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勇者祭2 首都編  作者: 牧野三河
晩餐会

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32/107

第32話


 マサヒデはカオルが仕立てた上等の紋服。

 アルマダと騎士達はスーツだが、流石にアルマダのスーツは出来が違う。

 カオルは紋無しの羽織袴。

 後ろには目も眩む程に輝く銀の馬車。

 その馬車を引くのは立った熊のように大きな馬、黒影。


 城門前の広場を通り過ぎる時には、あれは誰だと指差されたり、頭を下げる者達も居た。馬の者も皆が下馬して道を開ける。


 城門前広場を抜けてしばらく城に向かうと高級住宅街。

 2階建て3階建ての広い敷地の綺麗な屋敷が並んでいる。

 城務めの貴族や政治家達の家がここに並んでいるのだろう。


 マサヒデが周りを見渡して、隣のアルマダに浮ついた目を向ける。


「何か、凄い家ばかりですよ。皆、貴族の家ですか」


「そうですよ。領地から出てきている者の別宅とかもあります」


「へえ・・・急に緊張してきました。もうすぐお城ですね」


「そうですよ。私も緊張しています」


「うへえ」


 ちらりと後ろを見れば、馬車の御者台のトモヤも顔が固くなっている。

 カオルも、イザベルも顔が固い。

 陛下と謁見するのだから、当然か・・・


 しかし、あの大剣客、ショウゴ=キノトも来るのだ。話すことが出来るだろうか!


「アルマダさん、白状しますよ」


「白状?」


「私、陛下に謁見するっていう緊張より、キノト先生に会えるかもっていう喜びの方が勝ってます」


「は? ・・・ははははは! あなた、やはりカゲミツ様に似てきましたね!」


「ええ?」


 後ろでカオルとイザベルの固い顔が、少し緩んで笑みが浮かんだ。



----------



 申の刻(16時)過ぎ、城門前。


(うおっ・・・)


 口に出そうな驚きの声をぐっと飲み込み、マサヒデが馬を止める。

 門番の騎士が歩いて来て、マサヒデ達も馬を降りる。


「どなたかにご面会のお約束ですか」


 丁寧な口調だが、ぐっと威圧感を感じる。

 マサヒデが懐から招待状と帯剣許可証が入った封筒を出して、


「マサヒデ=トミヤスです。陛下から晩餐会にご招待されました。ご確認願います」


「少々お待ち下さい」


 騎士が器用に鎧の手を外し、封筒を開けて招待状と帯剣許可証を見る。


「ありがとうございます。帯剣許可がございますので、皆様の分も確認させて頂きますが」


「はい」


 騎士がアルマダ、カオル、イザベル、アルマダの騎士4人と回って確認し、馬車に近付くと、トモヤが封筒を差し出し、


「へへえっ!」


 と頭を下げた。くす、と騎士の兜の中から笑い声。封筒を取って中を見て、


「宜しい」


「ありがとうございます!」


 また、くすりと騎士が笑った。

 トモヤが馬車の横に歩いて行き、小さくドアを開けて、


「皆々様、招待状のご確認じゃ。開けるぞ」


「どうぞ」


 クレールの声が返ってきて、トモヤがドアを開ける。


「む」


 ぴく、と騎士が止まった。シズクを見て驚いたか。


「こちらは私の友人で護衛でもあります」


 そう言って、クレールが封筒を差し出した。


「失礼」


 騎士が封筒を受け取り、中を開いて招待状を見て、


「フォン・・・レイシクラン様でしたか。大変失礼致しました」


「構いません。慣れております」


 シズク、ラディの招待状も見て、


「お待たせ致しました」


 と頭を下げ、鎧の手を着けてマサヒデの前に立ち、


「真っ直ぐ進めば二之門、三之門がある。二之門は開いておるので、下馬せずそのまま通って宜しい。三之門にて下馬し、再度門番に招待状と帯剣許可証を見せよ。中に入ったら途中までは馬で結構。真っ直ぐ城へ向かえば途中で馬を預かりに来る」


「分かりました」


 マサヒデが頭を下げると、騎士が門の方を向き、


「開門!」


 と、大きな声を上げた。ぎぎぎ・・・と大きな城門が開く。


(うわっ)


 城が見える。

 広い庭が見える。もはや庭と言って良いのか分からない広さ。まだふたつ門があるのだから、そもそも庭と言って良いのか? だが、敷地だから庭なのか?

 真っ直ぐ伸びる道に点々と騎士が立っている。


「どうした。入って良いぞ」


 は、とマサヒデが騎士の方を向き、


「あ、失礼しました。あまり広いので驚きました」


「ふふふ。まだ驚くには早い」


 言い残して、騎士はかちゃかちゃと鎧を鳴らして門に戻って行った。



----------



 三之門での招待状の確認を終え、馬に乗って歩いて行くと、前の方の道の両脇に城の入り口までずらりと騎士が並んでいるのが見える。


(うへえ・・・あそこを通るのか・・・)


 マサヒデの顔を見てアルマダが察したか、


「マサヒデさん。へこへこしないように。たくさんいるんですから、いちいちお疲れ様ですとか声は掛けない。虚勢でも胸を張って馬を進めて行きなさい」


「はい」


 ん、んんっ! と咳払いして、片手で手綱を握りながら、襟を正す。

 む、と顔を引き締めて馬を進めて行くと・・・


 ぴく! とマサヒデの右手が動いた。

 道の両脇の騎士が剣を上げた。

 動く様子はない・・・


 ちゃ! ちゃ! ちゃ! ちゃ! と馬を進めて行くたびに騎士が剣を上げる。

 出迎えの礼儀のようなものか。

 一瞬どきっとしたが、特に敵意や殺気は感じない。


 そのまま進んでいくと、派手な軍服のような服を着た男が歩いて来た。似たような服の者が後ろにたくさん並んでいる。マサヒデ達が馬を止めると、少し前で男が止まり、


「マサヒデ=トミヤス様ですか」


「はい」


「アルマダ=ハワード様」


「はい」


 む、と男が頷き、


「近衛都督、タルト=コマツです。ここで下馬を願います」


「はい」


 マサヒデ、アルマダが下りると、皆も馬を下りる。


「馬をお預かりせよ!」


 コマツが声を上げると、軍服の男達がぴし、ぴし、ぴしと手を真っ直ぐ伸ばして歩いて来て、マサヒデ達、乗馬組の前で止まり、び! と敬礼して、


「馬をお預り致します!」


「はいっ! 宜しくお願いします!」


 勢いにつられて、大きな声で返事をして、びし! とマサヒデも頭を下げた。

 軍服の男達がマサヒデ達の馬を引いて離れていく。

 ふ、と小さくコマツが笑い、


「マサヒデ=トミヤス様御一行! アルマダ=ハワード様御一行! ご案内せよ! 帯剣許可は出ておる! 皆様の得物はそのままで宜しい!」


 さ、さ、さ、と2人の軍服の男が歩いて来て、びし! と敬礼し、


「マサヒデ=トミヤス様御一行! アルマダ=ハワード様御一行! ご案内致します!」


 コマツが頷き、


「馬車はもう少し先まで、そのままお進み下さい」


「はい!」


 マサヒデが返事をすると、くるりと軍服の男が振り向き、歩き出した。

 ざざざ、と並んでいた軍服の男達が道の脇に並び、びし! と敬礼する。


(これはたまらん!)


 こく、と小さく喉を鳴らし、マサヒデは軍服の男の後について行く。

 脇の下を冷や汗が垂れていく。


 後ろからがらがらと馬車がついてくる。

 振り返ってトモヤの顔が見たくなったが、びしびしと敬礼している者達の前で躊躇われて、マサヒデは緊張で胸を鳴らしながらついて行った。


 そのまま少し歩いて行き、ついに城の入り口。

 案内の男が足を止め、くるりと振り返り、


「馬車はここまでであります! 降車願います!」


 マサヒデが後ろを向いてトモヤに「止まれ」と手を向けると、馬車が止まった。

 案の定、トモヤの顔はがちがちだ。

 馬車まで歩いて行き、


「トモヤ、降りろ」


「おう・・・」


「俺も怖いんだ」


 小声で言い残して、馬車の横のドアを開ける。


「さ、馬車はここまでです。降りて下さい」


 クレールがにっこり笑って手を差し出す。

 マサヒデが手を取ると、よっこいしょ、と馬車を降りて、


「うわあ、緊張しますねえ!」


 と、全く緊張の見えない笑顔でかつかつとヒールを鳴らしてドアから離れる。

 クレールの赤いとっておきのドレスが陽の光を浴びてきらりと光る。


「ラディさん」


「は、は、はい」


 普段から白い肌が、緊張で病人のようだ。

 マサヒデが手を伸ばす。

 ラディが細かく震える手をそっとマサヒデの手に乗せ、かす、と馬車のドアの上に小さく頭を掠めて、馬車を降り、無言でクレールの横に立つ。


「さ、シズクさんも」


 流石にシズクには手を出せない。うっかり握られたら手が肉塊になる。


「はいー・・・」


 どすん、とシズクが下りると、さすがに案内の男が少し目を開いた。

 マサヒデが案内の男の前に戻る。

 後ろにクレールもついてくる。


「すみません。あの御者も招待されているんですが、馬車はどうしたらよいでしょうか」


 もう1人の案内の男が敬礼して、


「私が責任を持ってお預り致します!」


「それでは、宜しくお願いします」


「は!」


 ちら、と軽く上を見る。この近さだと上が分からない。

 ドアの開いた城の入り口を見る。

 とんでもない広さの広間に、絨毯が敷かれているのが見える。ここらだと広間の左右がどれだけあるのか分からない。


 ちょいちょい。裾を引っ張られた。


「マサヒデ様」


「え!? あ、はい!? クレールさん、どうしました!?」


「早く行きましょう。もう時間が」


「あ、そうでした」


 マサヒデは前でぴしりと気を付けをしている案内の男に軽く頭を下げ、


「申し訳ありませんでした。お城に驚いてしまって」


「問題ありません! ご案内致します!」


 くる、と案内の男が振り向いて入って行く。

 マサヒデも続いて入って行く。

 ずんずん歩いて行く男についていきながら、ちらちら目を配る。

 ここが城内。想像を遥かに超えている。


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