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国外追放されたマッドサイエンティスト、何を血迷ったか世直しを始めてしまう~狂科学者のオリジナル武器無双~  作者: 日和崎よしな
第2章 剣聖ホーリスと風の射手アルチェの救国

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第84話 八方塞がり(アルチェSide)

 アルチェの目に映るエルフの里は、いわば戦場だった。


 もっと地獄絵図のようなものを想像していたが、エルフの民は意外と善戦していた。


 エルフの里は排他的ゆえに防衛の備えはしっかりしていて、ほとんどの民が戦いの心得を有している。

 男女ともに全員が弓を使いこなすし、一部の男は剣も使う。


 里内には凶獣ドギーと凶獣ビルダの死体が散乱していた。


 倒れているエルフの民はひとりもいない。


「間に合ったみたいだな。すぐに加勢しよう」


「うん!」


 ホーリスはアローゴを先に帰らせ、すぐに剣を抜いた。


 アルチェもエアバイク改を木の横に停めて背負っていた弓を手に取った。


 善戦しているといってもギリギリ持ちこたえている状況である。


 エルフの民がまともに渡り合えるのはビルダ族とドギー族とせいぜいコンダ族くらいで、ベアル族、ティゲル族、リノセロ族が相手では歯が立たない。


 歯が立たない3種だけかぞえると、里内には凶獣ベアルが2頭、凶獣ティゲルが1頭、凶獣リノセロが1頭いた。


 凶獣ベアルの1頭は里長が剣で牽制している。


 凶獣リノセロは弓を持つ男が建物に被害が出ないよう引きつけて逃げ回っている。


 残りの凶獣ベアルと凶獣ティゲルは広場の中央でディーアが相手をしていた。

 彼女はその2頭に対して交互に剣を向けて威嚇している。


 ディーアはあとずさりしていたが、噴水の縁にかかとをぶつけて足を止めた。


「くっ、ここまでか……」


 2頭の凶獣はまるで息を合わせているかのように同じ歩幅でディーアににじり寄る。


 ランク1stの勇士でもその2頭を同時に相手するのは無理というもの。ましてやディーアはランク2ndである。

 絶体絶命のピンチだった。


「ディーア!」


 アルチェの矢が風を切って飛ぶ。

 その狙いは凶獣ティゲルの喉。


 凶獣ティゲルは頭を下に振って牙で矢を弾いた。


 そこへホーリスが跳んだ。


 凶獣ティゲルの頭を踏み台にして高く跳び、奥に立っていた凶獣ベアルの両目をひと()ぎで潰した。


「ゴガガアアァ!」


 よろめきながらも持ちこたえる凶獣ベアルの頭を踏み、宙返りして後方へ跳ぶホーリス。


「はあっ!」


 舞い踊るような滑らかな動きのもと、下から噛みつこうと頭を上げた凶獣ティゲルの口内に剣を刺し込んだ。


「はあああっ!」


 腕を上げてホーリスを追う凶獣ベアルにディーアの剣が閃いた。

 目にも留まらぬ速さで縦横無尽に駆け抜けた剣の軌跡が凶獣ベアルの全身を切り裂き、毛むくじゃらの手が地についたところで、首のうしろからトドメの剣が突き入れられた。


「はぁ、はぁ……。助かりました、師匠。それと、アルチェ」


「無事でよかったよ」


 ディーアが頭を下げると、ホーリスがディーアの肩をポンポンと叩いた。


 それを尻目にアルチェは周囲を見渡した。


 (ねぎら)いの言葉を口にするには早い。


「まだ凶獣リノセロがいるよ。あと凶獣ベアルももう1頭。まだやれる?」


 ビルダ族に対してはエルフが優勢、ドギー族とコンダ族に対しても互角。


 あとは凶獣リノセロと凶獣ベアルさえ仕留めればエルフの里は守り切れる。


「どうにか……。師匠、私とアルチェでベアルをやります。師匠はリノセロをお願いできますか?」


「わかった。リノセロを片付けたらすぐに戻る」


 ホーリスはすぐに走っていった。


 アルチェもディーアとともに里長の方へ走った。


 里長は凶獣ベアルに対して牽制するのが精一杯で、じりじりと後退していた。


「里長、加勢します!」


「ディーアか!」


 ディーアが凶獣ベアルのふところに飛び込み、脇腹に剣の一撃を入れて後方へと抜けた。


 凶獣ベアルの動きは素早く、その爪がディーアの赤いケープの端を切り裂いた。


 ――ビシュッ!


 アルチェの矢が凶獣ベアルの左目に刺さった。


 すかさず第2射を構えるアルチェに対し、凶獣ベアルは太い腕で顔を覆って防御の姿勢に入った。


「はあっ!」


 ディーアが剣を振るう。

 毛むくじゃらの足に渾身の一撃を入れ、ひざまずかせたところで背中に飛び乗り、首に剣を振り下ろす。


 ディーアが飛びのくと同時に凶獣ベアルの首から血が噴き出した。


「やったね!」


 アルチェが駆け寄って手のひらを掲げると、ディーアは一瞬だけ戸惑いを見せたが、剣を持たない左手をそこに合わせてハイタッチを交わした。


「アルチェ……」


 里長の表情はまだ険しかった。


 追放された身のアルチェにも気まずさがあった。


 しかし、いまはそれどころではない。

 まだ小型や中型の凶獣たちは残っている。


「おーい!」


 ホーリスが戻ってきた。


 向こうには凶獣リノセロが倒れている。


「師匠、さすがですね!」


「世辞はいい。それより早く残党処理をしよう」


 ホーリスの言葉にディーアとアルチェは首肯した。


 まだ凶獣たちは残っているが、あとはアルチェひとりでも対処できる種族しかいない。


 見たところ、エルフの民たちにはケガ人は出ているものの死人は出ていない。


 追放された身だけれど、戻ってきてよかった。

 アルチェの心はかつてないほど高ぶっていた。


 だがそのとき、エルフの里全体を絶望の音が襲った。


「ガァアアアアアアッ!」


「グゴガガガガアアァァァ!」


 大型凶獣の雄叫びがこだました。


 ひとつやふたつではない。

 大群による大合唱だった。

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