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緊張の瞬間

駅には希ちゃんの姿が。

「待った? 」

「ううん今来たところ」

希ちゃんがいた。うん確かに希ちゃんだ。でもそれ以上の感想はない。

俺たち二人のはずがなぜか希ちゃんがいる。

偶然ばったりではないのでこれは奴によって謀られたことになる。

道理でいつも以上にハイテンションでそわそわしていた訳だ。

何かあるとは思ったけどまさか…… 

二人っきりの買い物が一人増えても別にいいのだが奴の勝手が許せない。


「俺帰る! 」

子供っぽいやり方でごねてみる。

「おい待てよ! 何で帰ろうとするんだよ? 」

必死に止める陸。もう意味が分からない。

話が違うと問い詰めるがただ感謝しろと言うだけ。

人のことなどまったく考えない自分都合の陸にはいつもながら苦労させられる。

まあこれくらいどうと言うことはないがどうしても奴の思い通りにさせたくない。

俺にはそう言う頑固なところと器の小さなところがある。

当然自分で器が小さいと言ってる奴はもちろんそんなことはなくて……


「もしかして希ちゃんも買い物? 」

陸のせいでケチが付いたので改めてやり直すことに。

「うん。一緒に行こうって…… 」

どうやら勝手に人数を増やしやがった。

何が二人で買い物に行こうぜだよな。こんな格好で来ちゃったじゃないか?

希ちゃんが来るって分かってたらもう少しお洒落な服にしてたのに。

あれでもおかしいな? 希ちゃんが来るのは奴は当然知っていたんだよな?

ならばなぜ派手派手のダサい服を着て来たんだ? ズボンだってシミ付きだし。

しかも靴だっていつものだし。奴の考えることがちっとも理解できない。


「ちょっと待っててね希ちゃん」

失礼のないように断って奴と話し合う。

「どうして連れて来たんだよ? 」

心配そうに見つめる希ちゃん。俺が怒ってるとでも思ったのだろうか?

事実そうだけどそれは奴に対して怒ってるだけ。

決して機嫌が悪いとかそう言うのではない。


「サマー部だろう? 」

「そうじゃなくてさ…… 」

「いや俺が誘ったんだ。そしたら二人きりだと嫌だからって」

そんな風に笑っているこいつはどうかしてるぜ。

普通は二人きりだとまずいからと断るはずだ。実際希ちゃんも断った。

でも奴は諦めきれずに俺を。俺を連れて行くと。

もう嫌われてるんだから諦めろよな。実際に嫌だと言っているじゃないか。

言葉の捉え方とかそう言うレベルではない。

思いっきり拒絶されてるのになぜ無駄な努力をしようとするのだろう?

その努力を認めない訳ではないがあまりにも空しいし悲しい。


どうする? ここで大人げなく本当に帰れば希ちゃんに嫌われるかもしれない。

「分かったよ。でも他には隠してないな? 」

「当たり前じゃねえか! 」

うーんかなり調子に乗ってるな? これはまだ何かありそうだ。

でもせっかくだから楽しむとしよう。

こんな風に女の子と一緒に買い物をするなんていつ以来だろう?

まったく記憶にないから初めてだったりして。

「ごめんね希ちゃん。一緒に行こう」

こうして三人で二駅先のショッピングモールへ。


「ねえ今日は何を買う? 水着はやっぱり派手なのがいい? 」

しつこく質問攻めの陸。いつも通りではあるが興奮してどうかなってるかも。

うわ…… それにしても恐ろしいほどのセクハラ野郎。

確かに一緒に買い物するんだろうけど。

希ちゃんが水着を買う訳ないだろう…… まずい想像したら鼻血が出そうに。

車内でとんでもないことを聞く非常識人間。同類だとは思われたくない。

希ちゃんがいなければ笑って済ますがそうもいかない。

そう言えば奴は希ちゃんに告白するって言ってたがもうしたのかな?

どうせ振られるんだからどうでもいいけど。


電車で十分。ゆっくり話す間もなく到着。

こうしてショッピングモールへ。

駅からすぐなので便利だ。

うん? 再びの不審な行動。

「どうしたトイレか? 」

「ああそうなんだ。ちょと行って来るわ」

本当にトイレだったみたい。少し悪いことしたかな?

柄にもなく緊張してたりして。

大丈夫。心配しなくても振られるから安心しろって。

そもそもそのセンスでは女は寄って来ない。


「ねえまず何を見ようか? 」

「ああ食いながら決めようぜ」

あいつがトイレから戻って来るまで暇と言うか落ち着かない。

俺って根本的にこう言うのが苦手なんだろうな。

だから俺は希ちゃんを誘わなかった。

そう言えば希ちゃんは俺をどう思ってるんだろう?

珍獣の飼い主だと思ってるのかな。


「あの…… 」

「私…… 」

つい緊張して同時になってしまう。

「そっちからいいよ」

「ううん。どうぞ」

希ちゃんはよく話を聞いてくれる。俺のつまらない話も奴の意味不明な話も。

笑ってくれるからつい誤解して話し込んでしまう。

でもそれは学校の中で部活の時だけ。外で会ったらそうはいかない。

あの何とも言えない空間が心地よい。だからつい話し込んでしまう。


「今日は何で来る気になったの? 奴の誘いなど断ればいいのに」

まずい。おかしな質問をしてしまう。これだと俺は性格の悪い奴になってしまう。

違うんだ希ちゃん! 俺は君に! 君に! 笑ってもらいたいだけなんだ。

「そんなことできないよ」

希ちゃんは優しいからな。その優しさにつけこむ奴が許せない。

それにしても奴は遅いな。先に行っちまうぞ。その上先に食っちまうぞ。


「もう置いて行こうか」

「うん」

そう言って互いに意識せずに手をつなぐことに。

別に構わないよな? 俺たち同じ部活の仲間だし友だちだもんな。

ふう…… それにしても暑いな。もしかして希ちゃん緊張してる? 


                  続く

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