二度目の王宮
…ついつい、了承してしまった。
フィオナは今、5年振りのジークの部屋にいる。5年前とさほど変わってない部屋で、ジークの膝に乗っている状態で。
人間は嫌いだが、真剣な人を無下には出来ない事が今回は仇となったか…
フィオナは小さく溜め息を漏らした。
だいたい、展開が早すぎないか?
移動魔法で一瞬で連れてこられる身にもなって欲しいものだ。
そして、何故か身体をジークの腕によって離れる事が許されない。別に痛くはないけど、そろそろ離して欲しい。
あれから何時間たったんだ?
私はもう一度、溜め息を漏らした。
「…イオンに何をされた?」
突然、ジークが言葉を発した。
急に話しかけられて困惑してしまうと同時に、イオンにされた事を思い出し、顔が真っ赤になってしまっているだろう。
フィオナの反応を見たジークの片方の眉がピクッと上がったのをフィオナは見た。
「何をされたんだ?」
後ろから殺気を纏っているジークの声色は2トーンは低い。
「キスを…されただけ。陛下、そろそろ離して下さい。」
「初めてではなかったのか?」
未だに声のトーンが低い。そして、この陛下は離す気は毛頭ないらしい。
「それは、まぁ。初めてでしたよ。」
陛下がフィオナの肩を持ち自分の方へ向かされる。肩を掴む手は、少し力が入っていて痛かった。陛下の顔が近くに来ていた。深いスカイブルーの瞳とかち合った。
「初めてのキスを無理矢理されて、おまえは何故、冷静にしてんだ! 」
変なところで怒鳴られてカチンと頭にきた。
「別に陛下には関係がないではありませんか。私だって、冷静ではありません」
「では、あの時、何故拒まなかった!?」
さらに大声を出されてフィオナは体を縮ませた。
私だって、私だって、抵抗したかったわよ!
でも、手や足を掴まれてて口を塞がれてて、恐怖でいっぱいだったのに…
そう頭の中で言っていたら、次第に視界が濁ってきた。ぼたぼたと綺麗な床に零れ落ちる。
フィオナは必死に抑えていた感情を外へ出した…。
…なーんて出来たら。
「すまない…」
さっき聞いた声より優しく、怯えている声だった。
ジークの親指がフィオナの涙をすくい取る。
酷く優しく、壊れ物に触るみたいに…。
何時の間にか、涙は止まっていた…。
ーーーーーーなんて。いかにも、恋愛小説にありそうなパターンでめでたしめでたしだな。
生憎、フィオナはそんな高テクニックは持ち合わせていない。だって魔女だし?
フィオナが、内心そんな事を思っているとも知らないで、あれから返事が返って来ない事に少々言いすぎたか?と罪悪感を秘めてしまった陛下はフィオナの顔色を伺う。下から覗き込む形で。
その表情に笑がこみ上げて来た。
例えるなら、強そうな大型犬がフィオナに上目遣いで見ていて、耳と尻尾が垂れてオロオロしている感じ?
ついに、吹き出してしまった。
「なっ!?」
ジークは驚いている。そして、見る見るうちに顔が真っ赤になっていった。
「何処に笑う要素があったんだよ‼」
「陛下の顔です」
ばっさり言ったせいか、内容に落ち込んでいるのか、ジークは床に膝をついてどんよりしたオーラを出している。□陛下、百のダメージ□
と、ついつい口に出してしまったのは仕方が無いと思う。
だって、陛下の行動が笑えるんだもの。
フィオナは久々にお腹から声を上げて笑った。
ひとしきり笑い終えた後にグイッと陛下に右腕を掴まれ陛下の胸に倒れる形になった。
「その首筋のキスマーク…気に食わないな…」
陛下の方を見上げると密かに口端が釣りあがっていた。
「っっっーーーーーーー!!」
後ろからサラッとした陛下の髪が肩にかかったかと思うと、ピチャ…という効果音がして首筋を噛まれた。
生温かく湿った所が先程イオンに付けられたキスマークに被さるようにして噛まれたそれは、より一層赤く濃く色白のフィオナの首筋に付けられた。
「…何ヶ所やられてんだ?」
少し低く怒ったような声だが何故か顔が笑っている。
「そういえば、唇が腫れてないか…?」
フィオナは咄嗟に自分の口を隠した。ジークが笑っている訳が分かったからだ。
「無理です!違います!ごめんなさい!」
フィオナは必死に弁解を試みるが最早、刻すでに遅し。
フィオナはとさっと寝台に羽交い締めにされ、ジークの口端が笑ったのをみると息が出来なくなっていた。
ジークのキスはとても強引で離すつもりはさらさら無い。
息が出来ないと思った瞬間には舌が口内に侵入していて術もかける余裕すらなかった。
「っっ…ハーハー…ッ、ハー…」
漸く離され、フィオナは息をするのに必死だった。
だが、それも少しの間。
直様またフィオナの唇を貪り始める。
ジークの舌がフィオナの歯並びを一つ一つなぞられビクビクと身体が震えてしまった。
「ッ、ッ…も、ぅ…むり………」
フィオナの途切れ途切れの言葉を聞きやっと満足したのか唇を離す。
ジークとフィオナの唇には一本の銀の糸が繋がっていた。フィオナの瞳は潤み顔は火照っている。其処らの貴族の令嬢なんか比では無いほどに美しく儚い、その身体に例え無限の魔力を秘めていても脆いただの女の顔をしていた。そんなフィオナに見とれるジークだがpこれで終わるようなジークでは無かった。
流れるようにイオンに付けられたキスマークを一つ残らず上から付け直している。
全部付け終わったみたいで安緒の息を漏らすと、フィオナにとっての絶望の言葉が聞こえた。
「今度イオンにやられたら、俺がこれ以上のことをして、意識を失うまでやってやるからな。」
ジークが言った言葉はフィオナの顔から血の気が引いた。まさかこれ以上のことをされるのか…今でも意識を失いそうなのに…。
どうやらイオンにされたことが相当嫌だったようだ。
フィオナは背中に脂汗をかきながら乱れる息を整えるのに必死だった。




