第04話 準成人になった日
開いたドアから金髪の頭がヒョコっと出てきた。ベルだ。
「おいっす! 遅れてマジでごめん! ブルさんいつものね!」
ソファ席に自分以外が揃っているのを確認すると、慌てて店に入ってきた。そしてソファの一番端に座る。
「いやあ、マジですまん! 色々あってさー」
「おせーよベル!」
「人を待たせすぎ!」
「まあまあ。落ち着けってみんな」
ベルを責める俺らを宥めながら6本目の煙草に火をつけるジオ。
「待たせたからには、おもしれえ話聞かせてくれるんだろ?」
ジオがニヤッとしてベルを見る。それにつられるように、他のみんなの視線もベルに集まった。
「ほい、ベルもカフェオレだったよな」
「おう!ありがとな!」
ブルさんがカフェオレをベルの前に置く。
(結局忘れてたの俺だけかよ。けっ)
『属性決め』で心が荒んでる俺は些細なことで拗ねる。
「じゃあ、聞かせてくれよ。ベル=ブランは何属性だったんだ?」
「俺は――」
みんな息をひそめてベルの言葉を待っている。
ベルは自慢げにもったいぶっている。
「俺は光属性だった」
「「「「「「えええええ!?!?!?」」」」」」
したり顔のベルを前にして、俺ら6人は驚くことしかできなかった。
そのあとは、しばらくベルの尋問タイムだった。
まとめるとこうだ。
ベルは俺らと同じように瞑想をしたあと、水晶玉に手をかざした。そしたら水晶玉の中心から直視できないほど強く大きい光が生まれた。校長曰く、「今まで何人か光属性の『属性決め』に立ち会ったが、これほどまでに強い光を生み出す生徒はいなかった」と。
それからは他の属性持ちと同じ流れで高等学院の説明を受けた。光属性はベルしかいなかったそうだ。アリア達は説明を受けて解散だったらしいが、ベルは違った。王都の光属性の高等学院から校長が来ていたらしく、説明の後も校長と話をしていたらしい。
(やっぱり光属性は特別扱いなんだな。すげーよベル……)
校長との話の内容はあんまり教えてくれなかった。「まだ話せないこともあるから、いずれ全て話す」と約束してくれた。
「いやーーー、まさかベルは光属性だったとはねえ……あのベルちゃんが」
「すごいよベル!!!! まさかボクたちの中から光属性が出るなんて!!!」
「尊敬しますわベル」
「正直ベルは無属性だと思ってた……」
みんな思い思いの感想を漏らす。
「で、リクはどうだったんだ?」
無邪気なベルの質問に一瞬空気が凍る。
「ん? おれは無属性だったよ」
出来るだけ気持ちを悟られないように、あっけらかんと答える。
「え……? 嘘だろ?」
「本当だよ」
「そ、そうか…… でも王都には行くんだろ?! これからも一緒だよな?」
「ああ、王都に行くよ。ジオと同じベズ高等学院に進学する」
「そっか…… なら良かったよ……」
ベルは返す言葉に困っているようだった。
「ベル。改めておめでとう。良かったな! 光属性なんて中々いないぜ?」
自分ができる精一杯の笑顔でそう言った。
「それに、属性持ちなら冒険家を目指せる。俺の分までがんばれよ?」
「ありがとうリク。でも――」
「俺のことは気にすんなって。属性なんて持ってようが持ってなかろうがそんなに変わんねえよ」
隣で煙を吐いていたジオが割り込んでくる。
「そうだな! 属性なんて関係ねえよ! みんなでこの町を出て王都に行く! その夢は叶ったんだ。これからもよろしく頼むぜ、みんな!」
「あ、ああ。よろしくな」
「よろしく!」
「よろしくですわ」
「よろしくー!!」
「よろしくね」
「うん。よろしくなみんな」
それからみんなでこれからの事を語り合った。今までみたいに集まれるのか。みんな一緒に居られるのか。高等学院はどんな感じなのか。王都でうまく暮らせるのか。7人とも希望と不安に包まれながら、数十日後には始まるであろう新生活を思い描いた。
ふと思い出して、俺は一つ気になっていたことをみんなに聞いてみた。
「なあ、水晶玉さ、なんか汚くなかったか? もっと綺麗で透き通っているもんだと思っていたんだが……」
「え? 十分透き通ってたろ。ついに目までイカレちまったか?リク」
「マジで? なんかすすけた感じだったんだけど…… てかまだ目以外もイカレてねーよ」
「うちも綺麗だったと思う! 近付いた時見とれちゃったもん」
「わたくしもそう思いますわ」
「リク緊張して目が変だったんじゃない??」
「もしそうなら、リクらしくないね……」
「えー、マジかあ。俺が変だったのかなあ」
そんなに緊張してたっけ俺。リゼの言う通り、らしくないな。
まぁいいか。それより今日は帰ったら、ベルのお祝いだな。おばさんおじさんもきっと大喜びだ。
――――
いつの間にか日は落ちて、外は真っ暗だった。
「じゃあまた明日なー」
「おう!また明日な!」
「ばいばーい」
ジオ達と別れて俺とベルは帰路に就く。俺らの家だけみんなとは反対方向なのだ。
「まさかベルが光属性だとは思ってもみなかったよ。ジオと、ベルは絶対無属性だって話してたんだぜ?」
『ワルテ』では気持ちに余裕がなかったが、今は現状を受け入れて、悲観的になることはもうなくなっていた。
「こっちのセリフだよリク。俺は無属性かもしんねえけど、リクは絶対に属性持ちだと思ってた」
「お前は俺のことを買い被りすぎなんだよ昔から」
ベルの純粋な言葉で俺の口元は思わず緩んだ。
こいつと兄弟で本当に良かった。恥ずかしくてこんなこと口には出せないけど。
「ベル。王都に出たら俺らは今までみたいに同じ屋根の下で暮らしたり、一緒に授業を受けたりできなくなるかもしれないな」
「なんだよ急に。淋しいこと言うなよなー」
「でも、俺らは血は繋がってなくても兄弟だからな。忘れんなよ」
「忘れるわけねーーだろ! 俺がリクを見つけてやったんだぜ? 俺が兄でお前が弟な」
「何度も言うが俺が兄だ。ベルの弟なんてありえない」
「なんだとー!?」
今まで何千回何万回繰り返したやりとりに、思わず笑ってしまう。
「すこし淋しくなるな、ベル」
「ほんのすこしな! 俺らはそろそろ彼女の一人くらい作るべきだと思うぜ? 弟よ」
「お兄様とお呼び」
気付けば家の前にいた。
「今日はパーティーかなあ? リク!」
「パーティーだな。間違いない。今日から俺らも準成人なんだ」
「そうだな!」
「晩ごはんはなにかな~」と言いながら我が家の扉を開けるベル。
家の中からこぼれだした暖かな光が俺とベルを照らし出す。
「「ただいまー」」
今度は少し早めの投稿です。
本日中に第4.5話も投稿予定です。もう少々お待ちください。




