武供
「屋根があるって良いですね!」
橘湊は心底嬉しそうに天井を見上げた。
その様子に、火ノ宮楓は深いため息を吐く。
「気楽なのやめてくれる? こっちは殺してでも捕らえる予定だったんだから」
「殺せば良かったじゃないですかー」
湊は悪びれもせず笑う。
「殺そうとはした。でも無理だったから今こうなってるの」
「奥の手を使えば勝てたでしょ」
楓の視線が僅かに鋭くなる。
「…………ふーん。分かってたんだ」
「その刀、良いですよね!!」
話題を変えるように湊が楓の腰の刀を指差した。
楓は一瞬だけ黙り込む。
「私が持つべき物じゃないけどね」
「確かに!!」
即答だった。
楓は額を押さえる。
「やっぱり殺せば良かったかな」
「その刀は人間が持って良い物じゃないですよ」
妙に真面目な口調で湊が言う。
「まぁ、否定はしないけど」
楓は肩を竦めた。
「アンタを殺して武器を作れば、似たような性能になるんじゃない?」
「ブラックジョークが過ぎますよー」
「武供の最高傑作として生まれた自分を恨めば?」
「いーやーでーす」
湊はぶんぶんと首を振る。
「生贄なんて真っ平ごめんですから」
楓は頭を抱えた。
「あー……なんてあの女に説明しよう」
「失敗しちゃった! で良くないですか?」
「舐めてんの?」
即答だった。
「バレたら絶対アイツを仕向けてくるわ」
「僕の心配ですか! 嬉しいです!」
ぱっと顔を輝かせる湊。
楓は机を叩きそうな勢いで叫んだ。
「私の心配!!」




