僕は王様 1
私が街の様子に見蕩れていると、馬車がゆっくりと速度を落としていった。
そして、完全に停止する。
「着いたぞ、シャルル」
アルドンサが扉を開き外に出た。私もそれに続く。
「ここが、ブランダ城だ」
「こ、ここが……」
私は頭上を見上げて言葉を失ってしまった。
それこそ天まで届いてしまいそうな高さの城が私の目の前に存在していたからだ。
「さて、時間に遅れては不味い。城の中へ入るぞ」
「あ、ああ」
アルドンサにそういわれて私も馬車の外に出た。
目の前には巨大な城への入口が私とアルドンサの前に立ちはだかっている。
そして、その前には屈強そうな兵士が、全身を鎧で包んで立っていた。
「さて、行くか」
しかし、アルドンサはあまり緊張していないようで、そのまま兵士の近くに寄っていった。
「カルリオン公爵の娘、アルドンサ・カルリオンだ。本日は陛下への謁見でここまで来た。通してもらおう」
その言葉に兵士たちは何もいわなかった。
「行くぞ、シャルル」
「え? あ、ああ……」
果たしてそのまま通過していいのか疑問であったが、私とアルドンサはそのまま兵士達の側を通り過ぎて、難なく城の中へと入って行くことが出来た。
入口から入るとまず城の中庭らしき場所に出た。
所々に美しい花が植えられており、綺麗な景色だ。
私とアルドンサはその中庭の真ん中を抜ける。
すると、今度は本格的に城の内部に入り込んだようだった。
長い廊下に、幾つもの部屋。
そして、その廊下を行き来する大勢の使用人。
「はぐれるとわからなくなるからな。気をつけろよ」
「あ、ああ。わかった」
私はアルドンサの後ろにピッタリとくっ付きながら先に進む。
幾つかの階段を上がり、何本もの廊下を歩く。
そして、私に疲れが見え始めた頃に、ようやくアルドンサが足を止めた。
見ると、扉の前には先程以上に重装備の兵士が立っている。
「アルドンサ・カルリオンだ。陛下への謁見をお願いしたい」
アルドンサが勇ましくそう言うと、重装備の兵士は扉の前からさっと横にのいた。
「さぁ、シャルル。ここが王の謁見の間だ。この先にいるのは、ブランダ王国を統治する絶対的な支配者……くれぐれも失礼のないようにな」
「わ、わかっている。そんなに脅かさないでくれ」
「はっはっは! まぁ、そんなに気負うな。だが……失礼だけは止してくれよ」
私とアルドンサはそのまま扉を開けて、中に入った。
扉の中は恐ろしいほどに広い空間だった。
所々に豪華な装飾がされた飾りものがあり、部屋の柱も壁も一流の素材でできていた。
そして、部屋の奥のほうに大きな座椅子がある。
驚いたことに、その椅子は金色に輝いていた。おそらく椅子そのものが金でできているのだろう。
さすが王の座る椅子だ、と私は感心していた。
が、その椅子に座っている人物と目があって、私は目を丸くしてしまった。
「……え?」
その黄金の椅子に座っているのは、その椅子よりも大分小さな少年……いや、子供だったのである。
「ん? なんだ、お前。僕の顔に何か付いているのか?」
「え? ぼ、僕? あ、アルドンサ、もしかして――」
と、言い終わらないうちに、アルドンサが私の頭を無理矢理地面に押し付けた。
「……馬鹿者……! 陛下の前で図が高いぞ……!」
声を絞りながらアルドンサは私に怒った。
「これより! ブランダ王国公爵、アロンソ・カルリオンの次女、アルドンサ・カルリオンと、クローネ・ド・ブランダ16世国王陛下の謁見を行います!」
と、私が混乱しているうちに誰かが声高々に叫んだ。
そして、次の瞬間にはけたたましいラッパの音が聞こえてくる。
私はアルドンサに押さえつけられたまま、ゆっくりと目だけを動かして頭上を見た。
その先には、やはりどう見ても、マリアンナより少し年上の可愛らしい少年が、私とアルドンサを見下していた。
「ん。わかった。じゃあ、始めよっか」
やる気のない表情で、少年……ではなく、国王陛下はそう言ったのであった。




