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ショタコンと腐女子のシリーズ  作者: 陽田城寺
驚天動地の部活変
28/84

どうでもいい話・それが男のロマン

 いつもはなんか少年のにおいがする会話から始めるが、今日はそれをしない緊急の話。

 藤って、胸、大きくない?

 これを昨日の夜あたりに気付いたらこの四時間目の休み時間までずっと考え続けてもう頭が働かなかった。女性のこととショタのことは同じ脳ミソと思えないほど別な動きをする。脳味噌が二重人格レベル。

 で、だよ。藤の胸。

 今朝から何度もちらちら見てるんだけど……あ、別に変態じゃないです。え、警察? ちょっと待ってくださいよ、おっきい胸つけてる方が悪いんじゃねえのか!?

 という訳のわからない一人芝居はやめて。

 死後は孔明に教えを問いたい、という一人司馬懿もやめて。

 俺はいったい自分がどうしたいのかわからないという状況である。

 藤にバストサイズを聞きたいか、と問われると別にそうではないが、なんか無性に胸がもやもやして苦しい。

 でも本人にそんなこと聞いたら引かれるだろうし……ああ、大きいか小さいかだけでも知りたい。

 くそぅ、俺が真の主人公ならヒロインのおっぱい生もみもみイベントがあるはずなのに、どうして現実はいつも非情なんだ!?

 でも、大きいか小さいかって要は主観よな? 俺が大きいと思えば大きいだろうし、小さいと思えば小さいわけで。

 やれやれ、やれバイアスだ、やれ偏見だ、と他人の下らない価値観に囚われないのが俺の美点だったのに、囚われちまったぜ。

 だが、すでに俺は囚われているのかもしれない、藤という名の恋の牢獄に……。

 どうしてオトコノコって奴はこう下らなくて恥ずかしいことを考えるんでしょうね? でもこれが滅茶苦茶面白い。でもそれより女心がわかるようになりたい。

 ちなみに、藤の胸以外の事を考えるという選択肢ははなからない、脳が勝手にそんな動きをしてしまうので、俺の意志では止められないのだ。

「イッツォー巡査、元気?」

「はひぃぃぃ!! げげん元気であまりりす!!」

 アババババーッ!!!

 い、いや、大丈夫、全然冷静、狼狽してない、平気、奇声とかたぶん発してない。

 そ、そう、この高鳴る鼓動もあれ、恋のドキドキだから、今惚れ直しただけだから、ほら、ミニスカポリスってエロイじゃん、そんな感じ?

 見ると藤は明らかに訝しげな視線でした。まぁ何でも可愛いからいいですけど。

「今日はいつにも増して変だけど……大丈夫? 熱とかない?」

 おでこ触ってー、僕のおでこ、今なら無料だよー? ……現実は斯くも厳しい物也。

 我が額、触れる物無く、唯だ熱を上げる耳……これが俺の漢文力。わりと偉そうな本読んどけば授業よりかは難しい言葉を知っているものだ。

「本当に大丈夫? アババ!! とか言ってたけど……」

「え!?」

 アババ言ったのかよ俺!? 発してたよ奇声! イヤーッ!

「まあ、でもいつもの飯野くんらしいよ」

 俺っていつもどんな風に見られてるの!? いきなりアババアマリリスとか言い出す人間って思われているの!?

 流石にジョークだと信じる。常時アババアマリリスは破壊力高すぎる。それが普通ってただの変人どころじゃないよ、もう本当に変な変人だよ。

「そ、それよりも藤さんは一体どうしてここに来たのかなーッ!?」

 不自然に釣りあがる語尾は狼狽の証ですが、わたくし、今かなり落ち着いてますわよ?

「ああ、それはこっちの台詞だよ。なんか今日、飯野くんやけにこっちをチラチラ見てたけど結局何も言わないからさ」

 は、は、はぷはぴはぽ……心情を例えるなら、浮気メールを嫁に見られた夫。まだ夫じゃないけど。まだ、ね、これ重要。

 だが、今それ以上に重要なのは視線がばれていたことである。

「藤をチラチラ見てた? はは、それはなんか、たまたまじゃないかな?」

 マジタマタマ。リーフの石で進化させて全部ナシにしていただきたい。俺今上手いこと言った!!

「え~? 隠すとなんか怪しいなぁ……」

 なんでこんな時は鋭くてしかもボケを入れないんだよ! 突如として始まるBLトークはどうした!?

「いや、何にもないって。ほんとほんと、えーっと、三十円は賭ける」

 嘘だから低予算で済ませる、それが俺流。

 藤の目が冷たいものに変わった。

「飯野くんがそれやる時っていつも嘘なんだよね。本当に嘘が吐けないんだから」

 モハヤコレマデー! なんだよこれ……マジで笑えないレベルなんだけど。

「ほら、正直に、YOU言っちゃいなよ!」

 ……。

 一・間一髪誰かが助けに来る。

 二・ハンサムな俺が解決策を編み出す。

 三・いっぱいおっぱい僕元気、現実は非情である。

 答え、三……三……三……、俺も野良犬の王に助けられたい。でも折れた肋骨が肺に刺さって死なれるのは勘弁。

「飯野くん、二人の間に隠し事は、なし、だよ?」

 あーはいはい、もうこんなのに折れるんだから男って、ほんとばか。っていうかあたしだけすかね?

「実は……最近、ますます藤に見惚れる時間が増えたかなって……」

 答え、二……二……二……、OH、MY、GOD!!

 藤はしばらく黙ったまま、ふぅん、とだけ言うと戻っていった。

 嘘がバレているのか、はたまた照れたのか。

 どちらにせよこのままでいるのは精神状態に非情によくない、なんとかシードがゴリゴリ濁って魔女になるわ、ダークチップ使い放題で体力の最大が九百九十五くらいになるレベル。あんま使ってないな。

 部活中でも帰宅中でも、正直に話そう。

 正直者は損をするというのが定説で、信じるものは掬われて巣食われるのが基本であるが……。

 それでも、信じ続けた先にはきっと平和と安息が待っている! 

 その末路がヤンデレなんだと俺は思うが、まあ、藤に対して病むなら別に……え、警察? ちょっと冗談はやめて!


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