#12 静かな戦場
シミュレーターの光が収束し――次の瞬間、煌真の足元には硬質な金属床が広がっていた。
薄暗い照明。規則正しく並ぶコンテナ。頭上には鉄骨むき出しの天井と通風ファン。基地施設のような無機質な空間――だが、夜の静けさだけが妙に現実的だった。
(……基地、か)
煌真は即座に駆け出した。足音を極力殺しながらも、その動きは迷いがない。
(探して、見つけて、さっさとぶっ飛ばす――それだけ)
観戦ルームでそれを見ていた陽が眉をひそめる。
「……ありえない。相手の能力も実力も知らない状態で、何であんな真っすぐ動けるの?」
千紗が苦笑する。
「男子ってああいうもんじゃないの?」
「いや、あれはもうバカの域……」
葵生は腕を組んだまま、じっとモニターを見据えている。
「……短期決戦を狙ってる。でも――」
夕音が頷いた。
「それが通用する相手なら、とっくに勝ってる……ってやつね」
⸻
煌真は金属通路を抜け、コンテナ群を迂回し――その影。背を向けて歩く男の姿。
(居たっ...!)
息を整える間もなく、一気に背後へ跳び込んだ。拳を固め、そのまま肩口に叩き込もうと――
ドンッ!
「っ……!?」
拳が当たるより早く、逆に肩を殴られていた。
反射的に後退しながらも、煌真は腕を軽く振る。
(痛ぇけど……そこまでじゃねぇな。安心した――)
――その思考の途中。
「……で?」
椎尾がこちらを振り返る。
薄闇の中、瞳だけがギラリと光った。
その口元が、ゆっくりと――愉快そうに歪んでいく。
「それだけか、班長さんよ」
寒気が、背骨をなぞった。




