080
思いついたのは栄椿だった。
「ルーは向こう(シアトル)でバンド組んでたんだよな?」
「イエス。オイラはドラマーですよ。」
「兄は何か楽器出来る?」
「バイオリンとチェロとピアノを少々。」
「完璧超人かこの野郎っ。ギターはどう?」
「クラシックギターを少し触ったことがある。」
「よし。女子共は歌え。」
「何?」
「姫ポンと絢ぽん。杏ちゃんにサーラちゃんでアイドルユニット結成だ。」
「ラ○ライブだよっラ○ライブっ。」
栄椿は1人で盛り上がっている。
「楽しそうね。やりましょう。」
サーラが真っ先にそれに乗った。
「待て。何もしないよりはマシだが」
「コイツに任せたら変な衣装で変な踊りさせられるぞっ。」
宮田杏はさすがに判っている。
「衣装は制服に決まっているだろうが。女子高生の着る制服ほど破壊力のある防具はないぞ。」
破壊力のある防具?
橘結と小室絢は何も言わない。お芝居はをしたいのかな。
「椿ちゃんは何するの?」
橘結の質問に
「ボクはプロデュース。」
「それじゃ私出ない。」
「そうだな。私も出ない。」
橘結と小室絢が栄椿の暴走列車から飛び降りた。
「どうして?楽しそうじゃない。」
「言い出した椿ちゃんがステージに出ないなら私も出ない。それだけ。」
「去年だって人に恥ずかしい思いさせて今年もそのつもりか?」
橘結と小室絢が栄椿を追い詰める。
「いやホラ。ボクはその表舞台に出られるようなルックスじゃないから。」
「ねえキズナ君。椿ちゃんてカワイイよね。」
うん。かわいい。
「え?アナタ自覚ないの?」
「何だよサーラちゃんまでっボクの事はボクが一番判っているからなっ。」
「何かあったの?」
南室綴の問いかけに、栄椿は口を閉ざす。
「小学生の頃、コイツ男子と付き合っててさ。」
宮田杏が暴露を始める。
「相手はサッカークラブのキャプテン。いい男だ。」
「その頃のコイツは物凄く女の子してたんだ。」
「黒くて長いキレイな髪に、白いワンピなんか着てたらまんま雪ん子で」
「自分のこと絶対カワイイと思ってたね。まあ実際かわいかったんだけど。」
「でイケメンサッカー少年と付き合って、よくも悪くも目立っていた。」
他の女子からの総スカン。悪質なイタズラ嫌がらせ。
「でもコイツめげなくてさ。」
「ある日ね、」
栄椿は自分の口で語り始める。
「ある日、その男子がサッカークラブの後輩の男子と2人で居残り練習していたの。」
「とても楽しそうに練習してた。」
「で練習終わって、キャプテンはその男子と手を繋いで部室に入った。」
「まさか。とも思わなかったよ。」
「中々出てこなくてさ、気になってどうしても我慢できなくなって中を覗いたんだ。」
「そしたら。そしたらキャプテンとその男子が、その、チューしてて」
「ボクの初恋はこうして終わったんだよ。」
なるほど。それで目覚めたんですね?
「何だとっ。長々としたのはその説明じゃないぞっ。キズナのくせにっ。」
「もうこの世の終わりかってくらい凹んでいた椿を見兼ねて梢が声かけたんだ。」
「それまではお互いの事知っているって程度であまり好き同士じゃなかったんだよねー。」
「おう。むしろ嫌いなタイプ。カワイイのひけらかしてイケすかねぇ。」
「ボクもガサツで図々しくて無神経で小煩い子猫なんて嫌いだったけどねー。」
「でも梢が面白そうなヤツだからって。」
「イヤだってのに無理矢理引っ張りまわされた。」
腹いせにとばかりに今までイジメていた連中に仕返しした。
「それで親友になったのね。素敵じゃない。」
サーラは何故か感動している。
「素敵とかそんな話じゃないっ。」
「ボクは男の子にだって勝てないって話をしてたんだよっ。」
それはその男の子が男の子を好きになったって話じゃないですか。
栄さんがどうこうって関係無いような?
「そうね。それで自分をボク呼ばわりする病気になったってだけのお話しよね。」
「病気?ボクは病気なのか?」
「拗らせてるよねー。」
「うん。」
「そう思う。」
誰も否定しないね。
「お前らそれでもトモダチかっ。」
栄椿が恐れられるようになった原因は宮田杏と柏木梢と共に行動するようになったからだろう。
「ダイヤモンドダストもオーロラエクスキューションも撃てなかったなぁ。」
何の話?
「知らない?ヘンな踊りしながら必殺技繰り出すの。」
「雪女だから撃てると思ったんだけどなぁ。」
「キズナだってカメハメ派の練習したでしょ?」
何です?そのカメハメハって。
「マジかコイツ。」
「でもね、雪の日にちょっとした事は出来るんだよ。」
「機会があったらキズナにも見せてあげるよ。」
無理しないでいいよ。
「キズナには見てもらいたいんだ。ボクのトモダチだからね。」
僕の正体を知った彼女が教えてくれた。
彼女は僕が「何か」を見てしまう事で悩み苦しんだ事を知ってそう言ってくれた。
本当は誰にも見られたくなんてない。
それは雨の日に魔女の本当の姿を見て、僕がその正体を晒したように、
彼女もそうする事で、僕と対等のトモダチであろうとしたいのだろう。
僕が彼女に出来るのは
いつかきっと、それが次の機会かその次の機会かは判らないが
彼女が好きになった王子様が女性を好きな王子様であるよう願うだけだ。




