第十一話 撃破
「少しは力が上がったようですが、それもすべて無駄です。私を倒せるわけがないのですよ!!!」
その言葉で、ゾルティアはその姿を変えた。人間のような姿から、化け物のような姿へと。
頭には角が生え、腕の甲から刃が飛び出ている。
さらに、爪の長さも伸び、全身が獣の皮を纏ったみたいに分厚くなっている。
「こうなればもうおしまいです。さっさとアナを私の手にしますよ」
そして、異形へと化したゾルティアは早速シドへとその爪をふりかざす。
「ふん!」
シドはその爪を剣で受け止め、はじいて、すぐさま次の一撃を入れに行く。
それをゾルティアが受け、一進一退の攻防が続いている。
「その程度なら、おそるるに足りませんね!」
そう言ったゾルティアは、自分の後方にいくつかの魔法陣を作り、そこから火の玉が複数個飛び出る。
剣だけでもう相手にするのが精いっぱいだったのに、魔法も飛んで来れば、もう手が足りないところの話ではない。
「魔法も残ってるのかよ」
不満を呟きながら魔法を斬る。
「私も忘れてはいけませんよ?」
忘れてはいない。ただ、手が足りないだけだ。
すぐさまゾルティアは爪でシドの体を切り裂こうとする。
シドは即座に回避行動をとるが、ぎりぎりで手軽い一撃を喰らう。
「っくそ」
魔法と攻撃のコンビネーションはずる過ぎるだろ。そうシドは思い、下にいるアナを見るが、アナは雑魚魔物の処理で手一杯なようだ。
「よそ見している暇があるんですか? いいご身分ですねえ!」
ゾルティアの攻撃をシドが受け止める。
「よそ見はしてない」
「そうですか、そうですか。でも、私に勝てるかは別ですよ」
そしてシドは再び防戦一方となる。
僕は、この力を生かし切れていない。まだ、僕が分かっていない真髄があるはずだ。その力を扱えなくては、こいつには勝てない!
シドは戦いのさなか、力を得ようと苦心している。
さあ、力を、さあ、力を!!!
「シドさん!」
すると、突如脳内にアナが語り掛けた。
「どうした?」
「シドさん、今迷っていませんか?」
「どういう事だ?」
「迷う必要はありません。それは貴方に合うように作られている力なのですから」
迷う必要がない? どういう事だ。だが、迷わずに……。
「はあ!」
シドは迷わずに剣に全力で力を込めた。
その力により剣は赤色から黒色に変わった。
ああ、そういう事だったんだな。そうシドは理解した。
アナから与えられた力、それは赤色という不完全な姿ではなく、剣を完全に黒にすること。そうすることで、シドノツルギは完全な力を手にするのだ。
これならいけるぞ。
シドはすぐさま剣を持ちゾルティアの方へと走り向かって行く。
「ゾルティア! 覚悟しろ!」
「剣の色を変えたくらいで、調子に乗るなああ!!!」
シドの剣とゾルティアの剣がぶつかっていく。一瞬で数十回も互いがぶつかっていく。
「剣だけでは無駄ですね、ですが、魔法ならどうですか?」
そして再びゾルティアの後方に魔法陣が出来上がり、魔法がシドに向かって行く。
だが、その魔法がシドに届くことはなかった。アナが遠方からその魔法を全て消し去ったのだ。
「行って。行ってください! シドさん!」
「ああ」
そしてシドは力を籠め、首を守ろうとするゾルティアの爪をはじいていく。
「ふざけるなああああ」
「終わりだ!」
そのままシドはゾルティアの首を全力で斬り、首が地面に転がった。
「このまま終わっていいものですか。アマスター様の復活を我々は……」
「僕とアナは望んでいない。それでいい」
「教えて! アマスターとは何者なの?」
「アマスター様か。偽物のお前に言う必要はない。お前はさっさと体を引き渡したらいいのだ。私の意思は他の者が引きづくだろう」
「そう……」
アナは手に魔法を込めた。
「今度は偽物じゃないですよね」
「知るか」
そして、ゾルティアはアナの魔法により消滅した。
「やったね」
「ああ」
アナは手をシドの方に向け、「ハイタッチしましょう」と言った。それに対してシドもタッチする。
だが、その時――
「りゅあああ」
魔物がシドたちに襲い掛かる。ゾルティアの消滅により、力は弱くなっているが、それでも恐ろしい存在なのは間違いがない。
「どうしましょう」
「そうだな。倒すしかない」
そして二人はその場の魔物を掃討した。
「これで最後……ですね」
「そうだな」
運のいいことに、統制を失った魔物達、半分程度の魔物が逃げてくれたおかげで楽に事が済んだ。
「これで……」
そうアナがつぶやいた時、アナがその場に倒れた。それは唐突だった。
「魔力を使いすぎたのか?」
アナは言葉を返さない。
シドはすぐさまアナを背中におぶり、ロームの残党がいる穴に走りゆく。




