094.ティラミスアモーレ!-②
夜の部の投稿でーすノシ
ただ、残った大量の生地も素早く伸ばしてピッツァを焼いたりしてまかないは作って来たよ?
それからフィーさんに亜空間収納にティラミスを入れてもらってから中層を後にしました。
「たーぶん、セヴィルのあの感じからしてエディもイライラがすごいと思うよー?」
中層を後にしてからしばらくして、フィーさんがそんなことを言い出した。
「お忙しいからですかね?」
「それだけじゃなくって、僕がカティアが連れてかれたこととか伝えたからさ? ここしばらくピッツァ食べれてないんでムカついてるだろうねー」
「……………」
最初の時以外にエディオスさんの怒った顔とか見てないけど、絶対怖いだろう。ティラミスで落ち着いてくれたらいいけど。
「ところで、なんで今回は連絡しないんですか?」
「驚かせてあげたいじゃない?」
「はぁ……」
フィーさんはどこまでも気まぐれマイペースさんですね。
「さーて、着いたね!」
とかなんとかしてたらもう着いちゃった。
相変わらず豪奢な扉だけど、来るのは久しぶりだな。最近は差し入れもままならないくらい手が空かないようだから。
今日も運良く朝ごはんしか会えてないし、疲れてたような気がした。
「よーし、ちょっと離れててー?」
「え?」
「ふゅ?」
なんでと思ってたらいいからと言われてしまう。
なので、クラウと一緒に廊下の壁にて待機。
フィーさんはと言うと、顔は見えないけどなんか楽しそうな雰囲気が背中から伝わってくる。何するつもりなんだろ?
「ふ、ふ、ふ……せーの!」
ドッカーーーーーン‼︎
少し助走をつけたフィーさんが、あの扉に向かって飛び蹴りしたら難なく開いちゃった⁉︎
「ふゅゆゆぅ!」
「えぇえええ⁉︎」
なんでそんな古典的な開け方するんですか⁉︎
「て、敵しゅ………ふ、フィルザス神様??」
あ、一番近くにいたの初日にエディオスさんに殴られた人だ。名前……急なことで思い出せません。あんまりしゃべったことないから。
「やっほー! エディにいいもの持って来たよー?」
「んなことで特注の扉を蹴破んな⁉︎ 加減してっからって、下手するとぶっ壊れんだろ‼︎」
エディオスさんの不機嫌度MAXだ……。
僕が執務室に入ってないのに肌にビリビリ伝わってくるよ。クラウもちょっぴり怖がってる。
そろっとフィーさんに近づいて背中から覗き込めば、ささっとすぐにまた隠れるように戻った。
(超絶怖いーーーーーーっ‼︎)
阿修羅?閻魔様?
なんか例えるのが難しいんだけど、セヴィルさんの不機嫌さとは次元が違うと言うか。
セヴィルさんがブリザードなら、エディオスさんはマグマとかだね! よくフィーさんはにこにこのままで応対出来るよ……これ、ティラミスだけで解決出来るのかな?
「お前はカティアに付き添って中層にいたのでは?」
セヴィルさんの声だ。こちらも不機嫌ではあるけど、半分は呆れてるっぽい?
「そのカティアもいるよ? ね?」
「うぇ!」
「まあ、カティアさんもですの?」
アナさんもいるみたい?
ゆっくりフィーさんの後ろから顔を出せば、きょとんとされたお顔の皆さんがいらっしゃった。
エディオスさんもぽかんとしてたから、ちょっとほっ。
「……ちぃっと前にゼルが行ってからすぐじゃねぇか?」
「……四半刻は経ってるが」
「あれ、そっか?」
時間の感覚も忘れちゃうほどなんだね。お仕事だから無理ないかも。
「よくわかりませんが、何がありましたの?」
「イシャールがサイノスにピッツァのことを聞き出し、無理にカティアを部屋から連れて中層で作らせてたそうだ」
「まあ、イシャールお兄様がですの?」
「ほえ?」
アナさんの言葉に僕は首を捻っちゃったよ。
「イシャール、お兄様?」
明らかにイシャールさんがアナさんより年上なのはわかるけど、どうしてお兄様呼び??
「ああ、疑問に思うのは無理ないね。ああ見えて、イシャールもエディ達の縁戚で幼馴染みなんだよ?」
「えぇええ⁉︎」
「ふゅ?」
フィーさんの畳がけに僕は堪らず声を上げちゃった!
それと同時にわだかまってた謎の半分は解けたね。だからセヴィルさんやサイノスさんとかと気兼ねない付き合いなのと、エディオスさんも愛称呼びだったんだ。
「なんだ? イシャールの奴話してなかったのか?」
「全然でした!」
「ところで、わざわざこちらまで出向くとはどうした。何かあったのか?」
「それにいいものとはなんですの?」
「え、えーと……差し入れとお願いが」
「俺にか⁉︎」
エディオスさん、食いつきが半端ないです。
ひとまず側仕えのみなさんには別室でお仕事していただくことになって、フィーさんがコフィーを人数分と卓とかも用意してティータイムすることに。
「カティアが作ってくれた、カッツクリームの新作だよ!」
と言って指パッチンで卓の上に例のティラミスの大皿を出してくれました。
「おお⁉︎」
「上は……コパトか?」
「ガラスの器に美しい層ですわ! 間のココルルのようなケーキはなんでしょう?」
「それはコフィーを甘くさせてから卵ケーキを浸したものです。お菓子の名前はティラミスって言うんですよ」
「また蒼の世界特有の菓子ってわけか?」
本当はエディオスさんだけの予定だったけど、アナさんとセヴィルさんにも取り分けます。僕らはさっきたっぷり食べたしね。クラウはまだ食べたがっててもフィーさんにホールドしてもらってます。
「クリームだけでなく、ケーキと一緒に食べてみてください」
「おー」
「いただきますわ」
「……クリームがほとんどだが」
「まあ、ひと口ひと口」
どうぞどうぞと促せば、皆さん量の差はあれどひと口頬張ってくれました。
「ん⁉︎」
「一瞬甘いが……苦い?」
「とてもさっぱりした感じですわ! コフィーに浸かったケーキがクリームの甘さを抑えてくれるようです!」
それからセヴィルさん以外がっついちゃいました。
セヴィルさんも、ゆっくりふた口み口とスプーンが動いていくよ。
「適度な甘さに苦味が加わっていいな! 見た目ボリューム多いのに重く感じねぇ!」
機嫌が治った?ようでとりあえずよかったかな?
だけど、この後がなぁ……。
「……フィーさん、言ってもいいですかね?」
「言うだけ言うしかないよとりあえずは」
「何がだ?」
「カティアの言ってた『お願い』だよ。直接カティアが関わってるんじゃないけど」
「は?」
振り返ったエディオスさん、鼻の頭にクリームついてますがイケメンさんは何しても茶目っ気あるで片付けれるねぇ。アナさんがさり気なくハンカチでとってあげてましたが。
「カティアからの願いとは珍しいが……俺が思うにイシャール達からの頼み事ではないのか?」
「あははは……ほとんど正解です」
相変わらず鋭いセヴィルさん。
「イシャールから? なんだよ」
こちらせっかく機嫌治ったのにぷんすこな感じに。
けど、手はティラミス食べるのに動いてるから本気で怒ってはなさそう?
「えーと……このティラミスだけを中層や下層で提供させてもらえないかと。どうも、国外からいらっしゃってる方々の舌が疲れちゃってるそうなんです」
とりあえず伝言を伝えるだけ言ってみると、途端空気がぴーんと張り詰めていくのがなんとなしにわかった。
「……皆さん?」
僕変な事言っちゃった?
「……上はともかく、臣下らに目配りさせてなかったのは落ち度だったな」
「文化や味覚の差異はあれど、あれから50年ですもの。入れ替わりなども多数ありますわ」
「特に、ヴァスシード近郊はユティリウス達のお陰で食文化が色々変わっているからな。まだ数日とは言え郷愁を感じてしまうのも無理もない」
なんか真剣なお話に??
「あ、あの……?」
「ああ、話が逸れて悪いな? この菓子を中層とかで提供することだろ?」
「え、ええ」
さすがにエディオスさんティラミスのお皿置いて僕を見てくれました。
「ぶっちゃけ聞くが、作り方は前に出してくれたピッツァのデザートと比べりゃどうなんだ?」
「簡単ですよー? 卵ケーキを一から作ってもいいですが、今回は捨てがちになる端切れを使いました。大皿でもいいですが、コップくらいのグラスに盛り付けて一人分で提供することも可能です」
今回はエディオスさんの差し入れ込みでこのサイズにしたんだけどね?
それも伝えれば、久々にわしゃわしゃと髪を撫でてくれました。
「そんなら取り合いにはなんが、一人分ずつ提供出来る場合も考慮してりゃあ厨房の連中も応対しやすいだろ。いいぜ、許可する」
「ありがとうございます!」
「なーんでお前が喜ぶんだ?」
「え、いやだってイシャールさんもですがミュラドさん達からも真剣に聞かれたんで」
あの様子からじゃ、結構切羽詰まっていたもの。
「わりかしあっさり許可出したね、エディ?」
「俺一個人の我欲で独り占めするわけにもいかねぇだろ?」
「本音はカティアに頼めばいつでも食べれるからとかじゃ?」
「う」
「あは、あははは……」
ちょっとさっきの感動を返して欲しかったよ。
「ふゅゆゆゆゆ!」
「クラウはさっきいっぱい食べたじゃない?」
「クラウにもやらん!」
「意地汚いぞエディオス」
「お兄様、もう少しいただきたいですわ!」
取り合い合戦にクラウもだけどフィーさんも加わってしまい、許可認証などの手続きや連絡はセヴィルさんが代わりにしてくださいました。