#11 シュミレーター
東区の奥深く、かつての工場跡地を改修した巨大な建物が姿を現した。
――ユスティティア・ルカヌス訓練センター。
煌真は思わず目を見開いた。外観は無骨だが、内部に入るとそこは未来的な光景が広がっていた。高い天井、並ぶ巨大モニター、そして中央に鎮座する半球状の装置。
「ここが……」
煌真が息を呑む。
葵生が一歩前に出て、淡々と説明を始める。
「これは『シミュレーター』。ポータルのように仮想空間を展開し、実際の戦場を再現する装置で、地形や時間帯、障害物まで設定可能。実戦に近い模擬戦を、安全に行える……まあ、“安全”と言っても倒れるまでは本気ですが」
葵生は二人を見渡し、冷静に口を開いた。
「ルールを確認します...1対1。武器の持ち込み、能力の使用は自由。倒れるまで続行。制限時間はなし――以上です」
椎尾はニヤリと笑い、軽く肩を回す。
「シンプルでいい。要するに、どっちが立ってるか……それだけだ」
一方の煌真は緊張で拳を固めながらも、瞳に決意を宿す。
「……分かりました」
葵生が装置を操作すると、半球状のシミュレーターが光を帯び始める。内部には霧が渦巻き、やがてまばゆい空間の裂け目が現れた。
「位置について」
陽の声が響く。
二人はゆっくりと歩み寄り、裂け目の両端に立つ。
椎尾は挑発的な視線を送り、煌真はその圧に負けまいと真っすぐ睨み返した。
「――開始」
陽が短く告げた瞬間、二人の姿は光に飲まれ、仮想空間の中へと吸い込まれていった。




