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034.着せ替え再び

本日1話目ですノ

 






 ◆◇◆









「お待ちしておりました、アナリュシア様」


 アナさんのお部屋に連れて行かれると、初老のおば様と若いお姉さんが二人待っていた。

 ただ僕の目線はお二人よりもその横にある布の山や衣類ラックに釘つけ。何ですかあの量、もしやあれ全部僕に合わせるんですか?


「あら、準備は整ってるようね。二人共、この方がカティアさんよ?」

「まあ!」

「アナ様が仰られた通り、大変愛らしいお方ですね。これは是非とも色々お仕立てせねばなりませんと!」


 この方々もアナさんと同類?

 二人だけでも困ったのに、+二人もなんてもっと大変じゃないか!

 ともあれ、逃げ道はほとんどなきに等しいので僕はまたアナさんに引きずられて二人の方へ向かわされた。


「カティアさん、こちらがサシャでわたくしの乳母。隣にいるのはその娘でわたくしとは乳姉妹のコロネですの」

「か、カティアです。よろしくお願いします」

「「はい。よろしくお願い致します。カティア様」」

「様付けはよしてください!」


 その後なんとか説得して、せめてと言うことでさん付けに収まってくれました。

 それとここだけの話。紹介してくださったお姉さんの名前が某菓子パンをすぐに連想しちゃうものに驚いた。


「まずは採寸致しましょう」


 どこから取り出したのか、サシャさんが手にしてたの紐状のは巻尺。

 それでテキパキ僕を採寸していき、コロネさんは横でこれまたいつの間にか手にしてた羽根ペンとバインダーのようなものに僕のスリーサイズなんかを書き込んでいく。

 同性だから気恥ずかしさはないよ? ただ、この小学生サイズのが再びわかるとなると一種の残念感が……わかる人にしかわからないよね。

 さくさくと採寸され数字が読み上げられていく、ああ……やっぱり恥ずかしい!

 特にウェストや胸部が地味にキタよ。子供体型だからやっぱりそのまま。つまりは寸胴です。


「終わりましたわ。さ、次はこの中から好きな服をお選びくださいまし」


 とサシャさんが指したのは衣類ラックにかかってるドレスや動きやすそうな服の数々。

 キラキラしたものから大人しめな色合いまでこれまたたくさんあったけど、この元の持ち主ってもしや。


「……これってもしかしてアナさんの昔の服とかですか?」

「あら、よくわかりましたわね。お姉様のお古は嫁ぎ先にお持ちになられましたから、今はこれだけしかありませんが」

「充分過ぎます‼︎」


 これ以上準備しなくて結構です。

 けど、お姉さんいたんだ?

 って、たしか第2王女って言ってたの忘れていたよ。お嫁に行かれたから今はお城にいないんだね。

 しかし、どれ選んでいいと言われても躊躇うのが普通だ。だって、どれも王女様のお古とは言え超高級品。着るのもだけど、汚すか破れるのを心配してしまう。

 とは言え、これは僕の服選びなのだから選ぶしかない。とりあえず、ドレスは選ばずに乗馬服っぽいのとかズボンとセットになっているのを物色してみる。ドレスだけじゃないのが意外だなと思ったけど、僕的にスカートは敬遠しがちだから有り難かった。


「じゃあ、とりあえずこれを……」


 手に取ったのは紺色のベストがついている乗馬服っぽい上下セット。普段着には無難かなと思いましたので。

 ただ、サイズがどうしても余るとこが多いので、そこはコロネさんが図ったサイズを合わせながら魔法で調節してくださった。

 それを布の山の向こう側で試着して戻ると、何故か皆さんほうっと顔を綻ばせてしまった。


「まあ! 愛らしいお顔に凛々しさが垣間見えますわ‼︎」

「アナリュシア様のお小さい頃を思い出しますね」


 よくはわからないけど、似合ってはいるようだ。

 サイズとしても問題がないのでこれは決定。

 それからしばらく着替えをしたり、布をあててあれこれ作ろうとサシャさんとコロネさんが張り切っちゃってかなりのオーダーメイドが決まることになった。その間に僕のHPはめためたに下がってしまった。

 だって、嫌だって言ったのに似合うからって途中から無理矢理ドレスの試着させられたんだよ?

 あれは昨日も思ったけど着るのが無茶んこ大変だった。しかも、着せられた理由にも無茶んこ驚いた。


「セヴィル様の御婚約者となられたからには、ズボンだけではなりませんわ‼︎」


 なんでその話知ってるんですかサシャさん⁉︎

 話したとなるとアナさんだろうけど、彼女はと言うと何故かくすくす笑っていた。


「この二人は信用のおける者達ですわ。お兄様達だけではお話しにくい事もあるでしょうし、女側の味方は必要になりますもの。さすがにわたくし一人だけでは心許ないですわ」

「はぁ……」


 言われれば納得出来なくもない。

 なんだかんだ皆さんとは良好な関係でいても、役職があるからいつも頼るわけにはいかない。突然とは言えセヴィルさんの婚約者になった僕には他に頼る存在がいなかったのだ。少ないけど、味方がいた方がいいのは確かだ。

 それに、この二人は僕がこの見た目でも反対意識ないようだし、信頼はしていいかも。


「訳あってお姿がそのようになられていることは伺っておりますわ。けれど、ご心配なさらずに。御名手は何が何でも切れぬ絶対の絆。何者であろうともお二人を引き離すことは出来ません」

「サシャさん……」


 言葉の1つ1つから、僕とセヴィルさんの『御名手』の関係を否定してない気配が窺える。

 僕とさっき出会ったばかりだけど、本当にこのお城の人達は気さくで優し過ぎるよ。甘え下手な僕が甘えてしまっていいのか、少しだけ罪悪感っぽいのが浮かんでくる。

 いきなり押しかけてきて、何の疑いもなく僕に衣食住を提供してくれる。連れてきたのはエディオスさんとフィーさんだけど、彼らも昨日出会ったばかりの人達だ。異世界トリップをして身体が退化してしまった僕に、価値なんて料理の腕前以外ほとんどないのに、皆さんが僕を受け入れてくれていた。

 いいんだろうかと思うけども、アナさんやサシャさん達は僕に優しく微笑みを向けてくれた。


「ご心配することはありませんわ。エディお兄様がお二人のことを認めておりますもの。それに貴女はこの城への客人ですわ。誰も追い出したりするなど絶対致しません」

「……あ、ありがとうございますっ」


 アナさんの強い言葉に、僕は少し噛みながらもお礼を言った。


(僕、ここ(・・)に居ていいんだ……)


 勤め先しか居場所がないと勘違いしてた僕に、新しい居場所が出来た瞬間だった。


「さあ、泣かないでくださいまし。次はお化粧ですわよ!」


 感動していたのも束の間、アナさんがまたとんでもないことを言い出した。


「お、けしょう?」

「そうですわ! これほどお化粧栄えしそうなお肌ですもの。お試しさせてくださいな」

「白粉はこちらに」

「頬紅などもご用意しましたわ」


 サシャさん親子まで超乗り気だ。

 最早、僕に逃れるすべはない。

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