これもう伝説だろ……(笑)。300000文字『武闘大会完全版』
武闘大会。
それは、戦うキャラクターを描く者達の永遠の憧れ。
ヒーローやヒロインの強さを作品世界観に知らしめし、宿命のライバルが誰なのか、やがてともに戦う事となる仲間が誰なのかを鮮やかに描き出す、至高の舞台。
だが、ファンタジーやアクション作家に於ける武闘大会は魔物である。
己の妄想と、現実の文章力との乖離。
漫画やアニメ、ゲームには敵わない躍動表現の限界。
武闘大会に力を注いだある作家は自爆し、またある作家は自爆し、そしてまたある作家も自爆する(笑)。
やがてラノベに於ける武闘大会は、主人公の圧倒的な力、そしてヒロインや仲間がそれなりに戦える事を示すだけの、経験値アップ&お小遣い稼ぎイベントに成り下がってしまったのだ。
……えらく偏っており、尚且つ無意味な程にアツ過ぎる見解ですが、私は古い世代の男です。
『キン肉マン』の夢の超人タッグトーナメントや、『幽☆遊☆白書』の暗黒武術会などを楽しんでいた世代には、武闘大会には主人公達よりカッコいい悪役、脇役がいて当たり前という認識なのです。
例え評価されなくても、例え読者が……くっ……0人でも、アツい武闘大会が描きたい。
主人公達よりカッコいい悪役や脇役が登場し、彼等が時にライバルに、時に仲間になる未来をバトルだけではなく、ドラマや内面で予感させるレベルにまで描きたい。
そして、主人公達の戦い以外をダイジェストや結果発表だけで流す事なく、参加者全員の情熱や生い立ち、過去までを全て見せつける、マジもんの『武闘大会完全版』を描きたい……。
『バンドー』連載前から明確に抱いていたこの野望は、武闘大会の参加者が、その後の物語に必要不可欠な役割を担う様にストーリーを構成する事で実現しました。
従って、この『武闘大会完全版』を読まないと、その後の『バンドー』は楽しめなくなるのです。つくづく読者に優しくないですね(笑)。
ただでさえ1話の文字数が多く、200000文字執筆時点でポイント8、感想ゼロ。
しかし、裏を返せばその危機感の中から創作の喜びを取り戻そうと決意出来たので、武闘大会を当初の予定より1話繰り上げて執筆しました。
この選択が、『バンドー』に光を与えます。
武闘大会開始と前後する様に、私の初エッセイである『ハードロック・ヘヴィメタルを語る!』の連載がスタート。
1話あたり2000文字くらいの分量に学習して読みやすくなり(笑)、ハードロック・ヘヴィメタル好きなユーザー様からの感想、そしてお気に入り登録で初めて人脈が出来ました。
ここがポイントなのですが、ハードロック・ヘヴィメタルを愛する方は基本的に魂がアツく、バトルシーンが大好き。
ラノベの武闘大会は失敗すると言われながら、『バンドー』は武闘大会のお陰で、8ポイント作品から100ポイント作品に成長したのです。
『バンドー』に於ける武闘大会には、キャラクターとその特徴を活かす工夫が施されていました。
基本的には、5人ひと組の団体戦チームが8チームあり、勝ち抜き戦で先に5勝した方が勝ち上がりというルール。
しかしながら、勝った選手が次々に戦っていくやり方以外にも、勝者を休ませて別の選手を出し、出したい所で勝者を再登板させる事も可能です。
更に加えて、例え1勝3敗で敗色濃厚でも、有利なチームの勝者が治療中だったりしてフィールドに戻れず、フィールドにひとりしか待機していなければ、その相手を倒した2勝3敗チームが勝者になる事もアリ。
このルールの存在で、チームにいる女性や新人を無理なく戦いに参加させる事が可能。
そして剣士ルール、格闘ルール、魔道士ルール、そして何でもアリの「総合ルール」を選手に決めさせる事で、対等な条件と強者のプライドを両立させる事も出来るのです!
参加8チームはスタイルも出身地もバラエティに富んでおり、40名プラス欠員補充2名全員の過去のドラマや背景、人間の意地を描いています。
多彩な選手が対戦するので、決着の仕方も全試合異なり、全てのバトルアイディアを注ぎ込みました。
全35試合中、一瞬で勝負が決まる試合は僅か1試合。
全ての試合を完全ノーカットで描き切り、休憩時間での交流や情報収集、トレーニングなども描いています。
少なくともラノベの範疇では前代未聞の『武闘大会完全版』は、総量300000文字(笑)!
こんな自己満足、誰が読むんだよ?
そう笑ったあなた!
92ポイントが入るくらいの方々が読んだんです!
う〜ん、10人くらいかな?
……いや、それが確かなら恐ろしいポイント獲得率ですが(笑)、それだけニッチな作品であり、刺さる方にはちょ〜ブッ刺さり、刺さらない方は時間を無駄にした怒りで私をブッ刺しに来るという訳です。
とは言え、元来バトルシーンは好きなひとは大好き、興味ないひとは普通に読み飛ばすもの。
これが凄いから読んでくれ! とは言いません。
「武闘大会を書きたいひとが120%突き抜けちゃったらどうなるのか?」というサンプルとして、或いはバトルシーンのアイディアに悩むひとの参考として、むしろヤバい部分をパクるくらいの心構えで接して欲しいですね!
大丈夫、マイナーな作品だからパクってもバレません。
地の文までパクったらシサマ臭が強過ぎてバレますが(笑)、仮に『バンドー』盗作疑惑を感想欄で突っ込まれた時は、私が感想欄に降臨します!
「私がシサマだが、これは『バンドー』のパクリではない。ぶっちゃけ私がシサマ本人だが、安心しろ」とね!
……さて、『武闘大会完全版』を振り返る上で、忘れてはならない出来事がありました。
父親の死、2020年2月4日です。
父は私が『バンドー』の執筆を開始する以前から癌を患っており、既にこれ以上の手術は出来ない末期症状でした。
抗がん剤で癌の進行だけを抑え、余命を出来るだけ落ち着く実家で過ごす終末期ですね。
癌の進行は遅く、2020年の夏くらいまでは生きられる見通しでしたが、武闘大会の執筆が始まって間もなく容態が悪化してしまいました。
しかしながら、まだ病院の受け入れ体制が整わず、父もギリギリまで実家での生活を望んだ為、私と母は交代制で父を24時間体制で介護したのです。
復帰したばかりの職業にも無理を聞いてもらい、10日程交代介護を行う中、痛みと戦いながら寝付けない父親と一緒に、私も眠れない深夜に武闘大会を書き続けていました。
交代介護終盤には兄夫婦も仙台から駆けつけ(大学関係者だったので、1月後半から休みが取れたのです)、家族総出の介護が終了。
病院に受け入れられ、食事を全てたいらげる程の回復を見せた翌日、父は天に召されたのです。
父の長い戦いは終わりました。
まだコロナが蔓延する前だったので、完璧な葬式を出してあげられた事が不幸中の幸いでしたね。
一方、私の武闘大会執筆という戦いは、まだ続いていました。
父の死による作風の変化は特にありませんでしたが、これ以降、特に年配の男性キャラクターの描き方は固まった様な気がします。
正義の味方も悪役も、自分の人生や目標に一生懸命であるべきだと。
クールでスカしたキャラの魅力は、若い時だけに許されるものだと……。
★本日のひとこと
黒歴史とは、やれているつもりだったけど全然やれていなかった、そんな過去の集積である。
やり過ぎなくらいやれている武闘大会完全版、そんな過去は黒歴史ではない、『伝説』である。