始まり
俺は生まれた時から努力をしたことがない。
何をしても人並み以上。努力なんて必要なかった。
努力をしていればどんな人生を歩んでいたのだろうと今なら思う。
20XX年、東京。
俺は平凡なサラリーマン 林田洋平 35歳。
目的もなく生き、ただ仕事をこなしている毎日だ。
今は高校の同窓会に来ている。
「おっ!林田じゃねえか、久しぶりだな。」
「あんだけ優秀だった林田が今では普通のサラリーマンか。勿体ねえな。」
かつての友人は言う。
「お前が努力ってもんを知ってたら今頃国の重役にでもなってたんじゃねえか?」
そんなに言わなくてもいいのに。
自分が他の人よりも優れていた自覚はある。
今から努力しても遅くはないということは分かっているが、それでも楽な道を選んできたダメ人間が俺なのだ。
その後もくだらない昔話に花を咲かせできもしなかった過去の後悔を語り合った。
同窓会も終わり帰路につく。
横断歩道を渡っている途中近くに眩い光を感じた。
その刹那、身体が宙に舞う。
(これは死んだな…)
痛みを感じる間もなく意識が遠のいていく。
目を覚ますと見知らぬ世界が。
音もなくただただ静かな白い空間が広がっていた。
(あれだけ飛ばされたのに助かったのか?)
そう思ったのも束の間、自分の肉体がないことに気づく。
ここは肉体と精神が乖離した意識だけの空間であった。
(なんだ、これが死後の世界ってやつか。)
(つまらん人生だったな。次生まれ変わるならもう少し頑張ってみるか。)
しばらく過去を回想しているとどこからともなく声が聞こえた。
「死後の世界など本来は存在しないわ。貴方は特別に選ばれたのよ。」
優しい女性の声だ。
「私は転生を司る女神。別世界の天才を探していたところ貴方の死に気がついた。貴方にとってはファンタジーのような世界で人生をやり直すのよ。」
さっき死んだばかりになのにもう生まれ変わる話?
全く意味がわからないので女神に尋ねてみる。
「全然話が分からないんだけどさ、まずファンタジーの世界って何?転生ってこと?なんで俺なの?」
矢継ぎ早に質問してしまった。
「この世には様々な世界線が存在しているわ。貴方が暮らしていた世界もその一つ。貴方達の世界で浸透している異世界と呼ばれる世界がたくさんあるの。」
女神は淡々と答える。
「ある世界では一万年に一度の厄災が迫っているわ。貴方には人類の絶滅を阻止するべくその世界に召喚される。貴方が選ばれた理由は一つ、天才だからよ。他の人では考えられないほどのオーラを纏っているの。天才の証拠。さらに事故の最中に貴方からただならぬ想いを感じたわ。貴方なら世界を救えるかもしれない。」
理解が追いつかないがどうやら世界を救わなければいけないみたいだ。
「貴方は孤児院に預けられた生後間もない男の子の魂に乗り移る。災厄が起こるのは20年後、悪魔が作り出した異形が誕生する。それらを倒し悪魔にとどめを刺せば災厄は訪れないわ。貴方にはそれなりの力を与える。しかし1人では食い止められないはずよ。戦力を集めて災厄を食い止めてほしい。それでは健闘をお祈りするわ。」
意識が遠のいていく。
こうして何も分からぬまま俺の新たな人生は始まった。




