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【完結】四国転生〜459通のお祈りメールから、旅館若旦那の偽恋人になりました〜  作者: 木風


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第三話 東京駅で駅弁二個、岡山で駅弁一個

「うぅ……気持ち悪い……東京駅で駅弁二個、岡山でも追加したのは、さすがに食べすぎだったかも」


予讃線が海のすぐそばを走るのは、ちょっとテンションが上がった。

窓の外いっぱいに青い海が広がって、線路の向こうで波がきらきら光っている。

あれは確かに、旅情というやつだった。


けれど、あんなに揺れるとは思わなかった。


松山駅から出てすぐ、私はベンチに座り込む。

スキニーのボタンが命乞いをしているのがわかるほど、お腹が苦しい。

胃袋の中で、東京駅の駅弁二個と岡山で追加した弁当が、四国上陸記念パーティーを開催している。


「じゃこ天も追加しとったけんねぇ」

「何!?誰!?」


突然話しかけられて、辺りを見回す。

けれど、人影らしいものは見当たらない。

駅前を行き交う人たちは、それぞれスマホを見たり、タクシー乗り場へ向かったりしていて、私に声をかけている様子はなかった。


「ここよぉ」


声のする方を見たら、ベンチの横に置いたキャリーバッグの持ち手に、みかん色の小さな鳥が止まっていた。


頭には葉っぱ。

丸い体。

小さな羽。

そして、妙に腹の立つほど愛らしい、つぶらな瞳。


「いよ、ぴよ……さん?」


本当に来てしまった。


「せとうち四国広報局愛媛担当SNS広報官」から届いた内定承諾書。

岡山までの新幹線チケット。

そこから松山までの特急券。


全部、現実だった。

転職サイトで見慣れた企業ロゴも、担当者名もない。

あるのは、やたら立派な朱印と、みかんの透かし模様が入った怪しすぎる書類。


足元を見られた気がしなくもない。

けれど、なかなか内定がもらえないまま失業手当の受給も終わってしまい、私は内定承諾書の期限日ぎりぎりに、承諾書に印鑑を押してしまった。


社会人として、負けた。

いや、無職としても負けた。


「あんたねぇ!!よくもこんな遠くまで私を連れてきたわね!!」

「ぴよっ!?」


私は両手で、みかん色のマスコットサイズのゆるキャラを掴んだ。

羽毛らしきものは、想像よりふかふかしていて、腹立たしいほど手触りがいい。


「ぴょーー。ゆるキャラ虐待反対けんねぇ!」

「うるさい!焼き鳥にすっぞ!!」

「ゆるキャラ愛護団体に訴えるけんねぇ!」

「ちっさいと焼き甲斐がないわ!大きく戻りなさい!」

「今は省エネモードなんよ」

「神様が省エネすんな!」


こんなマスコットに真面目に話しかけている自分も、この状況も、もうわけがわからない。

傍から見たら、どこからどう見ても完全に不審者。

しかも、駅前でぬいぐるみに説教しているタイプの、かなり危ない不審者。


「それより、そろそろ来るけんねぇ」

「は?まだ何が来るっていうのよ?」


ここまでの流れで、悪い予感しかしない。


「瀬川美咲様ですか?」


大きな影が落ちると同時に名前を呼ばれ、顔を上げて固まる。


黒髪。

端正な顔立ち。

涼しげな目元。

身長も高い。


旅館の人らしい、落ち着いた所作。

白いシャツに濃紺の旅館の羽織。

派手さはないのに、立っているだけで妙に目を引く。


「本日お泊まりの宿より、お迎えに上がりました。曽我部(そがべ)です」


何このイケメン。

四国、着いて三分で顔面偏差値が高い。

東京でもあまり見かけないくらい。


「最初の取材先やけんねぇ」

「え?」


私の手から逃げ出したいよぴよさんが、ぱたぱたと羽を動かし、私の肩に止まる。


「何か?」

「いえ、何でもありません」


曽我部さんの反応を見るに、どうやらいよぴよさんは私にしか見えないらしい。


いけない。

気をつけないと、何もない空間に向かってキレ散らかしている女に見られてしまう。

いや、さっきの時点でだいぶ手遅れかもしれないけれど。


「明日からさっそく働いてもらうけん」

「うぅ、ブラック……でも、温泉は入りたい……」


イケメンの曽我部さんに少しだけ訝しげに見られながら、私は迎えの車に向かう。

知らない土地に来てしまった実感が、今さらじわじわと足元から上がってくる。


内定承諾書には、契約社員、期間は半年。

こうして私の愛媛での生活が始まった。

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よろしくお願いします( *・ㅅ・)*_ _))ペコ

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