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Kiss of Monster 02  作者: 奏路野仁
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駅で待ち合わせして、そのままカフェへ。

本当にごめんなさい。

「うん。もういいって。」

でも何か用があるから連絡くれたんでしょ?

「実はさ」

柏木梢は、突然の旅立ちを告白した。

「9月から3月までシアトルへ留学するんだ。」

随分と急な話だ。

「1学期の途中には決まっていたんだけどさ、言うタイミングがなくて。」

「皆と遊ぶのに邪魔になると思って黙ってた。」

夏休みに「皆で海に行こう」と言い出したのはこれが理由か。

「ごめん今頃。」

宮田さんと栄さんは?

「夏祭りの時に。」

怒られたでしょ。

「まあ、な。でも自分もそうするかもって許してくれたよ。」

「その間にキズナとイヒヒって言われたから気を付けろよ。」

あの2人が暴走したら誰が止めるのだろうか。

「それを頼みに昨日姫ちゃん達に話したよ。」

「留学なんて椿ちゃんらしいって、あの子本当に自分の事みたいに喜んでくれるよな。」

柏木梢ならきっとたくさんの知り合いを作るだろう。

寂しくなるけど半年なんてアッという間かもね。

「ホントごめん。」

気にしないでください。僕もギリギリまで言い出せないでしょうから。

「言い出せなくて黙って行っちゃいそうだよなぁ。」

それから2時間くらい、ずっと出会いから今までを振り返っていた。

薄暗くなって、駅からは距離があるのだけど2人で歩いて帰る事にした。

手を出すと

「何だよ、律儀にそれ守っているのか?」

楽しそうに繋いだ手を大きく振った。

「お土産何がいい?」

「毎日報告メールしろよ。」

「エアメール試すのも面白そうだな。」

「とか言ってもネットで顔見られるからなぁ。」

何だかとても燥いでいたのに突然会話を止めた。

俯いて、何かを決意しているようだった。

不安があるのだろうか。新しい世界見ず知らずの土地。たった1人。

柏木さんなら大丈夫ですよ。すぐに馴染んで友人なんてあっと言う間に

「ああうん。それはあまり心配していないんだ。」

柏木梢は足を止める。

他に何か悩みがあるなら。僕で役に立つなら

「キズナ。」

はい。

「私、今日はお前に抱かれるつもりだったんだ。」

はい?

「何度もメールしたり電話したり、どれだけ神経すり減らしたことかっ」

「こんな時に限って連絡取れないとか乙女心弄ぶとかいい加減にしろっ。」

うわぁごめんなさい。それはごめんなさい。

「ちょっと引っ叩いてやるから歯をくいしばれ。」

う、うんっ。

目を閉じて、舌を噛まないように。

そんなに強く叩くような人ではないが念の為。

チュ

唇に柔らかい感覚。

「皆には黙ってろよ。」

目を開けると同時に強く抱きしめられた。

ギュウっと締め付ける。結構苦しい。

「んーっ」

ようやく離すと、そのまま距離を取って

「今の数に入れなくていいからな。」

そう言って走り去ろうとしたので慌てて

出発の日、見送りに行くよっ

「おうっ」

振り返って返事をして、そのまま走り去った。

出発日聞いてなかったかも。


当日、僕達皆で朝早くから駅に行って彼女を見送った。

「生水飲むなよ。」

「ニュースに出るような真似だけはしないで。」

「学校壊すなよ。」

言いたい放題だ。

「自分の事よりキズナの事が心配だよ。行くの止めようかな。」

すると全員揃って

(ワタシアタシ)に任せて(ろ)」

7ヶ月なんてすぐだよ。

予言なんてしたつもり無いのだが

2学期からの半年はのんびりする暇も無い。

実際翌年の3月の帰国に、宮田杏は

「もう帰ってきやがった」

と零したほどだ。


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