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武器武器ギミック  作者: スペクトラム


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20/20

死は常に纏わりついている

死は常に纏わりついている。

橘湊が脱走した日のことだった。

空は赤い。

満月に照らされた街では、あちこちから悲鳴が響いていた。

骸が人を襲っている。

いつものことだった。

湊は牢の中で天井を見上げる。

「今日は満月ですかぁ」

どこか他人事のような声。

外から聞こえる悲鳴にも特に反応はしない。

「賑やかですねぇ」

そう呟くと、自身へ巻き付けられた不変の鎖へ視線を向けた。

そして。

斬った。

実際には何も持っていない。

だが湊は自身の能力で、鎖へ"斬った"という概念を押し付ける。

甲高い音と共に鎖が断ち切られた。

自由になった両手を見て満足そうに頷く。

「散歩しますか」

人差し指を扉へ向ける。

「バン」

乾いた声。

次の瞬間、檻の鍵が砕け散った。

ゆっくりと外へ出る。

赤い空。

赤い血。

そして。

一本の刀。

骸の王。

満月の夜に現れる史上最悪の武器。

湊はそれを見つけると首を傾げた。

「あー」

思い出したような声だった。

「これを壊す為に僕が生贄になるんでしたっけ」

少し考える。

そして結論を出した。

「逃げますかぁ」

踵を返す。

だが。

数歩進んだ所で足を止めた。

周囲を見回す。

光の壁。

既に結界は完成していた。

逃げ場は無い。

湊は困ったように頬を掻く。

「二分間の鬼ごっこですかぁ」

骸の王は無言だった。

ただ殺意だけが向けられる。

湊の奥の手には条件がある。

自身の半径二十メートル以内に二分間。

その条件を満たした相手を一つだけ選び、概念ごと断ち切る。

だが発動後は再び二分間の待機時間。

強力だが隙も大きい。

だから。

生き延びなければならない。

二分間。

一分三十秒。

湊は既に満身創痍だった。

腕は裂け。

脇腹は抉れ。

血が止まらない。

それでも笑う。

「あと少しですねぇ」

骸の王が刀を振るう。

避けられない。

鋭い刃が心臓を貫いた。

湊の身体が崩れ落ちる。

視界が暗くなる。

それでも最後に口元だけが動いた。

「あーあ……」

血を吐きながら呟く。

「予約……設定……」

そして動かなくなった。

死んだ。

誰が見てもそう見えた。

骸の王も例外ではない。

結界が消える。

最悪の刀は興味を失ったように去っていった。

静寂。

三十秒後。

死は常に纏わりついている。

選択は既に終わっている。

死が断ち切られる

心臓の傷が塞がる。

血が逆流するように戻っていく。

止まった筈の鼓動が再び鳴った。

湊は勢いよく起き上がる。

「さーて!」

大きく伸びをする。

「解放っと!」

先程まで死んでいたとは思えない笑顔だった。

周囲を見回す。

そして最重要事項を思い出す。

「プリン食べたいです!」

満面の笑み。

橘湊はそのまま夜の街へ消えていった。

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