僕は王様 3
「陛下~、ダメですよぉ~、きちんとお客様のお話しを聞かなくてはぁ~」
間延びした喋り方のままで、白い聖女は私とアルドンサの横を通り、国王の前に出た。
シスターにそういわれると、国王は今一度金色の椅子に座りなおした。
「……わかってるよ。ふんっ」
「あららぁ~、困りましたねぇ~……お二人さん、何か陛下のお気に触るようなことを言いましたかぁ~?」
そういわれて私とアルドンサは顔を見合わせる。
「い、いや、何も言っていないが……」
「そうですかぁ~……あ、そういえば、お二人さんは、どちら様ですかぁ~?」
「……私は、アルドンサ。アルドンサ・カルリオンだ」
「あぁ~、アナタがカルリオン公爵の娘さんですかぁ~。どうもぉ~、私はモニカと申しますぅ~。陛下のご相談役をやらせてもらっているんですよぉ~」
モニカと名乗ったシスターの喋り方に明らかにアルドンサはイラ付いているようだった。
確かに私としてもあまりにも間延びしたしゃべり方は、まるで人を馬鹿にしているようにも聞こえる。
「そちらの方は、誰ですかぁ~?」
「え? あ、ああ。私はシャルル。その……アルドンサの――」
「婚約者だ」
アルドンサがすかさずそう言った。
モニカも目を丸くして私とアルドンサを見る。
「あららぁ~、そうなんですかぁ~。うふふ、いいですねぇ~」
「……失礼だが、シスターモニカ。今私たちと陛下は大事な話をしている最中だったんだが……」
「大事な話って、革命とかなんとかってことですかぁ~?」
イラ付くアルドンサと対照的に、モニカはこの上なく脳天気にそう聞いてきた。
「ああ、そうだ」
「うふふ~、アルドンサさん、革命なんて、ありえませんよぉ~。この国の国民はみ~んな、陛下のことが大好きなんですからぁ~」
「しかし、私達は実際に革命軍が組織されているところをこの目で見て――」
「陛下ぁ~。陛下は、どう思いますかぁ~? 陛下の命を、この国の人たちが狙っていると思いますかぁ~?」
そう聞かれて、無論、国王は最初からそんな話は信じていなかったという表情をする。
「僕はそんなこと思っていない。あり得ないね。そんなこと」
「ですよねぇ~。それに陛下にはジンゼの神のご加護があるのですからぁ~。ジンゼの神のご加護があるうちは、陛下には決して危険は及びませんよぉ~。それに関しては、ジンゼの神のしもべであるこの私が保証しますぅ~」
「ふんっ。言われなくてもわかっている。と、まぁ、そういうことだから。カルリオン。お前の言うことなんて聞かないからな」
まるで……というか見た目どおり子どもっぽい言葉を浴びせられてアルドンサは酷く苦々しい表情をした。
それにしても、私が気になったのは、先ほど出てきたシスターだ。
修道服を着ている、というだけでどうにも気に掛かってしまう。
しかし、ジンゼの神がどうとか言っていたし、こいつは本当にシスターなのだろう。
だが、どうにも胡散臭いというか……そんな感じがしたのである。
「カルリオン。お前との謁見はここまでだ。さっさと家に帰れ」
「……わ、わかりました」
「ああ。でも、そこのお前」
と、私とアルドンサが失意のままに国王に背中を向けたときだった。
国王の言葉に私達は振り返る。
「……え?」
「お前だよ。お前。カルリオンの婚約者、とかいうヤツ」
「え……わ、私、ですか?」
「そうだよ。お前は残れ」
国王から直々に指名されたのは、私だったのだ。
アルドンサの顔を見る。
アルドンサも困惑していた。
「あらら~、陛下が直々のご指名なんてぇ~、珍しいですねぇ~」
「うるさい。モニカ、お前は黙っていろ」
「はいはい~、そこの人、えっと~……シャルルさん。もちろん、残らないと、ダメですよねぇ~?」
そういわれてしまうと、残らざるを得ない。
というか、国王に残れ、と言われてそれに反逆などできるはずもない
「……わ、わかりました」
私はひきつった表情でそう言った。
それを聞いたアルドンサは、そのままスタスタと扉の方に向かっていってしまった。
明らかに怒っているな、ということだけがわかる。
そして、アルドンサが出て行き、扉がしまった。
私はまたもや、一人で残されてしまったのである。




