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真剣な話に入ります・藤告白(前編)

悪ふざけは続きます。っていうか全部悪ふざけです

 ショタコンという言葉は、正太郎コンプレックスの略であるという。

 俺はショタコンだけどその元ネタの存在を見たことがない。にわかに世間は厳しい。その中甘くない。フゥーハハハァー! 本当に中途半端の身は地獄だぜ!

 マザコンやシスコンのように、コンプレックスを略してコンとするシリーズは結構ある。

 俺が一番言いたいのはロリコンについての文句である。

 原作、ロリータにあるロリコンは少女がおっさんを好きになることであり、ロリコンロリコンって言われてる奴は全然ロリコンじゃね。お前らのそれ、ただの変態だから。

 でもそれは全然良い。誤用といってもそういうのに当てはまる言葉が他にないのだから全然許せる。女の子がおっさん好きになることなんて少ないし。

 一番の問題はロリコンすら略してロリって呼ぶ奴。男に向かっておいロリ、とか言うの。 もう本当にわけがわからん。一周回ってもそうならねえよ。一体何周したの? お前別にロリじゃねえから。ただの変態だから。

 

 そんなことを考えながら、放課後に俺は教室に残っていた。藤に頼まれたから。

 女の子の頼みを聞き入れる、なんて超クール! クールでキッチュでポップなナンバー、それでは園崎末恵さんで行くドラ知る、どうぞ。何言ってるのかはもう自分だけわかれば良いと思っている。全然ポップじゃないことは確か。それと、キッチュってなに?

 やばい、一人に慣れすぎてやばい。全然わけの分からないことばっか考えて暇つぶしできる。元々一人適正あったのかもしれない。なんで一人ってどうでもいいことたくさん思いついてどれも面白く感じてしまうのん?

 周りの生徒はこちらの空気を察したのか、普段そこそこ遅くまで残る勉強組や真庭忍軍もそそくさと帰った。俺達がどこか別の場所で話し合えばいいのに、いい奴らだ。

 藤は即座に立ち上がり、こちらにつかつかと歩いてきた。

「それでは、真剣な話をいくらかしましょうか」

 はい。できれば生存戦略もしてくださって結構です。

 なんて嘯くこともできないほど藤には珍しく、真剣な面持ちだった。

 可愛さも怖さもない、周りすら変えてしまうような真面目さに溢れている。

「いったい何を話すんだ?」

「二つ。まず、私達の将来の計画について」

 明るい家族計画? まず弟を作ろう。いや無理だ、それは俺と藤でもできない。

「第一段階として、まず、私と飯野君が結婚するでしょ?」

 藤は夢みたいなことを言った。夢ならできれば醒めてほしい。なんでそれが第一段階なんですか?

「第二段階、男の子を二人養子に取ります」

 で、でた~、ロリータ奴~。でもロリッ気が一切ないね。本来なら俺がロリコンであるべきなのに……何の本来だよ? ロリータの本来だ! そこに気付くとは、やはり天才か。

「最終段階、四人幸せに暮らす」

 藤の眼鏡がぴかりんと光った。なにそれ、幸せな未来しか見えない。

 あれなにこれ本当にデメリットが一切ないじゃん。

 俺、藤も二人の息子も愛せる自信が超ある。そもそも姉貴だってショタコンだが、年を取る度にショタの範囲広げてるし。いまだ俺を毒牙にかけようとするし、余裕じゃん。っていうかあいつは死ね。

 藤は本気か冗談か分からない顔だった。でも、俺もわりと真剣に考えたいくらいの妙案、問題は藤が俺をどう思っているかであるが。

 もし藤がこども二人の関係だけ楽しんで俺に見向きもしないとかだったら、たぶん死ぬ。

「で、二つ目の相談なんだけど……」

 たぶん、俺がほんわりと幸福と絶望に浸っている時に彼女は、言いづらそうに言った。

「今、飯野くんの家に行っても、いい?」

 それ、体温急激に下がるわ。絶対零度、いちげきひっさつ、いつおはたおれた!

 俺にとって家は禁句である。問題しかないレベル、上宮(うえみや)のテストかよ。と、内輪ネタ。

 ……実は、上宮なんて教師いないんだ。内輪ですらない妄想ネタ。うちの教師はみんな問題易しくて優しい。

 もう現実逃避するレベルで家ネタが禁句であることはわかってもらえただろうか。本当にナイーブでガラスのように繊細な問題なのだ。NGSなのだ。ネタルギアソリッドなのだ。つまり繊細なのだ。もはや自分でも意味不明だから反応しなくていいよ。

 それにしても、真剣な話として家に行くことを藤が持ってきたのはなぜか? ご両親に挨拶ってこと?

 俺は藤に家庭の話は一切しなかった。藤は家族の話を俺に一切言わなかった。

 普通、ご挨拶しようとか思うならもっと踏み込んで詮索するべきだろうと思う。そうしないのは、その必要がないからではないか。

 今まで藤が俺に家族の話を一切振らなかったことを怪しいと思ってしまった。

「藤は、俺の家族のこと、知ってるのか?」

 元から知っているなら聞く必要はないし。

「え、知らなかったの?」

「知らなかったって……何を知ってると思っていた?」

「私とあなたのお姉さんの関係」

 嫌な気しかしないよー! どこかにセーブポイントと世界樹の葉はありませんか? この際、しずくでも可。なんならハートのうつわでもよい。

 緑のキノコでもワンアップでも良い、魔方陣かフィールドマップでセーブしたい。

 レポートとれません! 残念でした!

 現実逃避が過ぎたね。

 話は確か、藤と俺の姉の関係を俺が知っているかどうか、だ。

「なんにも知らないんだけど……知ってんの? うちの姉」

 藤の表情は怯えたように固まっている。心中ではきっと「やっちまったぁ~」とでも思っているのだろうか。そんなにラフな感じだったら面白そうなんだけど、実際もっと血が凍るような思いなんだろうな。

「それは、まあ、昔、色々と、ね」

 もういいっすよ気にしなくて! 結婚して養子を二人貰いましょう! 俺働くから!

 藤はもうそんな気分じゃなさそうだ。なんで結婚と家族の話を二つもする必要があったんだ? 俺のこと好きなんだな?

「いやまあ、じゃあとりあえず、そんな感じの話でもしましょうか」

 なぜか敬語になってしまった。

 重苦しい雰囲気に耐えられなかったのかもしれない。

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