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宮田桃に言われるまでもない。
あの集団の中で異質なのは明らかに僕だ。よく判っている。
中央にいるべきは、エリクやルー。
事実、今エリクと小室絢が楽しそうに笑顔で会話をしている。
羨ましくなるほどよく似合う。
俳優だとかモデルだとかが撮影に来ていると言われても疑わない。
2人に栄椿が加わってもその意見は覆られない。
ルーが橘結に何やら話しかけている。南室綴が間に入るが笑顔だ。
宮田杏とサーラ・プナイリンナが笑顔で駆け回る。
皆が皆と笑っている。
キラキラしている。
僕は携帯を取り出して、立ち止まって皆に向けた。歩いていたのではブレてしまう。
少し暗い。キレイに撮れるだろうか。少しずつ距離が開いてしまう。間に人が入ってしまう。
ああダメだ。撮れない。
もうちょっと操作に慣れていれば、せめて僕と皆との間に誰もいなければ。
縁日で何を考えているのやら。
僕が落ち込んでいるのは写真が撮れなかったからだけか?
「どうしたの?急ぎの用でも入った?」
うわっ
サーラが目の前にいた。他の皆も僕を取り囲む。
何?どうかしたの?
「どうかしたのはお前だろ。携帯見詰めてため息吐いてどうしたんだよ。」
え?あ、皆の写真を撮ろうと思ったけど撮れなかったんだ。
「また隠し撮り?」
またって何。
「いいじゃない。撮りましょうよ。」
サーラが乗った。
宮田杏は少しでも明るい場所へと僕達を屋台の裏に連れ、
照明を少し向きを変えてもらえるよう話を付けた。
じゃあ僕が撮るからと言うと怒られた。
泣きそうになるくらい怒られた。
どうして僕が中央なんだ?
その後栄椿が
「キズナの気持ちはよく判る。後は任せろっ」
とその後の縁日での様子を撮影していた。
後日そのデータを貰うのだが、エリクとルーの2ショットがとても多かった。
夜も更け、名残惜しくも「祭り」が終わる。
サーラはこの1日ですっかり馴染んだ。
帰国する際にはお互いを「親友」と呼ぶほどだった。
帰宅して浴衣を着替えて帰り支度をしながら、サーラは祖母に御礼を言った。
「とても楽しかった。素敵なユカタを本当にありがとう。」
「サーラちゃん。荷物にならないようならお土産にもらってくれない?」
「え?でもこれキズナのお母様の」
祖母は僕を見て同意を求める。
うん。もらってくれると嬉しい。母も喜ぶと思う。
着る機会はあまり無いだろうけど、とても日本的なお土産になるよ。
「ありがとう。本当にありがとう。こんなに素敵なお土産はないわ。」
祖母とそして僕の頬にキスをする。
翌日、大量の花束が届く。
トルコキキョウとカンパニュラ。ダリア。
いつどこで調べたのか、それらは全て「感謝」を意味する花言葉を持つ。
そして白いカーネーションが一輪。
これは僕の母に充てた花。
祖父には恐らく高級なワイン。勿体無くて飲めないと言っていた。
話は少しだけ遡る。
この学校の文化祭は、1年毎に「クラス単位」と「クラブ単位」で行われる。
今年は「クラブ単位」
僕は南室綴に半強制的に文化祭実行委員に任命され
彼女と共に、「帰宅部」達の企画を取り仕切る。
クラブは催し物を実行委員に申請するのだが
「帰宅場」は実態がない。
つまり、個人であろうと団体(同好会)であろうと
何か企画が上がればその規模に応じて場所や時間を確保しなければならない。
その振り分けが僕達の仕事。
例えば数人がバンドを組んでライブをしたい。と申請があれば
軽音部や吹奏楽部だけでなく、演劇部とも調整をする必要がある。
体育館か屋外ステージ。午前か午後か。
今は9月の2週目。申請を受付開始したばかりでさほど忙しくは無い。
「それで、皆は何をするの?」
エリクもルーも含め、僕達は全員帰宅部。
宮田杏は屋台で儲けようとしていたが
昨年資材や材料等全てを柏木梢が手配していたので
それを自身で揃えるのが面倒だと諦めた。
「サーラちゃん。去年のお芝居の動画見る?」
「えっ?録画したの?」
「あっコレ言っちゃダメな奴だったっ。」
小室絢と橘結の主演のヴァンパイアとお姫様の物語。
「それよりキズナのボケがまた委員になんてなりやがって。」
「あら文句あるの?」
「ある。こればかりは文句を言いたい。いやその前にだ」
「つづりんはキズナのあんな姿やこんな姿を見たくないのかと問い詰めたい。」
「そんなの個人的に見るわよ。」
栄椿は僕に何をさせるつもりだったんだ。
「そうね。キズナが素敵なのはあまり知られたくないわ。」
サーラまで。すっかり馴染んだ。
「だからってお芝居なんて1ヶ月かそこらで。」
「去年もそれくらいだったじゃん。」
「それに考えても見ろ。今年は野郎2人が特殊効果なしでSFできる。」
「面白そうだね。」
「私もやりたいですねー。」
エリクもルーも乗り気だけど大丈夫?正体バレるよ?
「ステージの上での事なら加減さえ間違えなければ」
「アナタ達その加減が出来なくてキズナに」
「ああっそうでした。」




