第5試合 乱入なんて許さない!
お待たせしました。
どれだけ不定期なのかと怒る人は是非感想にてお叱りの言葉をいただけたら。
「生意気な口利きやがって」
「レベル1の分際でレベル10の先輩プレイヤーに勝てると思ってんのか」
「お前、もう死んだぞ」
三人の男が武器を構えると、タイミングを合わせて同時に多方向から襲い掛かってくる。
うん、この連中は多数で一人と戦う方法に慣れているね、とある意味で感心していた。人間というものは多数対一の数的優位に立っていても大概はその優位性を活かせないことが多い。「卑怯者」「チキン」といった見栄がその優位性を邪魔する心理的ブロックが無意識に掛かるからだ。
だが、この連中はそういった躊躇は見られない。
「……ってコトはこの連中、日常的に弱い者虐めばっかりやってるんだね」
格上が格下相手に評判通りに勝利する……確かに定番であり定石でもあるが、それだけに客はその結果にちっともワクワクすることはない。
やはり一番ワクワクするのは大物喰いなのだ。
レスラーの場合、こういう時にどうするのか?
こういう時にただ受ける側に回ると、複数人からの攻撃を同時に受けることになり非常に不利に追い込まれてしまう。
だからこの場合での私が導き出す最適解は。
「ンなっ⁉︎こ、コイツ自殺する気かよっ?」
連中の一人、それも集団のリーダー格にコチラから向かっていき、瞬間的に一対一の状況に持ち込んで他二人に乱入されないウチに先制攻撃を叩き込む!
……するとこれからリーダーらしき男の剣を潜り抜けて拳を打ち込んでやろうというその瞬間、視界の端にウインドウが現れ、
『スキル発動の条件が揃いました。スキル〈決闘〉を発動します』
うん。何のコトかさっぱりわからない。
まあ、スキルが発動して私に悪い事が起こることはないだろうと判断し、そのまま男に突っ込む。
明らかに大振りすぎる剣を身体を捻ってギリギリの距離で避けると、ガラ空きになった隙だらけの防具のない喉を狙って地獄突きを放つ!
ちなみに地獄突きとは、空手の抜き手の形で相手の喉を攻撃する技である。
すると相手の喉の位置に「クリティカルヒット」の表記が現れ、地獄突きをマトモに受けた男は体勢をグラつかせながら悶絶していた。
私は流れるようにグラつく男の背後に回り込み、男の身体を盾にして他二人を牽制しながら、剣を持つ腕の手首を掴み、もう片側の腕の脇から私の腕を差し入れてから男の首の後ろを掴む……いわゆるハーフネルソンという体勢に固め。
「く、くそぉっ?な、なんだこの技見たことねぇ?〈格闘術〉ってただ殴る蹴るだけじゃねぇのかよっ?」
「格闘ってのは打撃の他に投げる、極める、その他色々あるんだよ、まだまだ勉強不足だったね坊や」
「くっ……そがぁぁあ!」
腕を固めた体勢のままブリッヂをして男を背後に受け身を取らせず投げていく、リストロック式ハーフネルソンスープレックス……通称キサラギスペシャルを放つ。
背後に投げる魅せ技ではなく、頭から落とす決戦用の投げ方で。
「ぐはあああああああっっ!」
それをズブの素人が喰らえばどうなるか。
答えは技を喰らった男が立ち上がってこない時点で男二人もキサラギスペシャルの威力がわかって貰えただろう。
だが、男は格上の相手だ。また意識を取り戻して立ち上がってくるかもしれない。
私は固めた腕を解いて、その場に倒れたままの男に対して後ろを向き、背後の倒れた男へ月面宙返りアタックを敢行する。
「1、2、3っ!」
職業病なのか、倒れた相手に自分で3カウントを入れていき、地面を三回叩いていく。
それがトドメになったようで倒れた男が光になって消えていく。
あれ?あと二人いたような気がしたけど。
ふと見ると倒れて消えていった男の仲間二人はこちらを見ながら何だかわちゃわちゃ動いていた。
その様子を伺っていると、どうやらこちらに来たいようだが、見えない壁が連中をこちらに来ることを押し留めているようだ。
ん?またウインドウに表示が。
『〈決闘〉スキルの効果で、対戦相手が格上のレベル時に限り一対一の特殊フィールドを形成し、あなたと決闘の対象以外は特殊フィールドに侵入出来ず、外から特殊効果を与えることも出来なくなります』
ちょっと最近乱入を多用されすぎている傾向があってのアンチテーゼです。
乱入は、元々シングルで通用する選手がヒールであることを強調するために使う手段であって欲しくて、乱入頼りの勝利やベルト防衛なんて見ていてストレスが溜まるばかりでカタルシスがないのです。