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第7話 俺たちの戦いはこれからだ

「それではリディア様、ぼくはこれでお(いとま)いたします」

「あら、だめですわよルーク様。これからお父様のところへ一緒に行ってもらいますわよ」


 そう言えばブリュネ公爵もベルガー伯爵(おやじ)もまだ帝城に居るはずだ。

 でも今はブリュネ公爵とは会いたくないな~。面倒事が増えそうだし……。


「今は緊急事態ですよ」

「魔物は100kmほど彼方ですから、時間はたっぷりとありますわよ」

「ブリュネ公爵も、緊急対策本部に呼ばれているんじゃないかな」

「う~ん、そうかも知れませんわね」


 その時、「ガシャーン!」という大きな音とともにステンドグラスの破片が天井から降ってきた。


「防御シールド!」


 とっさに魔法を使ったが、うまく発動できてよかった。

 エレミー嬢の怪我をヒーリングで回復できたので、自分が魔法を使えることは分かっていたけれど、まだ不安があったんだよな……。


「ルーク様! 何があったのでしょうか?」

「外で誰かが戦っているようです。おそらく飛行タイプの魔物でしょう。ぼくは助けに行きますからリディア様は避難してください」

「いやです、わたくしもお供しますわ」


 魔物はすぐそこにいるから説得している余裕はないな。

 仕方ない……。


「それでは急ぎましょう」


 俺たちが帝城の外に出ると、50人ほどの衛兵たちが3匹のワイバーンと5匹のグリフォンを相手に戦っていた。というより、攻撃されていた。

 正直言って、ワイバーンやグリフォンはでかい。実物の迫力に圧倒されてしまいそうだ。


 まいったな……飛行系の魔物とはいえ、なんでこんなに早く帝都に来てるんだ?

 というか、なんで帝都なんだろう?

 魔物がピンポイントで帝都、しかもこの城を襲うなんてあり得るのだろうか?


 この状況を何とかしたいのは山々なんだけど、混戦状態だと通常の攻撃魔法は使いにくい。

 それなら大天使様にお願いするか……。


「氷結の天使召喚!」


 おお〜何という光だ!

 やはりこれはゲームではなく現実だ。

 目の前に神々しい光を放つ天使が舞い降りて来た。

 その(まばゆ)い光の洪水で魔物たちでさえ戦闘を中断している。


「て、天使が舞い降りたぞ!」


 ようやく衛兵たちが騒ぎ出す。


 氷結の天使はニコリと笑い、俺の頬にキスをした。

 えっ、なんで? ゲームと違う……。


「な、な、何をしているのですかルーク様! この状況で破廉恥な!」


 この状況なのに何故かリディア嬢が怒り出したが無視だ。


「誤解です。ちょっと黙っててください」


 俺は空中でホバリングをするワイバーンとグリフォンに向かって叫んだ。


「氷結地獄、ニブルヘイム!」


 氷結の天使はグリフォンに向かって氷の結晶で彩られた杖を向け、魔法を放った。


 それは一瞬だった――


 ワイバーンとグリフォンが完全に凍結して地面に落ちると、大音響とともに粉々に砕け散った。

 衛兵たちが呆気にとられている。


「「「うおーっ!!!」」」


 だが、衛兵たちはすぐに我を取り戻し歓声をあげた!


「ルーク様、これはどうしたことでしょう……」


 氷結の天使は俺をひとしきり抱きしめると、満足したのか光の粒になって消えていった――


 気まずい……皆こっちを見ているし、リディア嬢に至っては睨んでいる……。


 そうこうしている内に衛兵たちがわらわらと集まってきた。


「助けてくれてありがとな、 ぼうず!」

「ぼうずは召喚士か? 天使を召喚するなんて聞いたこと無いぞ!」

「ひょっとして宮廷魔導士だったりしてな」

「年齢的にそれはないだろ、わっはっはっはっ」

「宮廷魔導士でもあんな事できないんじゃないか?」

「そうかもしれない」


 衛兵たちに囲まれて逃げる機会を失った……。


「ルーク様!」


 えっ! 誰だ?

 一人の少女が衛兵をかき分けて現れた。

 それは紛れもなく聖女アンネローゼ様だった。

 後には二人の聖騎士が従っている。

 何故ここに居るんだろう?


「い、今の大天使はルーク様が召喚されたのですか?!」

「さあ? どうでしょう?」

「誤魔化さないでください。ルーク様が大天使に抱きしめられていたところを目撃しました」


 見たのかよ!

 一番警戒していた人に見られてしまった。

 面倒なことになりそう……。


「やはりルーク様だったのですね」       

「な、何がですか?」

「女神の使徒様です!」

「そんなことありません。聖女様の勘違いです」


 何言ってんだ、この人は……。


「使徒様だって……聖女様が言ってるのだから間違いない」

「「「使徒様とは知らず、大変失礼いたしました!」」」


 『ザッ』という音を立てて、衛兵たちが一斉にその場で跪いた。


 どうにかこの場を誤魔化せないだろうか?


「せ、聖女様、緊急対策会議に出席しなくてもいいのですか?」

「わたしは魔物退治の素人なので、出る幕はございません」

「そうですか……」

「現在、商業都市アンカードが魔物の集団に襲われています。ぜひ、お助けください」

「ちょっと待って下さい。ぼくは女神の使徒ではありませんし、そんな力はありませんよ」

「先程の天使召喚をなかったことにしろと仰るのですか?」


 誤魔化しようがないか。

 うまい言い訳が考えつかない……。


「いいではありませんかルーク様。アンカードへ行きましょう。そして実績を上げるのですわ」

「いえ、ぼくはまだ死にたくないし……」


 俺のチート・ステータスならば死ぬことはないだろう。

 だが、大勢の人々を救いながら戦うのは難しいと思う。

 魔物たちは広範囲に散らばっているだろうから殲滅魔法が使える場面は少ないだろう。

 だが待てよ……今みたいに天使たちを召喚すれば可能かもしれないな……。


「「「使徒様!」」」


 お前らまだ居たのかよ! 衛兵たち、うざい。


「ふふふ、わたくしのルーク様」リディア嬢が左腕に絡み付き。


 だから身体強化魔法はやめい!


「女神の使徒様……わたし達は貴方の下僕(しもべ)です」聖女アンネリーゼ様と二人の聖騎士が俺の前に跪いた……。


 勝手に下僕にならんでいい。


「分かった分かった。アンカードへ行こう!」


 そうだ、俺は日本から転生したチート野郎だからな!


「「「ありがとうございます、使徒様!」」」


「とほほ……」


 こうして俺達は魔物のスタンピードを阻止するために、アンカードを守るために、100kmの道のりを踏破することになった。


予定通り、全7話で完結することになりました。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。


面白いと思っていただけたなら☆で評価をお願いします。

次回作もがんばります!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 物語としてはまだ序盤みたいな感じなのに、ここで終わッているのが残念です。ストーリーがおもしろそうだし、「女神の使途」のスペックや能力がどんなものか興味がありますね
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