1:どうやら死んだようです。
「うん、綺麗な星空だね。周囲一面色んな星が見える。うん、地球も・・・・」
俺は周囲を見渡して、そのように言葉を述べた。 実際には殆ど現実逃避だが・・・それ以上の言葉は出したくなかった。
何故かというと、真っ暗な夜空?いや、空間?・・・周囲にはキラキラと瞬く星が辺り一面に広がっている。その空間に、俺、一条 響は居た・・・というより漂っていた。
そして、今現在俺の目の前には・・・とんでもない状態、いや・・・今迄見た事が無い生物が二体、目の前に存在している状態に陥っていたのだ。
それはまさしく空想上でしか聞いた事が無く、また本物などは見た事もなかった。しかも、その様な生物がこの世の中に存在したという記録やらも残ってないし聞いた事も無い。
実際その生物が・・・今、間違いなく俺の目の前に居て、俺を見下ろしているのだ。
はっきり言って、俺が生きてきたこの長い人生の中で、こんな鬼気迫る境地に陥ってるのは初めてである。
当然、この状況が尋常でなく非現実的な事が起きているというのは、アホな俺でも十分理解できる事だが、そんな事を深く考えられる余裕は無い。
それで今、俺の目の前に居る生物の正体とは、まず一体は全身が真白く蒼白いオーラのような光を放っている恐竜?いや竜が正解かな?それともう一体は全身が紅い炎の様なオーラを纏った怪鳥?なんとなくではあるがおとぎ話で出てくる火の鳥みたいな巨大で綺麗な鳥で、まあ普通に考えたら鳳凰かフェニックスとでも言ったらいいのか解らないが、そのような不思議な生物二体が俺の目の前で、見下ろす感じで存在している。
若干居心地が悪いが、何故かその二体の綺麗な瞳で見つめられていると・・・不思議と恐怖よりも安心感を覚える。
それにその瞳をジッと見ていると吸い寄せられそうな感じになり、何故かとても気分が落ち着いてくるのだ。普通ならその場で慌てるか気絶していてもおかしくない状況なのだが、そんな気も起きない状況なのだ。
しかし、何故だぁ?俺は仕事をサボリ温泉街に来てた筈だ。確かそこで地震か何かが起きて・・・たまたま一緒の宿にいた中学生くらいの少女2人を助けた出したような?・・・それでその時に変な光の輪が空に現れ、その後周囲が光に包またような?・・・あれ?それからどうなったんだ。それにあの娘達と周りにいた人達は?
そんな事を冷静に考えながら、目の前で起きてる事は完全に現実逃避していると、その不思議な生物達は俺の事を心配しながら突然声をかけてきた。
『人間の子よ!いや、一条 響よ。大丈夫か?もし大丈夫で正気なのなら我はお主に頼みたい事があるのだが・・・』
いきなり声と言うより耳の側・・・いや、頭の中で直接話しかけられたような感じで聞こえて来た。
『あらエナジー!それはずるいわよ。私もヒビキにお願いがあるのですから、それにいきなり話しかけるとヒビキが驚きますよ。現にホラッ!』
白いドラゴン?の方は渋い男性の声色で語りかけてきて、赤々とした燃えるようなオーラを放つ火の鳥?フェニックスの方は、優しそうな女性のような声色で語りかけてきたのだ。
その語りかけに対して当然冷静に答える事も出来ないが、何故?目の前にいる不思議生物の二体が、自分の名を知っているのかという事と、ここがどこなのかに対して全く思考が追い付いて来ない。
その事に若干パニック状態で目を白黒させていると、白いドラゴンの方が俺の様子に気が付きもう一度、今度は気を使いながら解り易く語りかけてきてくれたのだ。
『まあ待てフレイヤよ。まずは今の状況と我らの事を説明して話さないと、どうもヒビキが混乱しているようだ。さてヒビキよ、我は最も古き竜であるエンシェントドラゴンのエナジーと言う。まあ簡単に申すと古神竜と言われているがな。それとこやつは、エルダーフェニックスのフレイヤだ。解っていると思うが我らはこの世界では存在すべき者ではない』
そんな若干混乱していた響を気遣い、現在の状態を確認した白いドラゴン、古神竜のエナジーが自分達の事を詳しく説明してくれた。
それでも俺には納得できる状況でもない。ただこの場で思える事は・・・うん、夢だな!なんともリアルな夢だ!
そう考える事しか出来ない状況なのであるし、これ以上悩むとおかしくなりそうな感じであった。
『もう、エナジーは紹介が雑なのだから。ヒビキ、私は先程エナジーが言った様に最も古き鳳凰、鳳凰神であるエルダーフェニックスのフレイヤよ。私の事は気兼ねなくフレイヤと呼んで頂戴。それで私達はこことは違う次元の世界にある幻獣界の住人なのよ。それで申し訳ないけどここで会った貴方に私達はお願いしたい事があって、あなたの魂をここに引き止めたの・・・』
とりあえず目の前にいる生物は、どうやら間違いなくドラゴンとフェニックスの様なのであるが、どうもそんなたやすい様な方じゃないようだが・・・そこは気にするまい。
それよりも何故、その様な只者でない生物達が自己紹介をしてくれたうえに、平凡で何の取り柄も無い中年である俺の名前を知っているのかと、そんな俺に対して何をお願いしたいのかが解らない。
それでも俺はこの不思議な事を混乱気味で夢だと思いながら・・・半分以上はどういう事か理解できない状態だ。だが別に声をあげるて驚くような事ではない。
それに目の前にいる不思議生物も、そうなのだが今俺が存在している空間を、詳しく良く見てみると・・・既にそれ自体がおかしいと思える状態だ。
うん、やはりとてもリヤルな夢だなぁっ・・・と俺は思っている。
何故この空間がおかしいかと言うと、ここは間違いなく地上じゃない、どうやら宇宙空間みたいだ。それに俺達が居る場所の足元には間違いなく青い星である地球が、それに月と太陽も一度に見れているのだ。
てか、俺?・・・宇宙空間にいて息が出来てるよな?うん、苦しくないな。これは夢だな間違いない。
自分でこの状況はおかしいと理解して、これは夢だと考え・・・そう思う事にした。
だってどう見ても現実とは思えないからである。
しかし、目の前にいる古神竜であるエンシェントドラゴンのエナジーが、響の思いと考えを心を読んで否定してきたのだ。
『それでヒビキよ。納得したところ悪いが、これは夢ではないぞ。それにお主は・・・そのなっある事に巻き込まれ死んでしまったのじゃ。・・・いや、まあ殺されたと言ったほうが正解じゃな。その証拠に、ほらっもうお主の身体はここには無い』
しかもエナジーは、響に対して殺され死んだ事と身体が既に無い事を説明してきたのだ。
はっ、何を言ってるの?ますます訳が解らん。それに俺ここで生きてるじゃんか・・・ああ、やっぱり夢だから・・そうなのか? やけにリアルだけど恐らくそうだろう。うん、そうに違いない・・・。
そう思いつつ自分自身の身体を確かめたが・・・それらしい物が見当たらない?というより触れない?意識ははっきりしているのに・・・それに手足とお腹が見当たらないのであった。
その様子を見ていた鳳凰神であるエルダーフェニックスのフレイヤは、優しく響の方に視線を向け語りかけてきた。
『あらまあ、可哀想にヒビキ!よほど酷い目に会ったのね。まだ理解が出来ないで混乱して思考が追いついてないみたいですね。まあ、確かにそうですね。あの様な惨劇でしかも無残な状態では・・・。それに、あの星の馬鹿共が見境無くあの者達と我が娘達を無理やり召喚したために、それに巻き込まれて死にましたからね』
「・・・・・・」
自分の死んだ状況を説明されたが、今だ自分が死んだ事に納得いかない響であった。