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7月~夏休みはもうすぐだ(2)~

「えっ、亡くなったって…」

「交通事故とかですかっ」

 沙維香も拓巳も驚いた。

「学校の階段から落ちたんだよ」

 その言葉に、二人は驚愕。

「私、学校で事故があったなんて初耳です」

「当時は、騒がれていたけど、10年前のことだから覚えてないか」

「その頃は、幼稚園児でした」

「その人、いじめられていたとかじゃないですよね…」

 拓巳が確認するように言う。

「図書部内ではなかったけど、クラス内とかは分からないな。学年が違うし、部活以外で会うことはなかったからね」

「ということは、いじめっ子に階段から突き落とされたっ…」

「それは違う」

 幸子はあっさり否定した。

「私は見てないけど、足を滑らせて階段から落ちたんだ。これは、大勢の目撃者がいるから確実なことだよ。この件については終わり。取材の途中だったね。続きから始めよう」

 二人は納得してないようだが、幸子から「この話しは終わりだっ」という雰囲気が伝わり、次に進む。


「図書室業務は、図書委員会と相談するとして、他に活動してましたか?」

「図書部の有志たちで、図書館祭りの手伝いをしたぐらいかな?」

「図書館祭り?」

「毎年、文化の日に南八王子図書館で行われているんだけど知らない?」

「他の地域の図書館でも行われてますね」

「僕は地元だけど、知らないなぁ…図書館自体そんなに行かないからかな」

「南八王子にまつわる人の講演をしたり、子供相手に読み聞かせや紙芝居を披露していた」

「阿部さんたちは、どんなことを?」

「図書館祭りの案内や受付、それに職員たちと協力して『小学生におススメする本の紹介』もやっていたね」

「羨ましいです。何故、やらなくなったのですか?」

 気になるのか、沙維香が前のめりで聞いてきた。

「あくまで図書館祭りの手伝いは、有志だからね。私も参加したのは、中等部の頃だけ。手伝わない年が続いて、そのまま自然消滅」

「もったいないです…」

「でも、小野さんのお母さんの頃は、図書祭りだったんでしょ。ノートにも書いてあるよ」

「それなら、先輩から聞いたことあるな。市民と交流するために、図書室祭りをやっていたと。まぁ、市民といっても、来ていたのは園児や小学校低学年の子供が多かったみたいだけど」

「なくなった理由は分からないですよね…」

 沙維香が聞いた。

「先輩が言うには、当時の先生や生徒が、校内に子供が入るのを嫌ったとか。詳しいことは先輩から聞いた方がいいよ」

「そうします」


「次の取材相手って、決まってないよね?」

「今のところは…」

「だったら、紹介したい人がいる。私が入部した頃の部長。門倉(かどくら)浩太(こうた)さんというんだけど、お姉さんも図書部員でね。この二人に聞けば、小野さんのお母様が卒業してからの活動について知ることが出来ると思うよ。連絡も私からしておく」

「それじゃ、次で取材は最後か…」

 拓巳は安堵した声を出した、

「八橋さんといい、阿部さんといい、みなさん良い先輩ばかりです」

 沙維香が感謝するように言う。

「一つお願いしてもいいかな?」

「何でしょうか?」

「次の取材、私も同席していいかな?」

 意外な幸子のお願いに、二人は戸惑った。

「かまいませんが…」

「取材を受けてて、気になったことが出てきてね。この際だから、先輩に聞いてみようかと」



 幸子の取材から、翌日の放課後。沙維香と拓巳は、新聞部の部室にいた。

「拓巳だけじゃなく、小野さんまで…珍しいな」

 一寿が引き出しを開けながら言った。

「気になることがあったんです」

「これが、10年前の新聞だ」

 一束を渡される。この中に、目当ての記事があるはず。

 二人で探し続け、その記事を見つけた。1番最後のページに小さく書かれていた。

「あぁ、階段から足を滑らせて亡くなった生徒か…頭の打ち所が悪かったんだよな」

 一寿がひょっこり顔を覗かせて言った。

「そう聞いています」

「その人がどうかしたの?」

「図書部の部員だったんだよね、この人…だから、気になってさ…」

 次の号では、担任や仲が良かった生徒のお悔やみの言葉が載せられていた。

「皆さんから愛されていたのが分かりますね…」

「うん…」

 要件が済んだ二人は、新聞部の部室を出ようとして、一寿に声をかけられた。

「夏休み、予定ある?」

「夏休み?」

「忘れたのか。来週から夏休みに入るんだぞ」

「あぁ、そういえば…」

 図書部の活動が忙しく、夏休みがあることを忘れていた。

「今年も、みんなでプールいかね?」

 昨年、裕太や岡部たち、クラスの男女数人とプールに遊びに行った。

「行こうかなぁ」

「小野さんは?」

「えっ、私もですか!?」

「せっかくだからさ。予定があるなら無理しなくていいから」

 沙維香は少し考え込んだものの、

「お盆休み前なら予定がありませんので、行けると思います」

 と返事をした。

「よっしゃ!」

 一寿が嬉しそうな顔をする。

 拓巳は、プールよりも次の取材のことを考えていた。

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