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世界最強の義兄弟  作者: 白入
王都マルグリット編
9/10

第07話 卒業

 淡いピンク色の花弁がひらひらと机の上に舞い落ちる。


 窓から見えるのは、この時期花を咲かすサクラという樹。異世界から持ち込まれた植物だと昔ベルに聞いた覚えがある。自慢気にピンク色の髪を見せつけている。


(今日はあったかいな……)


 教室の前の方から聞こえる声が心地良い眠りを誘う。卒業式の流れを説明しているらしい。後ろからはスピスピ聞こえる。ベルが寝てるんだろう。


「――という感じだ。まあ普通にしてれば良い。順番に名前呼ばれるから返事はしっかりしろよー」


 担任もそんなにやる気がないみたいで適当な感じだ。


「リク、ベルを起こしてやれ。そろそろホールに向かうぞ」


 ベルをユサユサ揺らす。全然起きないし、ヨダレ垂らしてる。きったね。


「おい、起きろ。行くぞ」


 頭を叩いて起こす。まだ半分寝てるなコイツ。なんかムニャムニャ言ってる。


「おい、立てって」


 引きずるようにベルを教室から連れて行く。朝もギリギリまで寝てたくせに。



 ホールに着くとみんなが並んで座っていた。俺らが最後みたいだ。

 うちの学校は1学年だいたい120人くらいで、ホールに丁度収まるくらいだ。ちなみにベルは椅子に座った瞬間寝た。


 その後は滞りなく式が進められ、最後に校歌を歌って終わった。名前を呼ばれる時はがんばってベルを叩き起こした。


「いやあ、なんとか式ってのはどれもつまらんな」


 ジオがぼやきながら俺らの元に歩いてきた。寝てるベルにビンタする。流石にジオの一撃は効いたみたいで、一発で目を覚ました。


「いってぇー! あ、ジオか。おはよ」

「いい加減起きろ。式終わったぞ」

「ええ!? 俺返事したっけ」

「ギリギリできてたよ」

「ならよかった」

「よくねーよ! リクに感謝しろよ」

「ありがとうリク」

「どういたしまして」


 くだらないやりとりをしていたら、他のみんなも来た。


「やっとおわったー!! ボク途中で寝ちゃった」

「うちも! 退屈だったわ」


 寝てるやつ多すぎだろ。かくいう俺も途中やばかったが。


「みんな揃ったし、ワルテ行くか」

「そうしましょう」


 昇降口に向かう俺たち。周りを見ると、名残惜しくて中々帰ろうとしない者も多い。


「もうこの学校に来ないって考えると少し寂しいな」

「そうかな。リクそんな思い入れあんの?」

「そういうわけじゃないけど……」

「リクの言うこともわかるぞ。嫌々でも毎日通ってたしな!」

「私は結構好きだったなあ……」

「リゼは勉強すきだもんね!! ボクは大嫌いだもん」

「わたくしもなんだかんだ気に入ってましたわ」

「嘘つき乳女……」

「何か仰いまして? 貴女と違って優秀ですのよ、わたくしは」

「ぐぬぬ……」

「アリアはボクとおんなじだね!」


 ワルテに着いた。よく考えれば、王都に出たらここに来ることもしばらくないのか。


「いらっしゃい―― ってお前らか」


「やっほー! いつものね!」


 奥のソファ席に座る。今日はお客さんが誰もいないようだ。本当に潰れるんじゃないだろうかこの店。


「お前らももう卒業か。今日のお代はサービスにしといてやる」

「ほんと!? ありがとうブルさん!」

 

 ブルさんにはお世話になった。ベロニクに帰ってきたときはここに寄ろう。潰れていなければ。


 早速ジオが煙草に火をつける。禁煙しないのかなこいつ。


「で、みんな王都にはいつ出発する?」


 ベルが急に口を開いた。それは俺も気になっていた。


「そうだな…… どうせなら一緒に行きたいし、日にち合わせるか!」

「まず、学院始まるのいつからだっけ?」


 大丈夫かベル。心配だ…… 王都でちゃんとやっていけるのだろうか。親みたいな気持ちになる。


「学院が始まるのは丁度10日後だな」

「思っていたより近い!」

「説明受けたろ」

「ほとんど忘れちゃった」


 にへらっと笑うベル。


「王都に行くのに1日かかるから、あんまりゆっくりとしてられないな」

「そうだね。向こうでの準備もあるだろうし5日後くらいはどう?」

「そんくらいがいいかもな。他の奴はどう思う?」

「うちもそれでいいと思う!」

「ボクもー」

「私も大丈夫」

「わたくしもそれでいいですわ」


「うむ。じゃあ5日後に出発ってことで」


 すんなりと日程が決まる。あと5日か……


「なんか急に実感がわいてきたな!」

「何持っていけばいいのかな」

「服くらいだろ。教科書とか諸々は向こうでもらえるらしいし」

「なんかドキドキしてきた!」

「はえーよ」


 みんななんとなく浮足立っているみたいだ。俺の胸も期待で膨らむ。


「そういえば、住むところはみんな近いらしいな」

「え! ほんと!?」

「ベル…… ほんとになんも覚えてないのか……」


 ジオがベルの鳥頭振りに呆れている。


「ったくお前は…… 寮は属性で分かれてないから、希望出せば同じ寮に入れるかもしれないってことらしい」

「え! マジで!」

「ほんとー!? 一緒のとこいこーよ!」

「ココも鳥だったか…… 説明はきちんと聞いとけよ」

「リクも一緒なの?」

「いや、俺は寮に住めるかまだわからないんだ。俺だけ学院が無いし……」

「えーー…… 一緒がいいのにーー」

「王都でどうなるか教えてくれるらしくて、まだなんも聞かされてないんだ」

「へえ、ほんとに漏れちゃダメなんだな。リクの情報は」

「本人なんだから教えてほしいよな」

「まあ仕方ない。国の命令らしいからな。一校長先生じゃどうにもできねえよ」


 自分がどうなるか知らないせいで、みんなの話についていけない。置いてけぼりを食らってる気分だ。


「寮に入れるか分かったら言うよ。お前らには話して良いっぽいしな」

「おう! 向こうでも集まろうぜ」

「ワルテみたいな店があればいいんだがな……」

「王都は人が多いからなー。ここより居心地良いところは中々無いぜ」


「客が少なくて悪かったな」


 ブルさんがサンドイッチの乗った皿を片手に歩いてきた。


「聞こえてたの? 褒めてるから怒んないでよブルさん」

「褒められてる気がしねえな」


 そう言いながら皿をテーブルに置く。


「なにこれ?」

「卒業祝いだよ。ありがたく思えよ」

「わーい!! ありがとうブルさん!」


 ココが真っ先にサンドイッチにかぶりつく。


「うん。色々ありがとねブルさん」

「たまには来て話聞かせろよ」

「そのつもりだよ」

「そういえば、俺の知り合いがやってる店が王都にある」

「え! なんてお店?」

「『フォンセ』っていう店だ。よかったら行ってやってくれ」

「わかった。行ってみるよ」

「おう。店主(マスター)には話しておくよ」

「ありがとう」


(お店やっている人同士の繋がりでもあるのだろうか。ブルさん昔は王都にいたって言ってたし、その時の友達かな?)



―――――



「じゃあ、出発は5日後な」

「わかったー」

「明日はどうするの??」

「俺服買いに行こうかな」

「いいなー! うちも行く!」

「暇な奴は明日買い物行こうぜ。必要なものもあると思うし」

「わかった……」

「わたくしは明日は用事がありますわ」

「俺もだ」

「おっけー。じゃあマーサとジオ以外はお昼に集合な」

「おっけー!」


 明日の約束を済ませて解散する。ベルは服たくさん持ってるけど、俺は全然持ってないからなあ。ベルに選んでもらおう。かっこよくしてくれるはず。


「ベルも明日行くだろ?」

「もちろん!」

「服選んでくれよ」

「いいよ! リク地味な服しか着ないもんね」

「うるせー」

「せっかく王都に出るしね。イメチェンしよイメチェン」

「ああ、頼むよ」


 俺もおしゃれ男子の仲間入りして、彼女を作りたい。そういうお年頃なのだ。


「ベル、おばさんおじさんには俺の事言ってないだろうな?」

「言ってないって! 心配性だな~リクは」

「いくら隠してもいずれバレる気がするけどな……」

「そうだねぇ。ま、今のところは大丈夫だから安心して」

「うん」


 ベルはバカそうで実はしっかりしているのだ。多分大丈夫だろうが気が抜けない。バレたらその時はその時だな。



 








お久しぶりです。

前話で週2~3話を目指すとか言っておきながら、約1か月振りの更新になってしまいました。大変申し訳ございません……

次話は出来るだけ早く更新いたします!

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