一歩近づく
この高校生というものは悩み多き年頃とは言うが、人間は誰にだって、どんな時だって、悩みの一つは抱えている。なんなら悩みがないのが悩み、だなんていってしまうほど。
別の話に思えるが、少年が可愛く、我々がかわいくない理由につながる。
それがズバリ、ひたむきさ、取り組み方の違いである。
我々は大人である。すれている、くすんでいる、汚れている、汚いし穢らわしいし不真面目なところがしばしばある。
周りに愚痴を零し、誰も聴いていない文句を言って、自分だけを納得させる。
だが子供は納得がいかないと泣く。泣いているとは本能の正直な行動であり、自分を隠さない、大人とは違うのだ。正直とは好感が持てるし、転じて可愛いなどの感情に変わる。
ならロリでも良いということになるが、はいはいロリでもいいんじゃないの?
まあ俺がショタ好きなのはショタが単純に可愛いからであって、それをより正当化すべくあれこれ理由をつけているだけなのだ。
だから全部蛇足的で無駄なことであるが……まあ、理論はたくさん組み立て、自分を正当化することは正しい。正しくする作業だからな。
「伊津男くん」
「はっはい!?」
名前、ですよ。名前名前名前ですよ!!? え、なにこれ? 聞き間違い?
「小説、書けたの?」
んー。せっかく盛り上がりそうな雰囲気と沸き立ったテンションが、一気に冷めちゃった。久しぶりの絶対零度に俺も確定一発、藤はこおりタイプに違いない。俺アブノーマルタイプね。
「小説、書けてません」
「ま、そうでしょうね。一日で書けるものじゃないから」
藤はふふんと、少し得意げに笑う。おいなんだこれ可愛いじゃないか。
「ふ……よ、芳乃は、一日で書けるのか?」
無理した結果、汗はだくだく、心臓はばくばく、目はキョロキョロである。これがキョロ充?
藤はきょとんと呆けている。凄い驚いているらしい。サプライズ芳乃。
「飯野くん、名前で呼んだんだね?」
「えーっえーっ! 藤さんが先に伊津男くんっていったんじゃないですかー!!」
「いや、なんか呼び名のバリエーション考えたけど、思いつかなかったから……」
ま、いいのんとか色々呼びますしね。俺もよしのんとかあわせてたし、一応今回もぉ、ほら、あわせるって形でいいよね?
……過去の俺をぶん殴ってやりたい気持ちを押さえ、落ち着いて冷静に沈着に行動。
「まあ、そこは気にしないで、一日で書けるの?」
「えっへっへ! そりゃあもうキャラが立てば後はもう自然と筆が動くってもんよ!」
良かった、藤は全然普通だ。普通すぎてなんか死にたくなる。これが奴の死を誘う能力か……!
「是非とも教え預かりたいですねぇ!」
「うーん、前から思ってたけど飯野くんの乱暴な敬語って前から思ってたけど結構うっとしいよ」
おそろしく鋭い一言。オレでなきゃショック死してたね。本気を出されたら俺の首ぐらいわけなく括れただろう……。
いやいやいやいやマジで俺なんかもうけんとくんとのハッピーエンディングが見えるほどの衝撃を受けたよ! ビッグバンのインパクト顔負け。
え、俺、次なんて言えば良いの? いや、これは答えは沈黙ってやつか?
「あの、すみませんでした」
「あはは、わかってないなぁ」
これ以上わかってないとか言われたらもう恐怖のあまり言葉が出せない。
「敬語とか、使わなくて良いって、言いたいんだけどな」
急転直下の大逆転、起死回生の一撃が見舞われた。これで俺の勝利が確定、藤とのハッピーウェディングが見えた。
「そ、そうか? まあ、ちょっとなれないと駄目だけど、試みる」
「うん、よろしくね」
藤は唇に手を当て、何かこう、甘酸っぱいような投げキッスのような行動をして見せた。
今日の藤ってなんかエロイ薬でも飲んできてるのかってくらい、非常に扇情的。
これが青春か! リア充爆発しちゃいそう! やっと青春が聞こえた! この瞬間に聞こえた!
「じゃ、部活でね」
「はーい」
俺がでへへとにやけていると、すっかり部活に行くことを約束してしまっていた。
いやぁー! 困ったな部活なんて! 本当は行きたくないけどまあ仕方ないなぁー!
……なんか、全く上手いこと丸め込まれた気がするけど、今は全然平気。 この快感が大好き!




