順応か迫害か・人生の悩み
「実は、先輩に告白されたの」
今明かされる衝撃の真実ゥ! キヨ、手出すの速いな……。っていうか知ってた。
「そ、それで藤はなんて返事を……」
「やだなぁ伊津男くんったら、聞いてたでしょ? お断りさせて頂きますって」
確かについさっき聞いた事であるが、すんなり飲み下せることではない。
「どんな風に告白されたの!? そっ、その、えっと、大丈夫なのか!?」
「あんまり話すことじゃないでしょ、そういうの」
そりゃ失恋の話でもあるわけだしそうだろうけどさぁ……。
なまら自分から少し離れたことであるため、現実逃避のしようもないし、藤のことだから気になって仕方ない。もしかしてこれが恋!? それも知ってた。
「そういえばドブ……じゃなくて眼鏡の先輩から聞いたよ、部長は同性愛者だって」
「ドブって……はいはい、伊津男くんは本当に駄目だなぁ」
未来の猫型ロボットのように呆れられてしまったが、それも仕方のないことである。
俺はあくまで全て藤のために行動している、もとい藤に好かれるべく、つまりは藤と一緒にいたいという自分のためだけに行動しているのだ。
文芸部はまさにその例。なんでドブとか読書ちゃんとかクロと親しくせねばならんのか。キヨは目立つほど優秀で嫌だし、挙句恋敵である。
「ダメでも何でも構わないよ。これがいつも通り、な?」
「うーん……私的には伊津男くんにはもっといろんな人と仲良くして欲しいんだけどな」
「なんで?」
「なんでって……まあ、常識的に?」
「そりゃ今さらでしょ?」
「ねえ伊津男くん……」
藤は少し足早になり、目前から俺の目を見据えた。
「今のうちに決めたほうが良いと思うよ」
それは、俺が最も考えたくないことである。
「順応するか、弾き出されるか」
……す、既に、弾き出されているんですけどね。
藤はふっと流し目だけ見せて、何も言わずに走って帰ってしまった。
俺はそれにただ何も言えず、追う事もできず、歩く事すらせず呆然と立ち尽くした。
そりゃ今まで何度も現実逃避に現実逃避を重ねた。事実を見過ごしてきた。
だがまあ、将来を考えるなら今のままではいけないのだろう。
キモがられ、うざがられる、だからそういう奴を切り離した人間関係を持つ、というのは一つの正解であるだろうが、それがこの先十年も続くわけではない。
いや、向こうからしたらそれでも良いんだろうけどね、俺は極少数派なんで。
なんで世間って協調とか協力を重んじるんですか!? もっとスタンドプレーありで行こうよ、正直生き辛いんですけど!
そういうことはぼちぼち歩きながら考えることにする。
夕焼けがやけに眩しく暖かい。
金欠であるため、もし大学に行くとすればそれが問題になるだろうし、しかも他人との協調性に欠ける俺がそこで上手くやる自信はない。
自分を偽り生きるのもしんどいし、それを耐え忍んで就職予備校などと言われる場所に四年も通う必要があるのだろうか?
人の趣味はそれぞれで、強制することも矯正されることもない、そう俺は信じている。
だがしかし、ショタコンはもはや趣味ではなく性癖で恋愛対象でもある。ショタコンじゃなくショタが恋愛対象なんですけど。
要するに俺は人間の男として捻じ曲がってしまっているのだ、社会的に見れば。
どうして他の皆は普通に振舞っているのに、俺だけ何かを隠し、騙して生きていかねばならないのか。
ま、キヨだって同性愛者であるが、それを隠して上手く生きているわけだ。彼女はきっと大学もいいとこ行って、バリバリのキャリアウーマンかなんかになって活躍しそうだと思う。
外国とかだとそういうのにフリーだとも聞くし、俺が思うほど生き辛くはないのかもしれない。
だが、そう容易いものと考えすぎてしまう方がいけない。
俺は一度そう考えてしまった。受け入れられるんじゃないかと思ってしまった。
だから、今、こうなってしまっている。
藤と出会えたことは本当に良かったと思っているし、なんなら後悔もないといっていい。
けれど人を信用できなくなったと言っていい、海棠、栗林、牛山、全部あいつらが悪い!
そいつらは俺が悪い、いや俺が間違っているとか言うんだろう、そして俺はそれに反論できない。
いつもの口上を垂れることもできるが、多勢に無勢なんだよな。
結局は順応か、弾き出されるか、順応か迫害かの二択。
普通は順応するだろう、誰だってそれが当然できるから。
でも易々と諦められるわけがないだろ! そんなだったら何も楽しくない! そう、生きてたって……。おおっといかんいかん、考えすぎは体に毒だ。
藤の所為で余計なことまで考えるところだった、こういう時は寝落ちするまで小説とか読むに限る、特に頭空っぽにできるやつ。
気分転換の方法を考えながら気分良く歩いていると、目の前に懐かしい顔が現れた。




