交際とは煌めかしく彩られるものでありたい
煌彩
中野優弥
孤独。誰しも一度はこの感情を抱いた事があるのではないだろうか
美しく、儚く、自由であり不自由でもある。この感情との向き合い方は人それぞれだと思うがどうしてか僕はこの孤独という感情はいつまでも大切にしていたいと考えてしまう。
「優弥ー、今度バイト上がったらご飯でも行かない?」三度目の誘い。ほんの何気ない会話から始まった気がする。場所はバイト中だったコンビニ。
昼のピーク時間が終わり14時から15時にかけて掃除やら商品陳列をしている時に急に話かけてきたのを今でも覚えている。彼女の服に纏われる甘い強烈な香水の香りは話しかけて来た言葉よりも先に鼻に届き、バイト中に付ける量じゃねーだろ。一番最初にそう思った。
あんな始まり方だったけど後にも先にもそれ以上の時間はなくあの頃の記憶を鮮明に残したまま僕は明日も生きていくだろう。
東京の都心から離れた駅の近くのコンビニでも朝や昼のピーク時は来店する人の数は計り知れない。今でこそ慣れた手つきで会計や諸々の業務が出来るようになったが、初めは何が何だか分からず学業との両立が凄くきつかったのを覚えている。高校の頃は学業と部活の両立で忙しく、バイトなどしている暇はなかったため大学で初めてするバイトはみんながしてそうなバイトにしようと決めていた。幸いにも歳の近い女性が僕より一週間程早く入っていたらしい。歳は僕の一つ上で大学二年生だった。
聞くと地元は北陸県の小さな田舎町らしく、東京には進学で来たらしい。一年生の頃は学業と両立は厳しと思いバイトをせず仕送りのみで生活していたが流石にお金が厳しく感じてバイトを始めたそうだ。
一方の僕は東京生まれで東京育ちだ。バイトだって家から近いという理由でここに決めた。
菜摘先輩は歳の近い人がバイトであまりいなかったらしく、とても楽しそうに僕に話しかけてくる事が多かった。初めのうちは距離感が近い人だな、とか馴れ馴れしい人だな、と思っていたけど教えてくれる先輩だし歳も僕より一つ上だったから嫌そうな顔はせず僕もそれなりの営業スマイルで会話していたと思う。
僕は、人付き合いが苦手では無いが無理してまで話す意味なんてないと思っていたからこんなに毎日同じような一日を過ごしている中でも話すことが沢山ある菜摘先輩のことは素直に尊敬していた。
そんな、何気ない会話の中に面白い話があった。先輩は大学から近いここをバイト先に選んだらしく家はもう少し離れている所にあるらしい。一方僕は、家から近いという理由でここを選んでいるから大学はもう少し離れている所にある。偶然にも通っている大学が菜摘先輩が住んでる近くであまりにもすごい確率だねと二人して盛り上がった。思い返せばそこまで高くもない確率のような気もするが当時の僕らは似たような環境で同じ空間に居ることが嬉しかったんだと思う。
その時の話がきっかけで僕たちは話すことが増えた。大学近くの美味しいラーメン屋とかお気に入りの古着屋とかとか、とにかくたくさん。何気ない会話からいつも始まり何気ない内容の話でいつも終わる。当たり前と言えばそれまでだが当時の僕は毎日の何気ない日常、会話がとにかく楽しくいつまでも続いてほしいとさえ思っていた。
でも、人間はどこまでも欲深いもので最初は芽生えることのなかった感情が、日を重ねていくうちにそれは増していくばかりだった。
「菜摘先輩のことが好きかもしれない」




