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落ちこぼれ魔法師と異端の力  作者: 高巻 柚宇
4章 レイリア魔法大会編
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第145話 火山エリアを選択した末路

 「この……化け物め……」


 そんな声が火山エリアでした。


 声を発したのはフレスタン南東部に位置するクレアニアス魔法学園の制服を着た少年。しかし少年の着ている制服の所々が破けており、かなり汚れている。


 少年は目の前にいる汚れ一つない制服を着ている金髪を睨む。レイリア魔法大会も二日目が終わろうとしているというのに、汚れ一つない制服を着ている金髪の姿は異様だった。


 「とんだ外れくじを引いたぜ……」


 少年は自分の運のなさを呪った。そしてすぐにこのエリアから離脱しなかった自分の緩慢さを恨んだ。


 レイリア魔法大会が開幕して以降、少年は火山エリアで誰とも遭遇しなかった。


 転送先は完全ランダムのため、もしかしたら他のエリアに人が密集して、一人しかいないエリアだってあり得る。現に過去にはそのような事態が生じた。


 運も実力のうち。少年は最初、そう思って火山エリアで息をひそめながら仲間と合流することを決めた。


 しかしそれこそが間違えだった。


 少年の運が良かったのではない。別に火山エリアに人がいなかったわけでもない。火山エリアにはしっかりと人がいた。ただ、全員が少年と遭遇する前に、リタイヤさせられたのだ。少年の目の前に立つ金髪によって。


 「ふぅ……」


 もう駄目だ。


 少年はそう確信していた。


 自分の魔法はあの金髪には届かない。


 あの絶対的な障壁を破ることはできない。


 「ほんと、俺って運が悪いな……」


 思えば昨年もそうだった。自分は昨年レイリア魔法大会に初出場して、目の前の少年に為す術なく敗れた。


 そして今年も、目の前の少年によって自分はリタイヤさせられる。


 それは仕方がないことなのかもしれない。


 自分は大衆に埋もれている一魔法師であり、向こうはすでにレイリア王国内でも確固たる地位を築いているのだから。


 自分はただの魔法師、向こうは聖教会十三使徒の序列五位。


 比べる事さえ馬鹿馬鹿しい。


 才能が違う。


 「はぁ……」


 自分は目の前の金髪、レアル=ファイブからはおそらく相手にもされていないだろう。現にレアルは自分に対して攻撃をしてこない。


 自分の攻撃はすべて防いでいるが、いや、もしかしたら自分の攻撃さえも防いでいるのではなく、無意識に封じているのかもしれない。


 才能が違う。


 少年はそう思った。


 「でも、何もしないで負けるのも嫌だ」


 少年は昨年のレイリア魔法大会でレアルに手も足も出ず負けたことが悔しかった。最初は才能が違うと割り切ろうとしたのだが、それは無理だった。


 勝ちたい。


 いつの間にか心の中でそう思うようになっていった。


 だからこそ鍛錬を積んできた。


 いつか、あの少年に一太刀浴びせられるようにと。


 「いくぞぉぉぉぉぉぉ」


 少年は右手に握っている刀に全魔力を流し込み、纏わせて、渾身の力でレアルに向かって襲い掛かった。


 レアルの魔力障壁を破れるか破れないかではない、絶対に破るんだ。少年はその覚悟を持ち、レアルに向かって刀を全力で振り下ろした。


 「ウォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ」


 少年の刀とレアルの障壁がぶつかり合う。


 ブチブチ


 まるで腕の血管が切れたかのような音がして、少年の精神にダメージが襲い掛かるが、少年は刀を握る力を抜いたりはしない。むしろ先ほどよりも力を籠める。


 例え、腕が千切れようとも構わない。


 少年は渾身の力を振り絞る。


 「負けるものかぁぁぁぁぁぁ」


 すると、変化は唐突に訪れた。


 バリッ


 そんな音と共に、レアルの魔力障壁にひびが入ったのだ。


 「よし!」


 少年は障壁にひびが入ったことを確認すると、さらに刀を握る腕に力を籠めようとした。


 しかし次の瞬間、少年の精神に膨大な負荷がかかる。


 「うっ……」

 「まさか魔力障壁にひびが入るとはな」


 少年の目に映ったのは、障壁の中から自分の腹部にのびる銀色の剣。


 「俺の魔力障壁にひびを入れたことは誉めてやろう。しかしお前は俺の求めている相手ではない」

 「くっ……」


 レアルが少年の腹部から剣を思いっきり引き抜くと、少年はその場に倒れ込む。もう意識を失いそうだというのに、少年はどこか嬉しそうだ。


 「去年よりは成長しているってことか……」


 少年はレアルに剣を抜かせたことに笑みを浮かべた。なぜなら昨年は剣を抜かせる暇もなく倒されたから。例え一太刀浴びせられなかったとしても、それで十分嬉しい。


 しかし同時に思う。


 レアルの求めている相手といったい誰なのか。


 レアルほどの魔法師が求める魔法師だ。それはさぞかし強いのであろう。だがそんな魔法師がこのレイリア魔法大会に出ているのか?


 レアルは世代最強の魔法師であり、それほどの魔法師が求めている相手なら昨年のレイリア魔法大会で頭角を現してもいい。しかしそんな魔法師はいなかった。


 (一体どんな奴なんだ……)


 少年は最後のそう思って、光の塵となって消えていく。


 レアルはそんな少年のことを見ながらつぶやいた。


 「どこだ、アンノーン」


 レアルは好敵手(ライバル)の名前を呟くのであった。






 そして夜も深くなり、二日目終了を迎える。


 二日目の脱落者は全部で十三名

 二日目終了時点での総脱落者数は三十二名

 二日目終了時点で残っている生徒は二十八名(内二名はすでに戦闘不能)


 なお、セナビア魔法学園、アルセニア魔法学園は脱落者ゼロ


 そしてレイリア魔法大会は三日目へと突入する。


 いつも読んでいただきありがとうございます。次も金髪です(どの金髪だ)

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