表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/26

#15 五感の檻

「さて――次は何が消えるかな?」


椎尾がゆっくりと歩み寄りながら、低く楽しげに呟く。


足音だけが、コツ、コツ、と無機質に響く。


「や、やめろ……来んな!!」


煌真は恐怖に駆られ、訳も分からず拳を振り回す。視界はまだあるが、距離感も温度も感触も無い。周囲の炎が熱いのか冷たいのかすら分からない。


「ビビって拳ブンブンか。動きが素人以下だな」


椎尾はその場から一歩も動かず、近づく振りだけで圧を与える。煌真の拳が空を切るたび、彼の息は荒くなっていく。



◼︎観戦ルーム


「……こうなったらもうダメかな」


陽がぽつりと呟いた。諦めというより、冷静な現状判断だった。


夕音が息を呑む。千紗は唇を噛んでいた。


だが、葵生だけは何も言わず、細めた目でモニターを凝視している。


「……」


その表情からは、落胆でも焦燥でもないものが読み取れた。



◼︎シミュレーター内


「怖いなら這いつくばって泣けよ。無理に立つ必要もねぇ」


椎尾の声は淡々としているのに、言葉だけが鋭く突き刺さる。


煌真は呼吸を荒げながら叫ぶ。


「うるせぇ……!ビビってなんか、ねぇ!!」


「ほう?」


椎尾の足が、炎を踏み越えてさらに近づく。


(触覚も嗅覚もない。次は視覚か聴覚、どっちが消えるか――)


(その前に倒す。そうじゃなきゃ、終わりだ)


拳を握り直すが――自分の指がどれくらい力を込めているのかも分からない。


「――!!」


恐怖を押し殺して飛びかかる。だが、その軌道は甘く、読みやすく、勢いもなかった。


椎尾の腕がふっと動いたかと思えば――


ドンッ


音だけが響く。何をされたのか、どこを打たれたのか、感覚すら分からないまま跪く。


椎尾は無表情のまま呟く。


「――次で終わりにしてやるよ、“班長”さん」


炎の熱も痛みも感じない世界の中――煌真の背筋だけが、ゾクリと凍てついた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ