069
やっとの事で砂浜で辿り着くと子供達は列を作って走っている。
「アレだな。」
「じゃあ近くに姫ちゃん達いるかな。」
探していると後ろから
「パラソル用意してあるわよ。」
南室綴がクーラーボックスを運んでいたので受け取った。
「あそこ。姫が番しているから行きましょう。」
「待てっ綴んはどうして水着じゃないんだね?」
Tシャツに短パン姿の南室綴に因縁をつける栄椿。
「え。まあ一応この下に着てるけど。」
「じゃあ脱げ。今脱げ。はぁはぁすぐ脱げ。」
「怖いって。」
「何だったらボクが手伝ってやってもよかですよ。」
「落ち着け雪女っ。」
橘結の待つパラソルに向かうと、どうやら橘結も水着姿ではない。
「キズナ。私が後ろから抑えるから脱がしちゃえ。」
この人いつか捕まる。
合流するが皆海に向かわない。
どうしたのだろう。
ああそうか小室絢を待っているのか。
彼女は子供達の後ろから声を出して追走。
自由時間は午後からだと言っていた。
それならそれまで砂のお城作りませんか?
お昼は海の家で子供達と一緒にカレーを食べた。
夕方に「型」の練習をするようだがそれまでは自由時間。
子供達もこの時間を楽しみに来ている。
小室家の両親と宮田家の父親が子供達の面倒を見るからと
昼食の片付けを終えた女子高生達も自由時間となる。
「やべぇっ何だこの酒池肉林っ。」
栄椿は盛り上がっている。
「選り取り見取りじゃねぇかっ。どうする?順番どうする?全員一度にするか?」
何をどうするつもりなんだ?
「椿ちゃんてどっちなの?」
「どっちって?」
「男子でも女子でもいいみたいだから。」
「カワイイに性別は関係ない。がボクの信条。」
「それで絢もいいのか。」
「それでって何だ。」
うわっ
僕の手を引っ張ったのは敷島楓。反対の腕を取る宮田桃。
2人に引かれ海へ。
どうやら僕がこの2人の面倒を見る役になった。
まあこれなら泳げないのバレなくて済むか。
その頃女子高生達はどうやら漏れなくナンパされていた。
それでどうして態々報告するかね。
「絢ちゃんなんか「相手になるからかかってこい」とか言うのよ。」
「だってしつこいんだもん。」
目に浮かぶ。
「ダイバーズウォッチみたいなデカイ時計してるくせに時間聞いてきた奴いたよね。」
「あれってそれを突っ込んで欲しくて聞いてるのに。」
「椿がニコニコしながら空に指さして「太陽に聞けよボンクラ」とか言って。意味わかんねー。」
「それでもめげずに食事に誘ってきたね。」
「杏ちゃんなんてそいつ見て「黒すぎるな。アンタら肝臓悪いんか?」とか本気で聞くからもう。」
「そしたら綴が「何処の国からいらしたの?お困りですか?May I help you?」とか言うし。」
皆楽しそうだ。泣くほど笑っている。
「ちゃんと恋人いるからってお断りしたからね。」
「だから心配するなよ。」
子供達が夕方の修練をしている最中に高校生達は夕食のバーベキューの準備。
「何人か知っているのいるから。」
と宮田杏。
高校生が地元の小学生の夏休みの宿題等を手伝う恒例行事。
いや多分その子達がいなくてもすぐに馴染んだだろう。
初対面の子にも「昔からの馴染み」のように扱う。
子供の扱いに慣れているのか、実に手際がいい。
少し気後れして遠慮しているような子に対しても
「焼けた瞬間に取れ。焼き肉は戦いだぞ。」
と言いながらその子のお皿に乗せてやる。
それは宮田杏に限らず、他の皆も固まる事なく子供達の間に入り気配りしている。
挙げ句、皆は何かと
「キズナ食べてるか。」
なんて声をかける。すると隣の敷島楓が
「キズナの事は任せて。」
と僕のお皿を取り上げ肉を乗せる。
ただただ感心していると
「ワタシ椎茸苦手だけどキズナの耳たど思って食べるわ。」
いつの間にか隣に現れた南室綴が椎茸を箸にとりボソリと言った。
無理しないでください。あと耳が何ですって?
「だからこの前噛んだアナタの耳だと思って」
「この前とか噛んだとか何の話だっ。」
宮田杏は遠くから突っ込む。
「夜のキズナはワタシのモノって言ってるのよ。」
子供達の前で何を
「じゃあ子供達のいない夜のキズナはワタシのモノ。」
「ほら絢。自分の彼氏寝取られるわよ。」
「ぶふっ。母ちゃんまで何言ってるんだよっ。」
「えーっ絢先生あの人と付き合ってるのー。」
子供達から注目を浴びてしまう。
「あの人絢先生より弱いよー。」
「絢先生結婚するのー?」
「キズナはあの人の恋人なの?」
と不機嫌に確認をとるのは敷島楓。
えーっと、そうなんだけど違うかな。違うけどそうなんだ。
あの人のお父さんとお母さんがいる時は恋人で
そうじゃない時はトモダチなんだ。ちょっと難しいかな。
と小声で説明すると
「うん。判る。フリって事ね。」
判っちゃったよ。




