1. レベッカの回想
本日よりコツコツ新作投稿します!
全50くらいで納めたいな…という気持ちです。
お付き合いいただければ幸いです、よろしくお願いいたします。⋆࣪ ⟡
そもそも私はこの男のことが好きではなかった。
明らかに私のことを顔と家柄でしか見ておらず、父や母のいる前では如何にも紳士的だという振る舞いをするものの、私と二人きりになると、女性を見下していることがわかる発言ばかり。
隙があれば、
『婚約してるんだからいいだろ?』
とかいうくだらない発言のもと体の関係を迫ってくる始末。
それでも私がこの男との婚約を我慢していたのは、我が国の法律に理由があった。
この国では、家督の相続が男児にしか認められていない。
加えて私の母は体が弱く、私を一人産んでからは、もう子供を望めない体になってしまった。
父の親族から心無い言葉を投げかけられることもあった母のためにも、父の見つけてきたこの男と婚約し、無事に家督を継げるように、少しのことはすべて飲み込んできた、のだが。
ある日──その日も、この男は私の体に手を触れようとしてきてた。
しかしながら、予め言い訳をすると、その日の私はとても機嫌が悪かったのだ。
私の中で何かがぷつんと切れる音がして、その直後、気づいたときには、私はこの男の大事な部分を、思い切り蹴りあげていた。
蹴りを入れられた男が悶絶している瞬間に、これはまずいと慌てて逃走し、その日のうちに、兼てより婚約を破棄しようと集めていた男の愚行を、これでもかと言うほどに父に並べ立て、その日のうちに婚約破棄まで持ち込んだ。
本当に危なかった。
こちらの過失で終わらなくて助かった。
そして、その一連の話を聞いた母は───卒倒していた。
が、立ち直ってすぐにこう言った。
「そ、そうなのね…。ごめんなさい、あなたにそんな我慢をさせていたなんて…」
「…お母様、申し訳ありません。だからですね、私は、」
「でも、この国では男性しか家督を継げないでしょう?」
「…そうですね。でも、だから私は、」
「だからね、新しい婚約者のことなんだけど、私の方でも探して見るから──」
「お母様!!」
母に向かって声を荒げたのは、あとにも先にもこの日が最後だろう。
「お母様、申し訳ありませんが…私は絶対に、何がなんでも、もう二度と、婚約なんていたしませんわ!!」
────────────────
そんな出来事があってから、かれこれ3年くらいが経ったと思う。
私は今、家を出て、家名を隠し、見た目までも変装して──なんやかんやとあった上で、王城の文官として働いている。
当然のようにあの後は、父も巻き込んだ大騒動になったのだが…
父は母を愛していたし、子供のために愛妾を取るなんてことは考えていなかった。
そのうえで、私にどうにかまた新たな婚約者と結婚して家督を継ぐように説得してきた。
のだが、私も私で誰に似たのだが、そんなことで折れるわけもなく。
婚約するくらいなら、父の親戚筋から誰かを養子にして跡継ぎにしてほしい──家と縁を切ってでもいいから、婚約はしたくない、と。
大啖呵を切った上で、その日の夜に家出した。
今考えると、あまりにも力技過ぎたと思う。
そもそも私は、母譲りの儚い美人系の見た目の割に、中身はどちらかというと、父譲りの頑固でわがままな性格だと思う。
見た目のこともあってか、幼い頃から、見た目で寄ってくる男性達に嫌な思いも沢山させられてきた。
そのせいもあってか、私は、決められた相手と婚約するのではなく、自分のやりたい道を自分で切り開きたい。
そして出来ることなら、男児しか家督を継げないなどというくだらない法を変えてやりたい。そう思っていたのだ。
父と母には育ててもらった恩があるし、家の相続については申し訳ないことをしたと思う。
ただ、あのまま家にいても仕方がない。
自分の人生、後悔がないように生きたいのだ。
置き手紙だけを置いて家を飛び出し、なんやかんやと今に至る。
がむしゃらに自分で人脈を繋いでここまで来たが、あの家にいた頃よりとても楽しい日々だったと思う。
そして今も、我が家──ブランシャール侯爵家にいた頃より、ずっと充実した日々を送っていた。
───では、なぜこんな話を急にしたかというと、今日、王城で思わぬ話を耳にしたからだ。
『ブランシャール侯爵家のご令嬢が、ついに結婚したらしい、と』
…怖すぎる。
ブランシャール侯爵家のご令嬢、もとい私は、数年家にも帰らず、家出をしてここにいるのに…?
全く思い当たることがないんですが…!?




