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現代神話ヒロイズム  作者: 石上士悟朗
第一章 英雄を救うのは
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第一話 英雄との邂逅

「認めませぬ」


 声は怨嗟を孕んでいた。

 怨敵に叩きつけ、己に刻み込む、誓いの言葉だ。


「あってはなりませぬ。こんな事は、あってはなりませぬ」


 繰り返すのは後悔だった。

 断じて認めてなるものか。

 望まぬ結末が己の運命だというのならば、そんなものは元より吐棄すべきものだろう。


 この身体が朽ちようとも、四肢がバラバラになり魂だけになろうとも。

 その結末だけは決して認めてなるものかと、繰り返し刻みこむように。


「絶対に、貴方様を見つけ出してみせましょう」


 那由多の果て、幾星霜の時が経とうとも、輪廻は巡り、再び出会う。


「ゆえにしばし、おやすみくださいませ。わたくしもすぐにそちらに参ります」


 今、笑えているだろうか。

 笑顔が素敵だね、と言ってくれた貴方に、私は笑えているだろうか。


 血に濡れた貴方の掌からは熱が逃げていくけれど、貴方がくれた熱が私を動かすから。


 だから待っていて。

 貴方を見つけ出すその時を。


 魂が巡り合う、その時を。


「あぁ――様、お慕いしております」


 愛しの貴方に、誓う――。 


      ●


 微睡みの中から、渡会渋谷は目を覚ました。

 

 陽の光が窓から差し込み、顔を照らしていた。それが助けとなって、ゆるやかに覚醒を促していく。


「ふぁ………あぁ……」


 寝ぼけまなこを擦り、渋谷はあくびをひとつこぼす。

 

 渋谷は思う。

 ああ、またか。一体何度目の夢だろう。 

 

 目的地が近づくにつれ、その間隔が短くなっている。

 長旅のせいか、疲れているのだろうか。

 

「また。覚えてねぇな」


 夢を見ている、という自覚はある。だがそれがどんな夢であったかまるで思い出せなかった。

 きっと、同じ夢なのだろう。根拠の無い確信だ。

 思い出せないけれど、忘れてはならない、夢から醒めるたび渋谷は思うのだ。


「あ……」


 ふと、窓から見えた景色が渋谷の瞳に飛び込んでくる。

 どこまでも続く水平線。海だ。そしてかかる大きな橋。

 運転手が停留所の名をアナウンスする。


『鳴海大橋前~、鳴海大橋前です』

 

 うん、間違いない。自分が目指した目的地。

 鳴海町に――着いたのだ。

 

     ●


 渋谷は、山奥から出てきたばかりの田舎者である。


 渋谷が暮らした小さな集落は、人里離れた山奥だった。

 古くからのしきたりが多く残るそこで、渋谷は小学校五年から中学を卒業する今まで、五年の歳月を過ごした。

 

その集落の若者というのは、その村に高校が無いため、中学を卒業し、高校進学といった段階で大抵はなるたけ近い場所――つまりは山を二つ越えた先のとなり町――で下宿なり、一人暮らしなりして、暮らすことになる。

 

他の者達にならい、渋谷も同じ様に、となり町の高校へ行くとばかり思っていた渋谷の祖父――善治郎ぜんじろうは、彼の突然の申し出にぎっくり腰になってしまった。


 渋谷は言ったのだ。

 俺は鳴海町へ行く、と。


 渋谷にとっての鳴海町とは、故郷とも呼べる場所だ。

 山奥の集落に住むことになるまで、渋谷は鳴海町で父と母と三人で暮らしていた。


 しかしある日、渋谷はこの地を離れ、祖父と暮らす事になる。

 しかもそれは、死別という突然訪れた永遠の別れによって、だ。


 半ば呆然と、渋谷は現実を受け入れる事が出来なかった。

 幼き時から今まで、何かがあると、そう渋谷はずっと思い続けてきた。


 それまで、なんて事ない幸せな日々が続いていたのだ。それがあっという間の事で崩れ去るなどと、信じられるはずもなかった。何かがあった、と思わなければやりきれない。


 祖父は何も語ってはくれなかった。幼かった渋谷にその真意が分かろうはずもない。

 けれど、渋谷は祖父の拳が固く握られていたのを知っている。

 誰よりのその事実を認めることが出来ないでいるのは祖父であることを、知っている。

 

 時として事実は小説より奇なり、とは言う。しかしそこに理由がなければ、納得など出来る訳がない。


 いつかここへ戻ってくると、密かな誓いを胸に打ち立て、渋谷はその時を待った。

 そして彼は、遂にこの日を迎える事が出来た。


「うぉ、懐かしいなぁ」

 

 渋谷が橋を渡り切ると、程なくして見えてきたのは、鳴海町の商店街である。

 軒を連ねる露店。どこか懐かしく風情のあるそれは、渋谷がこの町を去るあの日の、切り取った記憶と同じ町並みだ。多少の差異はあれど、それは紛れも無く自分の思い出と重なるもの。


「なん、だ……?」


 だというのに、渋谷が同時に抱いたのは、違和感だった。


 今は丁度、十五時を少し過ぎたくらいの時間だった。ならば、商店街の店が全て閉まっているのはやはりおかしいのではないか……?

 思えば一人も出歩く者がいない。人の気配というモノが消えているように感じた。


 ――いや、いる。


 目線の先、約十五メートルほど離れた先に『何か』が。


 人のようなシルエットをしてはいるが、人ではないと確信出来る。

 細すぎる四肢に紫色の肌。そして大きな一つ目が魚の目のようにギョロリと見開かれている。手には石を削って作った棍棒のようなモノが握られていた。

 

 率直に抱いたイメージで言うならまるで、小さい頃、テレビで見ていた特撮に出てくるやられやくの怪人だ。

 まさかそんなはずはない。あれはあくまで現実に存在はしない空想の代物のはず。


 だというのに、その紫色の怪人から溢れ出る、邪気とも言うべき不快感。見ている現実が虚構ではないと、本能に語りかけてくるようだ。

 このままここにいるのはマズイ。そんな気がする。

 

 と、その時だった。


 一つ目の怪人が、キョロキョロと辺りを見回し出した。

 まるで、アンテナが特殊な電波を受信するように、一つ目があらゆる方向に向けらる。

 それはぐるりと一周して――止まった。


「ッ!?」


 目が合った。合ってしまった。怪人の大きな瞳が渋谷を捉える。


 ――ヤバイ……逃げなきゃだめだろ。

 

 一瞬にして渋谷の脳内に避難勧告が発令された瞬間。


「ギィイイィィエエエエエエエェェエエ――――ッ!!」


 突然、怪人の叫びが空に向け放たれた。

 耳の中を不快な音が駆け抜ける。張り裂けんばかりの大絶叫だ。

 耳を抑え、思わずその場に踞った渋谷は見た。

 叫びが天に消えた次の瞬間。空が――割れていた。


「なっ――!?」


 空の青が裂け、見えたのは漆黒よりも暗き闇だ。

 障気の様に立ち込める煙が、裂けた口から禍々しく空を汚していく。

 徐々に、空が呑み込まれ、次第に青が失われる。そして世界が闇に包まれた。


 やがて、生まれたのは月だった。

 塗り替えられた漆黒の中で、妖しく煌めく蒼い月。

 

 渋谷は目を見開き、その光景を眺め続けた。


 理解の範疇を越えている。いったい何が起こっている?

 理解が追い付かない渋谷の目の前で、またもや異変が起こる。


 どこから現れたのかは分からないが、あの怪人の数が増えている。渋谷が眼を離した隙にいつの間にか奴らはそこに存在していたのだ。

 

 数えきれない怪人達がまるで軍隊のように隊列を組み、道の真ん中を占拠している。

 ここはもう、奴等の世界に違いなかった。

 塗り替えられた景色は渋谷の知る鳴海町とはまるで違う。ほんの少し前まで渋谷が夢想していた鳴海町は一種のゴーストタウンと化し、人ならざる者が闊歩する魔境となった。


 渋谷はジリッと後退さる。


 奴等からは意思は感じられない。しかしながら、溢れかえる殺気までは隠せない。

 それは獣の様に、自らの本能にしたがって動く野生だ。

 ならばここにいる渋谷は、奴等にとっての獲物に過ぎない。


「――――ッ」

 

 そう認識した瞬間、渋谷の身体は動いていた。

 渋谷もまた本能に従った。生存本能は逃げる事を選択する。どちらが上位の存在であるか、今の自分が置かれている立場を把握し健脚はすぐさまきた道を引き返す。

 ここまで来たのは一体なんの為だったのか。自分の望んでいた答えがここにあると信じていたから、渋谷はこうして再び鳴海町に来たというのに。目の前の異形が渋谷の決意に後悔という水を差す。


「――チィ! 見逃してくれよクソッタレ!!」

 

 渋谷の動きに合わせて怪人もまた動いた。たった一人の獲物を刈るために、奴等は集団で襲う事を選んだ。一つ目の軍隊が押し寄せる。

 

 それは洗練された動きではなかった。だが妙に統率のとれた動きは獣の群れを想起させる。

 

 跳ね、飛び、走って、アスファルトを砕き、屋根を踏み抜きながら、建ち並ぶ店を破壊して渋谷を追う。

 

 遊んでいる様子はない。迅速に、ただ事務的な動作で渋谷の背に追い縋る。


 一匹が渋谷の背後に肉薄し、果たして渋谷は、服を掴まれた。


「ぐあっ!?」


 反対方向へと掛かった強烈な力の加重が、渋谷の走りを阻害する。渋谷は後ろに引き倒され、その場に尻餅をつかされる。

 

 ――囲まれた。逃げ場はない。渋谷の行く手を阻むように、怪人が立ちはだかる。

 

 どうすればいい。どうしてこうなった。何がなんだか分からないまま、渋谷はふと思う。

 無理だ、嫌だ、このまま死ねるわけがない。俺にはやらなきゃいけない事があるのに。自分はまだ何もしていない。ここからが始まりだったのだ。終われない。

 ここでなんて――終われない!!


「あああああああアアアアアア――ッ!!」


 錯綜した脳内の思考がひとつの答えを出した時、渋谷は声を大きく張り上げていた。何でもいい、少しの隙でもいいから生まれてくれという、半ばヤケクソの発声だ。

 するとどうだ、渋谷の突然の叫びに怪人達が何かを感じ取ったのか、そこに一瞬だけ隙が生まれた。

 

 怪人達の硬直。この瞬間、渋谷は己の足に力を込めた。這うように低く飛び、半ばタックルのような形で目の前の怪人へと突っ込んだ。

 勢いに負け、怪人が倒れる。そこがスペースとなって道が開ける。


 渋谷は構わず走った。これが活路。生きるための道だと信じて。


 ――考えろ。今出来る事をやれ!


 剣の師である祖父の言葉を思い出し、渋谷はただ一瞬の隙で思考し疾駆する。


 この町に人がいる様子が見受けられないのは、別の所に避難しているのかもしれない。

 店はよく見ると、何度も修理した跡が見受けられ、真新しい傷が残っている。

 つまり、人はこの町で生活しているということだ。ならばこの様な事態を想定した策が必ずあるはず。奴等の弱点ないし、盲点が存在し、それを頼りに人々が暮らしているとすれば……。


 渋谷はそこまで考えて、一瞬、目の端に移り込んだモノに気を取られた。


 路地の隅で踞る一匹の犬である。すっかり怯えきった様子であり、瞳は涙で濡れている。

 足からは血が流れていた。どうやら瓦礫かガラス片で切ったのかもしれない。


 ここで犬を抱える事は簡単だ。しかしせっかく作った貴重な隙をみすみす逃す嵌めになるだろう。


 だが、渋谷は迷わなかった。

 一目散にその犬の許へ駆け寄り、抱き抱える。

 

 首輪には『メンチ』という名が書かれていた。飼い主と離れてしまったのか。

 可哀想に、もう大丈夫だ、と声を掛けながら渋谷は状況を把握する。


 再び怪人は渋谷の目の前に迫っていた。

 しゃがみこんだ渋谷を見下ろすのは無機質な一つ目だ。

 万事休す。そんな言葉が当てはまるこの状況で、渋谷は達観などしなかった。


「畜生……チクショウッ!! ふざけろよ、この野郎ォ!!」


 渋谷はそれでも諦めない。犬を一旦下ろし、その場にたまたま転がっていた、半ばひしゃげたパイプを拾い上げると、まるで剣道でも始めるかのように中段へと構えたのだ。


「――――ハァ」

 

 呼気を吐き出し、渋谷は丹田で力を練る。

 それは素人には出来ない見事な構えだった。無駄な力など入っておらず、相手を斬るという気迫のみが表立ち、一つ目すらもその身に警戒の色を滲ませる程のそれ。


 渋谷は中学時代に、剣道の全国大会で二位入賞を果たした経歴を持つ。

 そして祖父が開いている道場で、彼は誰よりも剣を振り続けてきた。

 渋谷はまさしく剣士である。武の道に通ずる者にしか発することの出来ない剣気を、彼も例外無く纏っている。


 追い詰められたこの状況で、筋肉はほどよい緊張状態を持っていた。

 それが彼の本来の資質によるものか、はたまた追い詰められた者ゆえの足掻きかどうかは分からない。

 しかし今の渋谷は間違いなく本気だった。


 渋谷は集中する。

 じっと化物の動きを観察し、その時を待つ。

 冷静に、神経が高いレベルで研ぎ澄まされていくのが分かる。

 張りつめていく空気。それに耐えきれなかったのは化物だった。


「ギュアアアアアアアッ!!」


 渋谷の頭上へと迫る叩き落とし。人にあらざるモノが繰り出した膂力任せのその一撃。

 

「雄々ッ!!」


 だが、どうということはない。

 一瞬の閃きはまるで光の速さで、剣となるパイプが振り抜かれた。

 怪人が渋谷の頭部を叩くより先に、カウンターとなる渋谷の面打ちが華麗に決まる。

 心技体が一体となったその一撃は紛れもない渋谷の全力だ。

 確かな手応えと共に、渋谷はふっと口の端をゆるめ――、


「――なッ!?」


 直ぐ様、その顔は驚愕の色に塗り潰された。


「ギ、ギ、ギェ!」

 

 化物は何事もなかったかの様に、強引に棍棒を振り抜いて見せた。

 轟と唸る振り抜き。渋谷は一瞬の判断で、間一髪それをパイプで受けとめた。

 が、手に伝わる重い衝撃に、パイプは更にぐにゃりとひしゃげ、渋谷の手からこぼれ落ちた。


 渋谷は手に残る痺れと共に化物を睨み付けた。

 間違いなく自分の一撃は完璧だった。竹刀よりも硬いパイプを使ったというのに、一つ目は倒れるどころか反撃までしてきた。

 有り得ない、と考える自分の思考は相手が人間の場合だということに遅まきに気が付く。

 今自分が対峙するのは一体なんだった?。

 ――人ではない、化物、なのだ。


「ギィエ!」


 棍棒が再び迫った。二度はない。確実な死の宣告が突き付けられる。

 己の死。考えた事もない未知がすぐそこまで迫っている。


 渋谷は自身が諦めの悪さを知っている。だが、それでもどうにもならない。足掻きすらこの化物の前には到底及ばない。


 ――巻き込んで悪かったな……。


 心のなかで、丸くなった犬へと渋谷は語りかける。

 確かに彼が採った選択は、正解だとは呼べない。

 しかし渋谷は、その責任を丸投げするような男ではない。


 ――最後まで俺がお前を守るよ。絶対に、この命に代えても。


 渋谷は再度、腕に力を込める。踞り、犬を抱え込む。

 間違いなく自分に棍棒は叩き付けられる。しかし上手くいけばお前だけは助けられるとそれだけを渋谷は唯一の誓いとする。

 

 意識が研ぎ澄まされ、世界がゆっくりと流れていく最中、渋谷は再び思う。

 本当ならここで、自分の命が終わることに耐えられない。

 必死に唇を噛み、これで良かったと自らに言い聞かせなければ、今すぐにでも飛び掛かってやりたいのだ。最後まで足掻いていたいのだ。


 矛盾した思考回路だ。命が終わることに抵抗を持ちながら、その上で投げ出す行為を是とする。

 だが、それももう終わりだ。渋谷の命はここで潰えようとしている。

 否、潰える――


「君、なんでここにいるのよ。ただの死にたがりはよそでやりなさい」

 

 ――はずだった。


「でないと、私が助けないといけなくなる」


 声とともにそれは来た。

 

 ――閃光。

 眩い光が闇を祓う。一陣の流星とも見まごう程の、強烈な一閃。

 渋谷を襲おうとしていた怪人が。そこにいたはずの奴等の大半が無に消えた。


 何が、起こっているのか。渋谷の疑問は新たな異常で上書きされる。


『――(まがつ)消滅を確認。残り、十一』


 聞こえてきたのは重厚感のある男の声だった。

 何処か空々しく、感情が無いとも思えるその声音。しかし、少女の他に人の姿は無い。


「わかってる。カウントは要らないわ、タケミカヅチ」


 少女が声に答える。およそ現代人の名前とは呼べないその名は、この少女が持つ不思議な雰囲気と何故だが妙に釣り合いがとれていた。

 そう、彼女もまたこの異常と釣り合いが取れているのだ。


 渋谷はようやく冷静に彼女の姿を見ることが出来た。


 青みががった腰まで伸びた黒髪と、凛々しく力強い眼差しと、柔らかく愛らしい顔立ち。どこか大人びた印象を受ける声音は、幾度聞こうとも不快にならない清流のごとき清らかさを持っていた。

 眼を引くのは構えられた大きな現代弓だ。競技用のアーチェリーとも見えるが、肝心の矢が見当たらない。矢筒すらない。


「なん……なんだ?」


 彼女は多少荒っぽい言い方ではあったが、自分を助けると言った。

 だが、どうやって?


 その答えはすぐに示された。少女が弓を構え、矢の無い弓の弦を大きく引き絞る。


「なっ!?」


 渋谷は大きく目を見張った。次の瞬間、矢に光が集まっていったのだ。

 それは小さな粒子の集合体だ。集まった光はまるで矢のような形へと変形したのだ。

 

 薄黄色に発光する光が放たれる。

 駆ける一本の矢。狙い、穿たれた怪人は「ギェッ」という短い呻きを挙げながら、光へと還元され消失した。


 それはさながら美しき舞いのようだった。手に負えないとさえ思えたあの数が、ここにいるたった一人の少女によって祓われていく。

 一網打尽だった。そして怪人の姿は全て掻き消える。


 息を詰まらせるほどに濃厚だった邪気が消え、残されたのは少女の圧倒的存在感だけだ。


「あんた……一体なんなんだよ……!?」

 

 少女は渋谷に向き直り、言った。


「私達は《DRAFTドラフト》。英雄になるべく神との契りを結んだこの町の英雄ヒーロー

英雄ヒーロー……?」


 これが、少年の出会い。

 それは彼が選び取った未来の結果。

 期せずして訪れた、非日常への誘い。

 自らを英雄と名乗る少女と、いずれ英雄となる少年はこうして出会った。

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