表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
孤島で“鬼”になった少女は、文明世界で人の心を取り戻す ――Princess of the Flies――  作者: ベルモット
第2章 役に立つ力

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

23/29

条件

 午後になって、扉がノックされた。


 外から、名前を呼ばれる。私は、返事をしてから立ち上がった。


 廊下は静かだった。


 昼のざわめきは引いている。足音が、やけに大きく聞こえる。


 部屋に入ると、タケトシは窓のそばに立っていた。


 背中を向けたまま、外を見ている。


「時間はあるか」


 振り返らずに言う。


 私は、頷いた。


 それで十分だった。


 椅子を勧められる。


 座ると、机の上に紙が一枚置かれているのが見えた。


 文字は少ない。


 場所。


 人数。


 期間。


 それだけだ。


「仕事だ」


 タケトシが言う。


 説明は、続かない。


 私は、紙から目を離さなかった。


 並んでいるのは、数字と短い言葉だけだ。


 危険の度合いも、成功の基準も書いていない。


 私は、指先で紙の端を押さえる。


 動かない。


「判断は、急がなくていい」


 タケトシが言う。


 今度は、こちらを見る。


「行かない選択もある」


 その言い方に、重さはなかった。


 脅しでも、誘いでもない。


 ただ、事実として置かれている。


 私は、紙を見たまま口を開いた。


「……これだけ、ですか」


「そうだ」


 短い返事。


「理由は、聞かないのか」


 私は、少し考える。


 聞ける。


 でも、聞かなかった。


「いまは、いいです」


 自分でも、意外なくらい静かな声だった。


 タケトシは、何も言わない。


 肯定も、否定もない。


 沈黙が、机の上に落ちる。


 私は、紙を折らずに戻した。


 触れただけだ。


 それで、十分だった。


「考えておけ」


 それだけ言って、タケトシは視線を外した。


 話は、終わりらしい。


 部屋を出る。


 扉を閉める。


 廊下に戻る。


 条件は、頭の中に残っている。


 言葉より、形として。


 私は、立ち止まらなかった。


 まだ、決める場所じゃない。


 でも。


 選択肢は、もう目の前にある。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ