためにわざわざ作ってくれたんだ。可愛がられてるねえ」
「かわいいそーちゃんのためだもの。このぐらいなんてことないでしょ」
軽く嫌味を言ってくる羽依と真桜が憎らしい。――スルーしとこう。
「ちなみに俺は英語30点に数学70点。だめだめだったね」
「ふうん。それはそれで不味いね蒼真。ちゃんと勉強してるの?」
「遥さんの相手で勉強の時間が取れないんじゃないの?」
二人から容赦ない責めの言葉が耳に刺さる。
「勉強はちゃんとしてるし、遥さんも協力的だよ。それと、学年末は一位を目指すことにしたよ。二人とも覚悟しといてね」
思わず宣戦布告をしてしまった。
一位と言った瞬間、二人の表情が変わった気がした。
「……いいね、蒼真。私たちを抜いて一位を目指すんだ」
羽依が目を大きく開き、口角を上げた。でも普通の笑顔には見えない。無謀なチャレンジャーを嘲笑うように見えた。
「蒼真……貴方には負けないわよ」
シンプルな言葉と真剣な表情を向けてくる真桜。
――気迫に気圧されそうだ。
ただ、俺たちは争う仲ではない。愛し合う恋人同士だ。
そういうノリを楽しんでいるに過ぎない。
――そのはずだよな……?
二人の目の奥に、ほんの少しだけ本気が宿っていた気がした。
「ま、まあそういうわけだからさ、今週末は三人でテスト合宿ってのはどうかな?」
「あ~いいね! 勉強して、美味しいもの食べて、夜いっぱい遊ぶの!」
明るい表情を浮かべ、両手をぐっと握りしめ、期待に胸を膨らませる羽依。
「うん、それがいいわね! ――で、どこで泊まるの?」
「案外、九条のお嬢様から一流ホテルとか用意されてたりとか!? なんてね!」
――言い方間違えたかな……。変に期待をさせてしまったようだった。
「……のーぷらんです」
羽依は大げさに椅子から滑り落ちる。真桜は口を大きく開けて呆けた。
「いたた……でもまあ、蒼真らしいね。めぼしい場所がなかったらうちでも良いしね~」
床に尻もちついた羽依を助け起こす。真桜はまだ呆けていた。
「……ああ、早く大人になりたいわ……好きな宿に泊まって一晩中愛し合うの……」
一人夢を見続けている真桜。なんだか色々溜まってるのかな……。俺と羽依は顔を見合わせた。
「朝っぱらから真桜がむっつりモードに入っちゃったよ! 蒼真、責任取りなさい!」
「ええ……どうしろって言うの……」
「ああ、週末が楽しみ!」




