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だからって新学期の初日からこの仕打はどうかと思う。
三原先生は知っていて何も言わなかった。
教室に入って、久しぶりのエリクと挨拶し
旅の成果を聞こうとしたのだが、彼は逃げた。
しかもニヤニヤしながらだ。
体育館での始業式が終わり、教室に戻り宿題の提出。
その最中、隣のクラスから歓声とどよめきと叫び声まで聞こえた。
柏木梢の留学を知ったとか?
HRはすぐに終わり、明日から通称授業になるから夏休みボケのないようにと担任が促す。
解散の声が聞こえると同時に宮田杏が乗り込んで来た。
「あっアイツがっ。キズナのっアレのっ」
ちょっと何言っているのか判らない。
栄椿もそのすぐ後ろにいるのだが、彼女は後ろを振り向きつつ歩く。
どうしたの?
宮田杏は息を飲み込んでバッと顔を上げて
相変わらずニヤニヤしているエリクを指さして
「アイツの妹がっ」
え?
「ここにいるのね。」
廊下から声。
「そうだけど。」
栄椿が道を譲る。
「キズナ。」
サーラ。
無意識に立ち上がって彼女に歩み寄って、握手をしようと手を出したのだが
彼女は軽やかに舞うように僕に抱きついた。
ぎゅうっと締められて
窒息しそうだったのかそれとも嬉しくてなのか、クラクラと目眩に襲われた。
「会いたかった。」
一瞬の静寂。そして
「ぎゃーーーっ」
「離れろーっ。」
9月から3月までの正式な留学生。
本来この学校では2年生のこの時期に留学生を迎えているらしい。
両親の反対もない。兄を追いかけたワガママでもない。
母国で通う学校の制度を利用し、少しだけ根回しした結果だと笑った。
「それはアタシんだぞっ」
「何よワタシのよ。」
「ボクのだっ何度も言わせるな。」
「あーもう判ったわよ。少しは再会の余韻に浸らせなさい。」
ようやく離れてくれた。
「アナタ達もしかしてキズナに惚れているの?」
「悪いかっ」
「キズナはこの中で誰が好きなのよ。」
はい?
「ダメよ。このヘタレに答えられるわけないじゃない。」
南室綴は僕をヘタレ呼ばわりする。
「キズナが誰を選んでも綴が略奪すると思う。」
「略奪て何よ。絢ちゃん強奪しそうじゃない。」
「アタシはキズナと2人でジジババになって陽の当たる縁側で猫撫でてる夢見るけどな。」
「なんで死にかけてるのよ。」
この人達は何の話しをしておるのや?
「こんな煮え切らない奴に幻滅しただろ。」
「は?アナタ自分がキズナより背が高くてスタイルいいから自分を選ぶと思っているのね?」
「あ?お前こそとびきりカワイイからって誘惑してんな。」
小室絢とサーラ・プナイリンナは喧嘩をしているのか?
「イイわ。勝負しましょう。」
南室綴が何か言い出したぞ。
「望むところよ。」
望んじゃったよ。何をだよ。
「ルールはシンプルにね。アプローチは自由。でもこちらからは欠して手を出さない。」
「誘惑はいいけど強制はなしって事。」
「挨拶のキスとかハグくらいはするわよ。」
「くそう文化の違いめっ。」
「ちょっと椿ちゃん笑わせないで。いいけど唇はナシよ。」
「え?もしかしてキスすらした事ないの?1年以上一緒にいて何やってたのよ。」
皆して目を逸した。
サーラは鼻で笑う
「ハッ。もう勝負あったようなものね。」
「そんな事言って相手は身内以外なんでしょうね。」
サーラまで目を逸らした。
「仕方ないでしょっ。恋人なんか作る暇無かったんだから。」
何時の間にか輪に加わっていたグンデ・ルードスロットが
「エー、私も今フリーですよレディス。いつでもウェルカム。」
「盛るなワン公。」
「何故?いつもいつもボスばかりズルいーよ。」
不思議だろうとは思う。
彼はクラスの女子の殆どと「親密」な関係なのかもと思わせるほど女子の扱いが巧い。
女子達は「ほぼ」全員彼に惚れているかも知れない。
「ほぼ」以外の2人は決して彼に靡かない。
僕のクラスにも「ほぼ」全員、エリクに恋心を抱いているだろう。
「ほぼ」以外の3人は決して彼に靡かない。
その5人に言い寄られている僕を不思議に思わない筈がない。
「ワンダーよっ。学校のエイスワンダーね。」




