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僕は王様 4

 アルドンサが去った後、私は王の間で完全に孤立した気分だった。

 目の前には、子どもの容姿ながらも、この王国を統治する絶対的な君主。

 そして、その周りには何人もの大臣や兵士がいる。

 唯一この空間に私と同様に場違いな雰囲気を出している存在といえば、王の側に立っている修道女モニカぐらいであろう。

 しかし、モニカは王の相談役と言っていた。そうなるとやはり完全なる部外者は私だけということに……


「おい」


 と、私がそんな風に不安に思っていると、国王が声をかけてきた。


「は、はい……なんでしょうか?」

「……お前、ホントにカルリオンの許婚なの?」


 国王は明らかに疑っている感じの顔で私にそう訊ねてきた。


「え……あ……まぁ、そうですね」


 私がそれを肯定すると国王は苦々しい顔をした。


「えー……ホント? 本気でそう言っているの?」

「ほ、本気、と言いますと?」

「だからさぁ……いやね。僕はカルリオンのこと知ってるから。アイツ、いつもいつも僕と謁見するときは無愛想でさ……あんな感じの悪いヤツはいないと思ってたんだ。で、そんなヤツが家出したって聞いたから胸がスカッとしてたのに、帰ってきたと思ったら許婚って……僕としてはあんな性格の悪いヤツに許婚ができているなんて信じられないわけ」


 国王はイライラした様子でそう言った。

 アルドンサが……性格悪い? そういえば、アルドンサは旅に出る前はカルリオンの家の中でも笑ったことがないとか言っていたっけ。

 そういう状況で国王と謁見したこともあったのだろう。それで、この幼い国王はアルドンサが自分に対して大層態度が悪かったことを未だに根に持っているわけだ。

 要するに……拗ねているのか。


「あー……陛下。その……アルドンサは確かに過去において陛下に対して無礼な態度をとっていたかもしれません。ですが、アルドンサは私から見れば、将来の妻とするに充分すぎる程に優しい女性なのです」

「なっ……お、お前、恥ずかしいこと言うな……」

「え? そうでしょうか?」

「うふふ~、そうですねぇ~。中々恥ずかしげなくそんなことは言えませんねぇ~」


 モニカが相変らずのい間延びした口調でそう言った。

 いわれてみれば確かにさらっと恥ずかしいことを言った気もする。


「……でも、納得いかないなぁ」


 しかし、国王はあくまで不満なようだった。そういわれたところで私にもどうすればいいのかわからなかったが。


「陛下、何がご不満なんですかぁ~?」

「……知らない。とにかく納得いかないんだよ」

「うふふ~、もしかして、陛下、アルドンサさんが羨ましいんですかぁ~?」

「なっ……! なんだと!?」


 モニカのその言葉に国王は顔を真っ赤にして立ち上がった。


「だってぇ~、そういうことなんじゃないんですかぁ~? 納得いかないというのはぁ~?」

「そ、そういうことじゃない!」

「うふふぅ~、大丈夫ですよぉ~。陛下にもきっと素敵なお相手が見つかりますからぁ~」

「くそっ……おい、お前!」

「え? な、なんでしょうか?」

「僕は納得しないからな! あんなヤツに許婚ができるなんて!」


 そういうと国王は立ち上がった。


「今日はもう帰っていい! でも、また呼ぶからな!」


 そういい残して国王はそのままその場を去って行った。国王の背後を何人もの臣下が付いて行く。


「うふふ~。陛下も難しいお年頃ですからぁ~、仕方ないですねぇ~」


 国王が去った後、眠気を誘うような声が私のすぐ側から聞こえてきた。

 モニカが私のすぐ側にいてニヤニヤと微笑を浮かべていた。


「……陛下はおいくつなんだ?」

「はい? ああ。えっとぉ~……今年で18歳ですよぉ~?」

「え? 18歳!?」

「そうですよぉ~? お若く見えますからねぇ~」


 てっきりマリアンナと同じくらいに見えたが……まぁ、国王という立場だ。子どものまま18になったというのも納得がいく。

 そもそも、ちょっと前までの私も、大して変わらないようなものだったわけだし……


「あ~、そうだ。シャルルさん。せっかくですからぁ、お近づきの印に、大聖堂にいらっしゃいませんかぁ~?」


 と、私がそんなことを考えていると、モニカがいきなりそんなことを言ってきた。

 そうだ。今は国王が幼く見えることよりも、目の前のどこか不思議な雰囲気のあるシスターの方が問題だ。

 一体どうしてこの城に、シスターがいるのか? コイツは一体どういう存在なのか?

 そして、何より私にとってシスターという存在はどうにも不吉にしか思えなかったのである。


「大聖堂……行っていいんですか?」

「ええ、もちろんですぅ~。ジンゼの神は全ての人を赦しますからぁ~」


 眠たそうな声に、眠たそうな目つきで、目の前の純白のシスターは私に微笑みかけたのだった。

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