4:鳥皿鳥助
俺の名前は北岡勝、至って普通の高校生だ。
最近幼なじみの祐輔の様子がおかしい。
何やらずっと上の空だ。
その癖して頭の出来も運動も普段と変わらないときた。
……なんかムカついたからゲーセンにでも連れ出して事情を聞き出すとするか。
「よぉ、祐輔! この後時間空いてるよな? 空いてるな? よしゲーセン行くぞ!」
「えっ、ちょっと……」
__________
カタカタ……
「よっ!ほっ!!」
「……」
俺は思わず変な声が出るタイプだが祐輔は静かに操作するタイプだ。
『プレイヤー1!圧倒的な差をプレイヤー2に見せ付ける!プレイヤー2、ここから巻き返せるのかぁ!? 』
「フハハ!俺の勝ちだァ!!」
ここまで差を付ければ俺の勝ちだろう。
そう思って言ったのだが祐輔がニヤリと笑った。
「……それはどうかな?」
その一言を境目に祐輔の動きが変わった。
『おぉっとぉ!これまで一方的に攻撃していたプレイヤー1が一転!プレイヤー2の猛攻に防戦一方でぁ! どうする! この状況をどう切り抜けるプレイヤー1! 』
「あぁ、くっそぉ! 何だと!? 」
コイツ初心者だよな? なんであの技使えるんだよぉ! おかしいだろぉ! もう少し……もう少しなのに!
『プレイヤー2が押し切ったぁ!プレイヤー1!耐えきれずK.O!!プレイヤー2の勝利だぁ!!!』
俺の方の画面には『You Loss……』と表示され、祐輔の方には『You Win!』と表示されている。
あぁ~……悔しい。悔しいがとりあえず筐体を離れてから本題を聞くとしよう。
俺達はゲームの筐体を離れてベンチに座った。
「なぁ、祐輔」
空いた小腹を満たすために買ってきたパンとオレンジジュースを渡す。
「ん、ありがと。それで何だ?」
「彼女となんかあったのか?」
ジュースを一口飲んだ祐輔に直球で聞いていく。
もっとオブラートに包んで聞けって?ハッハッハ!
バカな俺には出来ねぇよぉ!!
「ゲホッゲホッ……突然なんだよ……」
「彼女持ちのリア充サマがぁ~?ここ最近暗くて気になったから聞いただけだよ。別に言いたくなければ言わなきゃいいけどさ……長い付き合いの俺には言っても良いんじゃないの?そう俺には!」
何を隠そうコイツの親と俺の親が仲良しなのだ。
その流れで息子である祐輔と俺は結構小さい頃から一緒に遊んでいた。
最近は祐輔に彼女が出来た辺りから一緒に遊ばなくなったかなぁ~……
「……まぁ、お前になら言ってもいいか」
祐輔は静かに語り始めた。
佐倉陽愛に言い寄られていること……そのせいで美月に避けられていること……
「このモテモテリア充サマめぇ! ……ん?“佐倉陽愛”……? アイツか。……いや待て、アイツ彼氏いたはずだぞ?」
「え?マジ?」
パンを全て食べ終え、美味しいお茶を飲みながら情報を思い出す。
「マジマジ。佐倉の付き合ってた奴は確か~……同じクラスアイツだよアイツ。え~っと……“女川”だったかな? 元々悪い噂が出回ってたからいずれ別れるだろうとは思ってたけど……やっぱ別れたか~」
『悪い噂』の辺りから祐輔の顔色が悪くなる。
「その……『悪い噂』っていったい何なんだ?」
「“麻薬を作ってるらしい”とか“人の弱みを握ってゆすってるらしい”とか“実はヤクザの家系らしい”とか後は~……」
「あとは?」
「“奴に薬を盛られた者は意識が朦朧とするようになり奴の奴隷のようになってしまう”……だっけな。そもそもこの情報が信頼出来るかは分からないんだけどな。うちの学校の番長どころか市内の不良はどこの勢力も逆らえないって噂だ」
「ッ!!」
その話を聞いた途端に祐輔は血相を変えて走り出した。……逃がしたら不味い気がする!
「おい祐輔ぇ!どうした!」
「実は聞いちまったんだよ……」
「何をぉ!? ってかちょっと待てって!」
こいつに本気を出されると俺が追い付けなくなるッ!
「俺がフられた日に……女川が美月をホテルに連れ込んだってのん……」
あぁ、美月が女川にね……って!
「不味いじゃん!」
「そうだよだから急いでんだよ!」
「そうは言うけどお前女川の家知ってんのか?」
そんな風に俺が聞くと祐輔は『あっ……』と声を洩らした。
やっぱり知らないか。なら……
「俺が案内してやるぜ!だがまずは作戦を立てるぞ!!」
__________
ゲーセンから一度俺の家に寄って作戦を立てることにした。
知り合いに調べて貰って分かったのだが女川家は代々ヤの付く一族だった。
そんな奴らから美月を助け出すのは困難を極める。
祐輔は「今すぐ突撃して美月を助け出す」とか言っていたがそんなことをすれば不法侵入で警察に突き出されるか奴に薬を盛られるだけだ。
「だから!女川家を失脚させるぞ!」
「どうやって?」
祐輔は若干イラついた顔でこちらを見てくる。
おぉ~、怖い怖い。
「ここに女川家を嫌う大黒家の電話番号と知り合いにチョチョイとハッキングして貰って手に入れた女川邸の建物図面があるじゃろ?」
「うん……うん?」
祐輔は『それがどうした』といった顔で見つめてくる。だがすぐに何かに疑問を持ったような顔をする。
何が引っかかったんだろうね。
いや~、俺には~分かんないや~。
まぁ、それはそうと……
「それをな? こうじゃっ!」
大黒家に発信!
ん~……出てくれるかな~……
お? 出てくれた。
「もしも~し。プレゼント気に入ってくれたかな? 」
『「気に入ってくれたかな?」じゃねぇ!あの図面を送ってきたのはお前か!? 』
大黒家の人が出てくれたのは良いんだけど向こうが騒がしいせいで彼が大声になっててうるせぇ……
「そうだよ。それで?感想は?」
『気に入ったなんてもんじゃねぇ! 大助かりだ! それで?あのメールにも書いてあったが貴様等も来るんだよな? 』
「あぁ、こっそり入れるようにしてくれると嬉しいな」
『分かった。俺達は表で騒ぐから貴様等は裏に行くと良い。そんでー……あ?何だ? …………』
大黒家の人が突然喋らなくなった。
「おーい?どうした?何かあったのか?」
『あぁ、悪い悪い。貴様等の話を聞いたカシラが装備を渡してやれってんで手配したぞ。女川邸から二番目に近いコンビニのセダンに積んでるから適当に漁ってくれ』
これはありがたい。情報はあっても装備が無かったから少し不安だったんだ。
「ありがとう。助かる」
『それじゃな。お前等も頑張れよ!』
彼はそんな言葉を残し俺との通話を終えた。
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「ここか?」
「あぁ、ここだ。実際来るのは初めてだが……聞いてた通りに馬鹿でかい豪邸だなぁ……」
俺たちは女川邸近くにあった林の木の上から迷彩マントを着て双眼鏡で屋敷を覗いている。
手配された装備には他にもあるがそれは実際に使う際に紹介しよう。
「なぁ、突入はまだなのか?」
どうどう、落ち着きたまえ祐輔クン。
「あぁ、突入は大黒家の連中が屋敷の電力を落としてからだ」
時間的にはそろそろのはずだが……
なんて考えていると屋敷の明かり一斉に消えた。
それを合図に屋敷の玄関方面が騒がしくなる。
「よっしゃぁ、俺達もぼちぼち行くとするか~」
「おう」
そう呟き俺達は木の上から降りた…………
「足首を挫きましたー!……なんつってな」
「何やってんだ?勝」
冷ややかな目で見られてしまいました……数秒前の自分を殴りたいッ!
「……何でもありません。さぁ、行こうぜ。お前の姫様を助けにな」
これで俺の株も上がる……はず!ってか上がれ!!




