二章 子供達の逃走
落ちてくる白。それがカイが立っていた場所の頭上にある外付けの階段の踊場から勢いよく落ちて来る人間だと気づき咄嗟に抱き留める。
衝撃に一瞬、カイの息がつまり、勢いと重さで体勢が維持でずに傾いてしまう。
華奢に見えて案外重い。
抱き留めた時、咄嗟に感じたのはそんな違和感。
スローモーションに動く景色の中、飛びこんできた人間の見開いた瞳が宝石みたいに綺麗だなと、場違いな感想が浮かんだが次の瞬間には上から降ってきた人物諸共まともに地面に転がってしまった。
不幸中の幸いは高さがそこまでではなかったことか。
いや、それでも人一人支えるのは無理だったし身体は普通に痛い。
痛みをやり過ごすカイの上で白が動く。このコロニーにおいて違和感しかない白いワンピース。少し離れた場所ではつばの広い帽子が転がっている。
日焼けのない肌は病的なまでに白い。総合的な情報からみれば良家の子女にしか思えないが。
(連絡があった不審者のひとり、だよなぁ)
そしてこんな格好の子は大抵。
「おい!いたぞ!」
追手がいるのが相場である。
見上げるとこのコロニーでは見慣れない空気を纏った男達が数人。
大人と子供。この場面で誰に肩入れするかと言うと。
素早く通信機のボタンを決められた間隔で3回押す。これで少なくとも保護者には何があるとは伝えられる。
「立てる?」
追手の姿に強張る青い瞳に一足先に立ち上がったカイの差し伸べる手が映る。
一瞬、迷うような素振りを見せたが罵倒めいた追手の声が近寄ってくる気配に痩せた手を伸ばした。
カイは子供だ。体格も小さいし喧嘩が強い訳でもない。大人数人相手では手も足もでない。
だが相手にはない地の利。そしてすばしっこさと悪知恵ならある。
縋るようなその手を強く握ったカイはそのまま立ち上がらせると追手に背を向け二人揃って走り出した。




